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動画配信サービスは役立たずのレコメンより情報を充実させてくれ(ユーザーの生の感想も)

※TOP画像はAdobeFireflyに「動画配信サービスのおすすめは役立たずで腹が立つ」と入力して生成されたもの

パナソニックのテレビがFireTVベースに!

昨日、私のFacebookのタイムラインを一番賑わせたのはこの記事だった。

パナソニックがスマートTVの中身をFireTVベースにするという内容だ。確かにびっくりする。
私は長らくテレビにFireTVを挿して使っていた。正直言ってFireTVのUIは嫌いだった。データをもとにAI任せで作ったようなUIだと感じていた。AIが「こんなとこでしょ、人間には便利でしょ」と作ってるように思っていた。整理されてるようでどこかぞんざいで使いにくい。
3年前にスマートTVに買い替えようと選んだのがパナソニックのテレビだった。これまではVODを見るときはリモコンをFireTVのものに持ち替えて使っていたのが、テレビのリモコンだけで放送もVODも操作できるようになり格段に便利になった。
パナソニックのテレビがFireTVベースになるということは、前に戻る感覚になりそうだ。別に今のテレビがFireTVを実装することはないだろうから気にしなくていいのだろうけど、次に買い替えるときは別のメーカーにするだろう。
そして記事の中でここが気になった。

「視聴者の好みに合った映像を、複数の動画サービスや地上波、過去に録画した映像から提案する。」

「パナHD、アマゾンとテレビ開発 視聴者ごとに映像提案」より

複数のサービスから横断的に好みに合った映像を提案するというのだが、そもそもNetflixにせよAmazon プライムビデオにせよ、そんなにレコメンが上手でしたっけ?「好みに合った」と映画やドラマのメタからお前らが勝手に「あなたにぴったり」と判断したコンテンツを推してくる、あれだろう?あんなにアテにならないものはないよ!

VODはレコメンさえすればいいと思ってるのが間違い

一方でこんな記事も気になった。

2010年代はNetflixが米国メディア界で急成長し制覇した10年間だった。負けじとディズニーもHBOも誰も彼もがSVODサービスを立ち上げた。2020年代に入ると成長は踊り場に差し掛かり、代わりに救世主となったのがFASTだ。
なぜSVODが行き詰まったのか、上記記事に書かれているわけだが、一人の濃いユーザーとしてさらに一つ、重要な原因を挙げておきたい。サービスが続々出てきて旧作も新作もオリジナルも洪水のようにコンテンツが毎日流れ出てくる。どれを選べばいいのかわからないのだ。
これに対しNetflixはじめサービス側はレコメンデーションが役立ちますよと言ってくる。だが彼らのレコメンシステムなんかひとつも役に立ちはしない。あんたたちがオススメしてきたら、はいそうですかとユーザーが選ぶと思っているらしいのが腹が立つ。Netflixは日本上陸当初、我が社にはGoogleより優秀で高級取りのエンジニアが大勢いて、毎日レコメンデーションエンジンを磨いています、とドヤ顔でアピールしていた。だからユーザーのほとんどがレコメンされた中からコンテンツを選んでますと自慢してた。レコメンリストから選ぶしかないんだから当たり前だろ!
ユーザーの立場で実際にどんなプロセスで見るべきコンテンツを決めるか、少しでも想像してみろよ。複数あるサービスには日々「新作」がリストに並び、「あなたにおすすめ」リストは更新されるが、相当な映画好きである私の知らない作品がずらりと並んでいる。その時点で、当惑するのだ。全然知らないお友達が並んでいて、さて今夜は誰と過ごす?と聞かれても、知らないやつとメシ食わねえだろう!
だからどんなコンテンツか調べる。だが選んで押すと出てくる情報はほんの数行だ。新聞のテレビ欄の解説だってもっと書き込んであるぞ。たった数行と、聞いたことない出演者や監督名で、貴重な2時間を過ごすと決められるかよ!
と、それでも気になったコンテンツの情報をチェックしていくと、貴重な30分くらいがただ費やされていく。見てもいいかなというやつをマイリストに入れて、そう言えばニュースの時間だと放送に戻ってしまう。
こんな日々をユーザーが過ごしていれば、クレジットカードの細目を見て「あれ?このサービスはもう2ヶ月使ってないわ」と解約する。そんなことが世界中で起こっているのだと思う。行き詰まるのも当たり前じゃね?

コンテンツの情報を充実させればSVODは伸びしろがある

例えば映画興行では配給会社が個々の作品についていて、公式サイトを立ち上げたり様々なメディアにリリースを配信して記事を書いてもらおうとする。おかげでユーザーにはそれらの記事がちょいとアンテナを張っていれば届いてくるし、気になったら公式サイトで詳しいことがわかる。
さらに、これかこれ、どっちをみようと迷ったらFilmarksのようなユーザーの評価サービスもある。試写会でいち早く見た人たちが「なんとなく見たらおったまげた!」とか「大好きな監督の新作だが今回はいただけない」などと生の感想を書き込んでくれている。これが大いに参考になるのだ。
なんとなく自分に近い感覚の人かなと感じた人の感想はそのまま受け止めるし、もっとシンプルに「こいつはすげえ映画だ!」「もう何度も泣きました」などとわかりやすく、でも本物の感動を伝えてくれる言葉は説得力がある。
映画興行ではそんな風に、一つのコンテンツを選ぶに至る環境が整っているのだ。
SVODサービスの大きな欠陥は、それがほとんどないこと。Netflixオリジナルの新作ドラマシリーズがあまり馴染みのない国の知らない役者だらけで”「ゴーン・ガール」のサスペンスと「クラウンズ」のゴージャスさ”とかだけ書かれていて、誰が見るというのか。
逆に言うと、SVODはこうした環境を整えていけば十分に伸びしろがあるのだ。2011年のHulu日本上陸以来、SVODサービスを浴びるように利用してきた私が言うのだからまちがいない。

同じことを言ってきたわけだけどね

でもそんなことは私も、そして多くのファンも言ってきたことだ。MediaBorderで最も読まれたこの記事でも言っている。

みんな、コンテンツを愛する人たちで、Netflixに期待する人たちだから愛を持って言ってきた。それぞれのコンテンツを丁寧にプロモーションしろよ、へたくそ!とね。
でも何しろ伸びていたので、そんな声は聞こえなかったんだろう。2022年に会員数が減ったときは反省するかと思ったら、広告プランを加える暴挙に出て、それでうまくいったと思ってる。でもそんなの絆創膏だよ。
多少ちゃんとしたことを書くと、今後のSVOD事業は個々のコンテンツをどうユーザーにアピールするかにかかっている。映画と同じ制作費で作ったコンテンツを、映画並みに宣伝予算かけないで当たるわけないだろう。
Netflixについては、近々もっと生々しい批判記事を書く予定なのでご期待を。

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