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映画「あの人が消えた」入ったら寿司屋だったがガパオライスが出てきた

☆☆☆☆
日本映画で若い人が主役だとついつい恋愛もの?薄っぺらい話?と勝手に決めつけてしまう偏屈な中高年なので、この映画も見ないつもりだったが、Filmarksで評判がよかったり、ちょっとだけザワついてる空気が漂ってきたので見に行った。ミステリーらしいのであまり情報を入れずに見たらとても面白かった。
運送会社の配達員、丸子は担当するエリアのマンションで自分が愛読する小説の作者らしき女性を発見する。彼女の周りはクセのある住人だらけで、その中に怪しい男がいて・・・
寿司屋でガパオライスが出てくるような映画なんだけどそれ以上言うとネタバレだし、この映画ほどネタバレがいけない映画もないので、この時点で興味を持ったらさっさと見に行って、この続きは見終わってから読んでください。

ミステリーだと思ったら途中からコメディになり、それはそれで笑えるけど、笑ううちにそういう映画でいいのかと思い始める。そのあたりでガラッと変わる。その転じ方やタイミングが絶妙だ。
実は小説家の彼女がその場で目についた名前を拾って作ったフィクションだったとわかる。それは丸子が読んだ小説の中で使った手法だった、つまり丸子に嘘だとわからせたかった。目についた名前で物語をでっちあげるのは90年代の映画「ユージュアル・サスペクツ」で使われた手法。未見の人は見て欲しいけど、もうトリックがわかっちゃうね。
そこで終わると過去の映画のパクリじゃないかとなるけど、もう一つツイストする。でも、実は死んでましたってのも映画「シックスセンス」と同じだよね。
最後にもうひとひねりあって転生して終わるのはよかったし、出てきた小説「スパイ転生」の通りになってるのも楽しい。
最近、映画やドラマで「伏線回収!」と、必要以上にみんなが伏線を気にしてるのを逆に利用して、伏線回収で物語を構成したような映画だった。いやほんとによくできてる。アメリカの映画興行だったら上映館がみるみる増えそうだけど日本ではどうだろう。もっとたくさんの映画館で上映されていい気がする。
ただ気になるのが、公安の話がフィクションだと知ると、どこか辻褄が合わなくなる気がすること。隣の住人が死体や血だらけの服を見たのは本当に殺人があったからで、201の男が酔っ払った女性を運ぶ姿を見たのは、何らかの手段で眠らせた千尋を運ぶ島崎だったのだろう。だが千尋はなぜ201の男が鉄パイプを捨てるのを知っていたのか、流川翼が殺されたことを警察が捜査してたなら聞き込みはしなかったのか、そして丸子と先輩が千尋と島崎から話を聞くとき、丸子は会話に入ってなかった?などなど気になる気になる。もう一度見たくなるがどうしよう。配信まで待つか、この疑問が醒めないうちにまた映画館に行くか、迷うところ。
監督・脚本の水野格はドラマ「ブラッシュアップライフ」にも携わっていたそうだが元々はバラエティ番組のディレクターで私も毎回見ている「月曜から夜ふかし」も担当していたという。小さなマンションだけで物語が進行するのも面白いが、そういう制約の中で映画を作りたかったとインタビュー記事で言っていた。今後の作品にも期待したい。
主演の高橋文哉はゴチメンバーで毎週見ていた。アイドル系と思ってたら役者さんだったのか。いい芝居をしていたと思う。他にも頼れる先輩田中圭、染谷将太、中村倫也、坂井真紀、袴田吉彦、そして架空の人物に菊池凛子、ネタでしかない梅沢富美男と錚々たるメンバー。脚本が面白いから出てくれたんじゃないか。小説家の北香那も可憐だった。
公開が広がり、たくさんの人に見てもらいたい映画!

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