フジテレビ問題の解決策は、もはやたった一つしかない
テレビカメラを拒んだテレビ局は生きていけない
フジテレビ問題が泥沼化している。私も今週はあちこちの依頼で記事を書いた。編集や校正に丁寧に時間をかけるメディアが特別進行ですごいスピードで掲載に至り驚いた。事態が毎日変わるので、追いつくのも大変だ。
この件で面白いのは、問題が置き換わったことだ。当初は、中居正広氏のトラブルに幹部社員も関わったかとの疑惑だった。フジテレビは社員がトラブルに「加担」したかどうかが問われていた。
ところが17日の社長会見から、社長会見そのものが問題になった。正直言って、もう幹部社員が関わったかどうかは二の次になっている。港社長自らも「失敗だった」と認める会見の大失敗が会社を窮地に陥れたのだ。
では社長会見のどこがダメだったのか。調査委員会を完全に第三者にしなかったこと、これも重要だが実は2番目の問題だ。それよりなにより、社長会見にテレビカメラを入れなかったこと、いまフジテレビを存続さえ危ういほどの危機に至らしめたのはその一点に尽きる。
つまり、会見にテレビカメラを入れなかった港社長と経営陣が、会社を潰そうとしているのだ。「フジテレビ問題」を考える上でそこは見誤らないほうがいいと思う。たとえ17日の時点で日弁連のガイドラインに沿った調査委員会を組むと発表していたとしても、あの会見のやり方だったからアウト判定を食らった。
自分たちは不祥事をカメラで追い回すくせに、という怒り
なぜテレビカメラを拒んではいけなかったか。ふだんテレビ局は企業の不祥事に対し、ことによっては社長の自宅にまでテレビカメラで押しかけてきた。そのこと自体は企業の側も認めていたはずだ。そんなテレビ局が自分たちの疑惑についての会見でテレビカメラを拒否するとは。企業は怒るに決まっている。なんだこいつら!ふざけるな!誰だってそう思う。
まず怒ったのはテレビ局であり、フジテレビ自身だった。だから各局がこの会見についてこってり時間をかけて伝えた。テレビカメラが入らなかったから静止画にテキストを添える形になった。その絵ヅラの異様さといったらない。それを見ている時点で、傷つかない場所に身を置く港社長のあまりにも姑息な姿勢がはっきり伝わってしまう。
そんな不愉快な絵ヅラで各局が15分くらい時間を使って、キャスターたちの怒りもにじませながら放送した。この日のテレビはフジテレビの一大不祥事拡散装置となった。あっという間に日本中に伝わった。
それを見た大手広告主では、おそらく宣伝担当者ではなくトップの判断としてCMにストップをかけたはずだ。だからこそ、さっそく土曜日から広告主がCM差し替えに動いたのだ。週明けを待たずに土日の間に大手広告主が少なくとも7社、差し替えていた。驚くべきことに、差し替えたとの報道がすぐに出た。どう見ても広告主側からの情報だ。
ACジャパンのCMは広告主の側の事情、ほとんどは不祥事に対処するために用意されている。だから表立っては報じられない。それが「○○社がCMを差し替えた」と記事になるのは、テレビ局や代理店から情報が出るはずはないのだ。
テレビカメラで取材する側なのにテレビカメラで取材されることを拒否した。そのことが各局のニュースで増幅された。それを見た大手企業のおそらくトップがCM差し替えに動いた。テレビがテレビを拒むと、テレビのリーチの力で逆に社会に拒否された。皮肉な流れだ。
いまやフジテレビは4月以降の広告受注が危ぶまれている。メディアに最も必要なのが「信頼」であることを、この結果が嫌というほど示している。「信頼」があってはじめてコンテンツ力を勝負したり、ビジネス展開ができる。「信頼」というと報道機関に必要なものと考えがちだがそれは違うのだ。エンタメだって何だって、メディアとしての信頼がないと展開できない。4月以降いくら視聴率をとるドラマを放送しようが、広告主と社会の信頼を回復できないと、フジテレビに先はない。
27日の会見と第三者委員会で信頼回復は可能か
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