見出し画像

INTER BEE BORDERLES、VODセッションでもらった質問に回答をいただいた

11月15日〜17日に開催されたInter BEEが盛況のうち、終了した。コロナ期はオンライン開催となったが昨年から各カンファレンスも幕張で行うようになり、今年は私が担当するINTER BEE BORDERLESSも9つのセッションをリアルで行うことができた。

開催前の記事で各セッションを紹介したが、私がモデレーターを務めたのは17日13時からの「配信サービスはVODの次に進むか」。U-NEXTの本多利彦氏、TVerの蜷川新治郎氏、FOD(フジテレビ)の野村和生氏をお招きする企画だった。
そのアーカイブが22日に配信され、12月15日まで公開されている。幕張に行けなかった方もフルで見ることができる。(↓下をクリックすると視聴できます)

みなさんからの質問に、登壇者から回答をもらった

さてセッション中にQRコードを使って会場からの質問を受け付けたのだが、時間があっという間に過ぎてしまい結局ひとつもとりあげられなかった。そこであらためて質問を紹介し、ご本人にお聞きすべきものにはそれぞれから回答をいただいた。とても丁寧にお答えいただいたので、ぜひ皆さんと共有したい。さらに、残りの質問には私が回答する。

本多氏への質問:U-NEXTの利用時間・日数が多いとありましたが、母数は何になるでしょうか?(利用者あたり?会員あたり?)また、なぜ他の動画サービスよりも利用されているとお考えですか?
本多氏の回答:こちらは第三者機関の「data.ai」さんのデータで詳細は開示されていないのですがアクティブユーザーなど他の実績から推察するに、契約者数で換算されていると想像されます。
他の動画サービスよりも利用時間が多い理由としては、以下2点を考えています。
①他サービスよりも高額なこともあり、エンタメファンが多く加入しているため
他サービスに比べて月額料金が高いため「2189円でも加入したい」というモチベーションの高い方が加入してくださっていると考えています。実際、他ではあまり視聴されないようなコアな作品(アート系映画や旧作など)も視聴されていることを考慮すると、より深く楽しみたいユーザーが多く、結果的に視聴時間も伸びているのだと考えています。
②特定のジャンルに特化せず、さまざまなジャンルで深いラインナップを提供しているため
特定のジャンルが秀でているのではなく、U-NEXTでは映画、アニメ、ドラマ(海外・韓国・国内)と幅広いラインナップに注力しています。アニメからドラマ、ドラマから映画…と異なるジャンルを視聴してくれるため結果的に視聴時間が伸びていると考えています。
また、「data.ai」さんはモバイル市場のデータでしたが、より視聴時間の長くなるテレビデバイスでも同様の結果が現れていると想像しています。特にU-NEXTは、境さんにもおっしゃっていただいたようにTV発のサービスなのでTV利用者割合が多いことを鑑みると、より一層トータルでの利用時間は長いのではと思われます。

蜷川氏への質問:配信期間1週間以上のコンテンツが最近多くなってきたように感じます。配信期間の更なる延長、コンテンツのストック化は更に進むのでしょうか。配信期間延長に関わる効果、今後の展望を教えてください。
蜷川氏の回答:アーカイブサービスとのポートフォリオの最適化が必要ですが、旬なコンテンツを楽しんでいただく、という意味では、1カ月程度が適しているとは思います。今後、各所と調整のうえ、ユーザーの要望に応えていきたいと考えています。無下に、アーカイブ期間を延ばそうとは思っておりません。

野村氏への質問1:FODはカーブアウトして別会社にするポテンシャルあると思うのですが、社内事業部にとどまるのはなぜですか?
野村氏の回答:別会社は選択肢の一つだと思っていますし、当然社内でも議論があります。ここからは私のいち意見ですが、別会社とすることで、第三者から資本を集めやすくなったり、経営判断が速くなったり、人材雇用の面でも専門知識をもったプロパー人材を直接雇用できるなど、メリットもありますが、別会社になると、KPIが異なることによるデメリットも存在します。同一会社で事業を運営することで、KPIを共有でき、現在でもまだ最大のリーチメディアである、地上波放送のリソースを最大限に活用できるのが社内に留まるメリットです。
野村氏への質問2:・YouTubeでワンピースの連続配信がされていましたが、実施してみてどのような可能性を感じられましたか?
野村氏の回答:こちらのもともとの目的は、アニメ25周年を機に膨大な話数のワンピースをまだ見ていない若い人たちに見ていただきたいというというのがメインですが、一方でまさにFASTがサブスクに与える影響を検証する良い機会だと思っています。全話視聴するのに20日ほどかかり、どんな人でも必ずどこかで連続視聴は止まるので、そこからのサブスク誘導の可能性を期待しています。

残りの質問には筆者から

それぞれの質問をした方はおわかりいただけただろうか。
他の質問には私から回答する。
質問:先ほどのグラフの「その他」の中身は、具体的にどういうのがありますか?
回答:これは私がお見せしたインテージのグラフについてだと思うが、「その他」は放送と配信以外で、ほとんどゲームのようだ。その割合はずっと変わらないのが面白い。
質問:AVODに関する質問をさせて下さい。今後、テレビ局のスポット・タイム広告収入が減少していく中、その穴をキャッチアップ広告収入で賄うことはできるのでしょうか?
回答:そうなるように、TVerもFODも努力していくということではないだろうか。米国では賄える状況になりつつあるので、時間はかかるだろうが不可能ではない。
質問:各局が独自にFAST始めると、広告面でTVerと競合しないでしょうか?
回答:するに決まっている。それでも、いずれ海外のFASTプレイヤーが上陸して市場を奪われるなら自分たちでやる、かどうかをきっと議論しているのだと思う。またプレイヤーが複数登場した方がその市場が伸びるのは過去の様々な事例を見れば明らかなので、競合を恐れるより一緒に伸びることを考えるべきだ。
質問:CTVでの使用が伸びると地上波テレビが「自分たちを邪魔する」って言ってくる気がするんですが、地上波の人をどう説得しますか?
回答:これはもう、あらゆるロジックで力説するしかないだろう。最初のインテージのデータを見れば、今後はローカル局も含めてCTV市場に乗っかり伸ばすしかないのがわかるはずだ。「邪魔する」と言っていると遅れるだけだと認識してもらうしかない。
質問:グローバルOTTサミット。日本InterBEEのほうが負けてないですか?対策は?
回答:これは主催側に言っているのだと思うが、意味がわからない。OTTはInter BEEの幅広いテーマの一つでしかないので、比べられても仕方がない。OTTだけでイベントをやる考え方はあるかもしれないが、Inter BEE事務局に言ってもらいたい。

その他の質問は、ディスカッションの中で答えが出たと思う。

「オンデマンド」と別に「いきなりストリーミング」が必要

ところでセッションで印象的だったのが、TVerについて蜷川氏がかなりはっきりと「FASTに取り組む」と明言したことだ。より正確に言えば「FASTのように、アクセスしたらとりあえずコンテンツが流れ始める形式を取り入れる」ということだったと思う。だからFASTとは限らないだろう。

ここから先は

762字

コンテンツビジネスを考えるメンバーシップです。主にテレビとネットの横断領域をテーマにメディアの未来を…

購読会員

¥550 / 月

交流会員

¥770 / 月

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?