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今後のテレビ業界に関する無責任な推計〜日本の広告費2022を元に〜

誰も彼もうなだれているテレビ業界

電通が毎年この時期に出している「日本の広告費」の2022年版が今年も2月24日に発表された。

全体に伸びたし、インターネット広告費はついに3兆円を超えた。それが今年のトピックだ。私はこのデータが出るたびに毎年グラフを更新してきた。地上波テレビ広告費、インターネット広告費、新聞広告費の数字を取り出して折れ線グラフにしたものだ。

地上波テレビ広告費は前年比97.6%で1兆6768億円だった。2020年はコロナ禍で急減し、2021年はそれを取り戻したが、2022年はまた下がった。長期的な漸減傾向に戻ったと言える。いや、コロナ禍が落ち着いてきた今、漸減に戻ったと言うより、さらなる下降傾向が強まったと見るべきだろう。
実際テレビ業界は誰も彼もがうなだれている。前々からこうなると予見されていたことが、はっきりしてきたのだ。もはやテレビ局の売上には乱高下さえなく、ただただ地滑りのように下がっていくだけなのだ。
あまりにもうなだれているので、そうでもないかもよ、という話をしたい。しかもこの「日本の広告費2022」に見えていることを元に論理的に推計できることを書いてみよう。

テレビ局には「デジタル広告費」という売上もある

ここ数年の電通の発表には必ず「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」という欄がある。先述の電通報の北原利行氏の記事でもピックアップされていた。

「2022年 日本の広告費」解説――過去最高を15年ぶりに更新する7兆円超え。インターネット広告は3兆円を突破(電通報)より

例えば「新聞デジタル」とは各新聞社のデジタル版が売り上げた広告費の総計、というわけだ。興味深いのは紙媒体としての雑誌はテレビや新聞より広告費は低いのに、デジタルではテレビを上回っていること。MediaBorderでも過去に取り上げてきたが、雑誌はデジタルメディアの取り組みがここ数年でうまくいった。新聞やテレビはそれに対して遅れていると言える。
とは言え、「テレビメディアデジタル」は2022年、358億円に達した。しかも140.9%の高い伸びを示している。
ここで2030年のテレビ局の広告収入を強引に推計してみよう。ベースは2022年の数字と前年比。地上波テレビは1兆6768億円で前年比97.6%。これがこのまま続くと仮定するとどうなるだろう。こうなる。

2022年と同じ97.6%が毎年続くと、2030年には1兆3806億円にまで落ち込む。惨憺たるものだが、仕方ない。8年で3000億円ほど減るなら今の気分よりはマシかもしれない。

地上波とデジタルを合計して未来を推測する

一方、テレビデジタル広告費の方はどうだろう。今はたったの358億円。地上波と比べると小さすぎてちょっとやそっと伸びてもカバーにも何もならない、と思いたくなる。だがこれも毎年同じ140.9%伸びるとしたらどうなるか。こうなった。

なんと2022年にはたった358億円だったのが、2030年には5500億円を超えるのだ。これは2022年の紙媒体、新聞・雑誌広告費の合計より大きい。そしてこれもテレビ局が稼いだ金額だ。
だったら地上波広告費と合計してもいい。やってみるとこうなる。

2030年には1兆9000億円を超える。なんと、今のテレビ業界より大きいではないか。
だがうなだれきっているテレビ業界の皆さんから「いやいやいや」との声が聞こえてきそうだ。「2022年は1〜3月は北京オリンピックがあってよかったのよ。その後、4月以降は5%ダウンだし、これからもきっとそうなのよ。」何しろみなさん、今は悲観的なのでそんなことを言いそうだ。オウケイ!最悪のシナリオも用意して、地上波広告をずっと5%ダウンとして作り直してみた。

厳しいのは間違いないが、それでも2030年には合計1兆6000億円を超える。今の状態に戻るのだ。そしてもちろん、その後は伸びる一方かもしれない。インターネット広告費が10年前と比べるとびっくりするほど伸びていることからすると、その後はきっとまだ伸びるのではないか。

テレビ局はまだ、できることをやっていない

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