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Inter BEEアーカイブ映像、いよいよ12月15日まで!BORDERLESSの要チェックポイント

11月15日から17日まで幕張で開催されたInter BEEからもうすぐ1ヶ月経つ。ただ、オンライン会場ではまだ続いており、様々に展開されたカンファレンスもアーカイブ映像化されて視聴できる。それも12月15日(金)までなので、クローズ直前にあらためて紹介しておきたい。

アーカイブ化されたセッションはこちらのリストから視聴できる。幕張に行ってない人でも今登録すれば無料で見ることができる。

私が担当したINTER BEE BORDERLESSは業界の旬なネタを漏らして9セッションを展開したが、そのうちの8つがアーカイブ化されている。

17日10時30分からの「FAST・CTVの海外最新動向と日本のリアル」は残念ながら非公開だが、それ以外についてあらためて簡単に紹介したい。今年はほとんどのセッションで立ち見が出る盛況ぶりで、その盛り上がりを映像から感じてもらえればと思う。


15日「ボーダレスデイ」の3セッション

15日10時30分からの「配信・放送ボーダーレスの時代~先行するオーディエンスにビジネス、制度は追いつけるのか~」は毎年恒例となった、電通・奥律哉氏が軸となり、同社メディアイノベーションラボの最新の調査結果を発表するセッション。今年は青山学院大学の内山隆教授をゲストに迎え、タイトルにある「オーディエンスに放送制度は追いつけるのか」の議論を展開した。総務省の放送制度を議論する会議で構成員を務める奥氏と内山氏だけに、具体的な議論となった。同会議への愚痴(?)とも取れる発言も含めて、楽しめるセッションだ。

15日13時からは「ウェブニュースの現在地~放送局のデジタル報道とプラットフォーム~」のタイトルで、日本テレビで報道のDXを推進する三日月儀雄氏が企画しモデレーターを務めたセッション。GoogleでYouTubeを担当する永原錬太郎氏の単独公演と、LINEヤフーでYahoo!ニュースを担う藤原光昭氏とテレビ朝日で系列局のニュースをYouTubeで配信してきた西村大樹氏によるディスカッションの2部構成。BORDERLESSの前身CONNECTEDでも何度か報道をテーマにしたセッションを行ってきたが、今回は定員の200名を優に超える来場者となり、いよいよ報道も通信を活用する時代になったと痛感した。新聞も含めて報道に携わる人には必見のセッションだ。

15日15時からは「ドラマの未来を変える、広告とデータアナリティクス」のタイトルでジャーナリストの長谷川朋子氏が企画したセッション。元になっているのはこの記事だ。

関西テレビでコンテンツビジネスを展開して来た竹内伸幸氏が、同局のドラマがもはや放送収入だけでなく配信も含めた「トータルリーチ戦略」によりビジネス化していることを語るインタビュー記事だ。
セッションでは長谷川氏と竹内氏にLIXILの五十嵐千賀氏が加わり、リフォームをテーマにしたドラマに、住まいを彩る製品メーカーとしてどう関わったかを解説。さらに新しい手法で番組の価値をデータ化するREVISIOの河村嘉樹氏も登壇。トータルリーチの効果を数値で示した。
配信でもドラマが視聴されることで、企業も単純にCM取引をする以上の意義を番組に見出せる。そのポテンシャルが議論された。新時代に注目のセッションとなった。

16日「ローカルデイ」の3セッション

16日は「ローカルデイ」と括り、いずれもローカル局の今後を考える上で大いに参考になる内容となった。
10時30分からは「ローカル局の地域課題解決ビジネス〜地域の声が未来を紡ぐ〜」と題し、4つのローカル局の課題解決のビジネス化の事例を、TVQ九州放送の永江幸司氏のモデレートで紹介した。
農業高校と地域の流通企業を結んだ札幌テレビ大阪しの氏、宮崎放送の放送外事業としてトレードメディアジャパン社で地域と海外をつなぐ市原智氏、地域企業の事業継承の事業化を推進するメ〜テレ(名古屋テレビ)の安藤全史氏、30年前から続けて来た手話放送を持続可能にすべくビジネス化に取り組む岡山放送の篠田吉央氏。それぞれテレビ局として思いもよらぬ方向のビジネス化に取り組む姿は、ローカル局に限らず参考になるはずだ。

13時からはBORDERLESSの基調講演としてこれだけ国際会議場で華々しく開催された「ローカル局社長が語る地域メディアの“未来ビジョン”」。モデレーターのNHK放送文化研究所・村上圭子氏が切れ味鋭く繰り出す質問に、4人のローカル局社長が回答していくセッションだ。
テレビ朝日HD専務から東日本放送に出向し社長を務める藤ノ木正哉氏、LOCIPOなどで協調する中京地区の雄、CBCテレビ社長・松波啓三氏、アプリなどでユニークな展開が際立つ南海放送社長・大西康司氏、そしてMediaBorderでもインタビューした島根の地域財閥も率いる山陰中央テレビ社長・田部長右衛門氏。(田部氏のインタビュー記事はこちら→さんいん中央テレビ・田部社長インタビュー
それぞれ違う背景を持つ4人の社長が村上氏の切り込みを受けて立って発言する、その様子をぜひご覧いただきたい。

16日15時からの「CATV発、地域”超”密着コンテンツの作り手に学ぶ、地域メディアの可能性」もユニークなセッションだった。ケーブルテレビの世界に、それまで地上波テレビで番組を作っていた制作者たちが参加し始めている。際たる存在が「電波少年」のT部長こと土屋敏男氏で、今年から愛知県豊田市のひまわりネットワークで「進め!豊田少年家族」という番組を制作している。また鳥取県の大山ケーブルの番組を、東京で番組制作に携わって来た貝本正樹氏が家族で大山町に移住して作っている。長崎放送で番組作りを長年やって来た大野陽一郎氏は長崎ケーブルメディアで、地上波ではできないドキュメンタリー制作に挑んでいる。それぞれ、地上波での経験を生かしつつも、ケーブルだから、小さなコミュニティ向けだからできる番組制作を発見しながら作っているようだ。ケーブルテレビの方々だけでなく、地上波の人々にもきっと役立つ話が聞けるだろう。

17日「フューチャーデイ」の2セッション

17日13時からは私がモデレーターを務めた「配信サービスはVODの次に進むか」。U-NEXTの本多利彦氏とTVerの蜷川新治郎氏、FODの野村和生氏に登壇してもらい、2015年以来盛り上がって来た日本のVOD市場のネクストステップを議論した。U-NEXTはParaviを統合したが、だからと言ってTBS・テレビ東京以外の局ともローカルも含めて積極的に向き合っていくと明言していた。一方でTVerは現状の直行直帰型を滞留型にどう進化させるかを聞くと、蜷川氏はFASTのように開いたらすぐに番組が流れ始めるような要素を加えたい、とはっきり言っていた。野村氏はFODを何処かと統合させたりはせず単独で今後も頑張ると明確に宣言。それぞれ、強い言葉を引き出せたのではないかと思う。ぜひご覧いただきたい。

17日15時からの最後のセッションは異色の企画だった。「テクノロジー視点で放送業界の“ブループリント”を構想する」のタイトルで、業界の未来予想図を見出そうという意図。様々な公の会議に有識者として関わるクロサカタツヤ氏、TBSを昨年退職した放送技術の異端児・大吉なぎさ氏、NHK財団で主に欧州の放送技術を研究する武智秀氏が登壇し、NHK放送文化研究所の村上圭子氏がモデレートした。最初に3人のパネリストがプレゼンした後は会場の参加も含めてフリーにディスカッションする流れで、会場の閉会ギリギリまで使ってやりとりした。ディスカッションの実験としても楽しめるだろう。

所感:曲がり角を曲がった放送業界

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