「シナぷしゅ」は番組というより、育児を支えるツールにしたい〜テレビ東京・飯田佳奈子氏への取材
「シナぷしゅ」は2020年4月からレギュラー放送が始まったテレビ東京の乳児向け番組だ。月〜金の朝の放送で、夕方にも東京ローカルの形で朝の番組が再放送される。子どもがとっくに成人している筆者の生活には無縁だが、このところ気になる存在になっていた。これは一種のバーティカルメディアと言えないか?視聴率の対象にならない乳児向けの番組をあえて始めたことには、テレビ局としての新しい考え方が潜んでいる気がする。
誰が企画したのか調べると、番組クレジットに「コンテンツ統括プロデューサー」として飯田佳奈子氏の名前が出てくる。番組制作のプロデューサーは別に出てくるのでもっと俯瞰的な立場なのだろう。検索すると、飯田氏のインタビュー記事がいくつも出てきた。
↑これはYahoo!ニュースの特集記事で、元TBSの氏家夏彦氏が書いたもの。(氏家氏はMediaBorder購読者の1人)このインタビューで概要を理解した上で、さらにその仕組みを掘り下げて聞こうと、ご本人に取材をお願いした。話題は番組そのものから、社会全体にまで広がった。大きな視点で考えるテレビの新しい役割を、熱を込めて語ってくれた。
-視聴率対象外の乳児向け番組をどう社内で通したのかを知りたいのですが、まずコンテンツ統括局について教えてください
私は元々営業局の所属でした。子どもができて取った産休育休が明ける時に人事部長から電話があり「ペンとメモを用意してくれる?」と。てっきり営業に戻ると思っていたのですが、新しく放送外収入や配信収入を抜本的に考えて会社を変えていく組織ができる、これからの会社を背負う最重要部署になるので優秀な飯田さんにこそ行って欲しいと言われました。そうやって持ち上げてくれたんだと思います。それが2019年に新しくできたコンテンツ統括局です。
-具体的にはどんなことをする部署でしょう?
新しいビジネススキームを作るために、タイムテーブルを見直そうと議論しました。番組表に売上は書いてないけれども、制作費がいくらで収入がいくらあるかを書き出して、黒字赤字を見える化してみました。そして赤字の番組を黒字にしようと議論したのです。看板番組でも制作費が大きくて赤字だったりします。あるいはアザー帯の番組はこれまで赤字でもよしとしてきた。それらを黒字にするにはどうしたらいいかをみんなで考えました。
-育休から復帰してガンガン議論に参加したんでしょうね?
いえ、時短で働いていたので最初は会議に出ても書記をしたりお茶を出したりでした。でもみなさん新しいことを考えようと活気に溢れていて。黙って聞いてるだけでなく自分も企画を書きたいと思い、育休中にやりたいと思っていたことを、恥ずかしいけど一回出してみようと考えました。それが「シナぷしゅ」なんです。番組の企画書というよりビジネスの企画書、スキームだけを書類に落とし込んだもの。赤ちゃん向け市場にはこれくらいの規模があると、会社の首を縦に振らせるような内容をまとめたものでした。
-ビジネスとしての肝はどこにあるのでしょう?
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