ハイパーアイランドジャパンで学んだシナリオプランニング:未来を描く力を身につける
良い研修をつくるには、良い研修を受け続けよ。とアドバイスをいただき、デジタルのハーバードと呼ばれるハイパーアイランドの講座を受けてきました。オンライン計4日間で、システム思考とフューチャーシナリオを学ぶプログラムです。
ここでの体験は、私の未来に対する見方を大きく変えるきっかけとなりました。本記事では、講座の内容、学んだこと、そして実際のビジネスシーンでどのように活用できるかについて共有したいと思います!
Hyper Islandって何?
ハイパーアイランド(Hyper Island)は、デジタル時代のリーダーシップとイノベーションを育成することに特化した国際的な教育機関。1996年にスウェーデンのカールスクローナで設立され、現在は世界中で事業を展開しています。
主な特徴:
実践的なアプローチ: 理論だけでなく、実際のプロジェクトや課題に取り組むことで、実務に直結するスキルを養成すること
デジタルとビジネスの融合: 最新のデジタル技術とビジネス戦略を統合的に学ぶことができる
イノベーション重視: 創造的思考と問題解決能力の開発に重点を置いている
AQ(Adaptability Quotient:適応力指数)を重視:不確実性に対処し、変化を生み出せる人を育成する
ハイパーアイランドジャパンは、このグローバルな教育機関の日本支部として、日本の文脈に合わせたプログラムを提供しています。デジタルトランスフォーメーション、リーダーシップ開発、イノベーション促進など、現代のビジネス環境で求められる重要なスキルの習得を支援しています。
シナリオプランニングとは何か
シナリオプランニングは、不確実な未来に対して複数の可能性(シナリオ)を想定し、それぞれに対する戦略を練る手法です。単一の予測に頼るのではなく、起こりうる様々な未来を描くことで、より柔軟で強靭な計画を立てることができます。
今までの私は「起こりうること」「起こしたいこと」の中で考えを巡らせてばかりでした、その弊害として予期せぬことが起きた時に対応が遅くなったり、固定概念に縛られて枠を超えた発想になりにくかったように思います。
ハイパーアイランドジャパンの講座では、このシナリオプランニングの基本概念から実践的なワークショップまで、包括的に学ぶことができました。
講座の構成
講座は以下のような流れで進行しました:
シナリオプランニングの理論と歴史
未来予測の限界と不確実性の理解
トレンド分析とドライビングフォースの特定
シナリオ構築のフレームワーク
シナリオに基づくフューチャーシナリオづくり
フォーカスクエスチョンを作る
例)20年後の小売業はどうなっているか?
外部ドライバをあげる
例)デジタル化、少子高齢化、AIの発達、サスティナビリティの高まり
不確実性と影響度の高いもの2つを選ぶ
シナリオに落とし込む
シナリオごとの計画を立てる
印象に残った学び
1. 未来は予測できないが、準備はできる
講師は冒頭で「未来は完全には予測できない」と言い切りました。これは一見、シナリオプランニングの意義を否定するかのように聞こえましたが、続けて「だからこそ、複数の可能性に備える必要がある」と説明があり、合点が行きましたし、以下のスペキュラティブデザインの著書から引用した図も理解を助けてくれました。
2. トレンドとドライビングフォースの区別
未来を形作る要因を分析する際、「トレンド」と「ドライビングフォース」を区別することの重要性を学びました。トレンドは既に顕在化している変化の兆しであり、ドライビングフォースはその背後にある根本的な力です。例えば、リモートワークの増加はトレンドですが、その背景にあるテクノロジーの進化や働き方に対する価値観の変化がドライビングフォースとなります。
トレンドだけみていても、未来予測には不完全で、背景にあるドランビングフォースを理解するからこそ、どんな選択肢があるのか広い視点で未来を予測できるということです。
よく「タクシーの運転手さんがそれを話題にする頃には旬が過ぎている」など言いますが、トレンドだけ見ていると運転手さんのようになるよ。ということかなと(タクシーの運転手さんは素晴らしい職業です)。
3. 2x2マトリックスの活用
シナリオ作成の実践では、2x2マトリックスを使用しました。これは、最も重要で不確実性の高い2つの要因を軸にして4つのシナリオを描く手法です。この単純だが強力なツールにより、複雑な未来の可能性を整理し、議論を深めることができました。
期待される未来(=起きることが簡単に予想できる)を考えることはビジネス上よくありますが、右下の奇妙な未来(=普通の確率ではおきなそうなこと)をあえて考えることが、思考を柔軟にし、未来への備えを強めてくれる、シナリオプランニングの醍醐味です。
4. ストーリーテリングの力
各シナリオを単なる仮説の羅列ではなく、生き生きとしたストーリーとして描くことの重要性も強調されました。具体的なイメージを持つことで、そのシナリオが現実になった場合の影響をより深く考察できるからです。
実務への応用
講座を通じて、シナリオプランニングが実際のビジネスにどのように活用できるかも学びました:
長期戦略の立案: 不確実な未来に対して複数の戦略オプションを用意することで、環境変化に強い組織づくりができます。
イノベーションの促進: 異なるシナリオを想像することで、従来の思考の枠を超えた新しいアイデアが生まれやすくなります。
リスク管理: 最悪のシナリオを含めて考えることで、潜在的なリスクを早期に特定し、対策を講じることができます。
チーム内のコミュニケーション促進: 様々な可能性について議論することで、組織内の共通認識が醸成され、より柔軟な意思決定が可能になります。
変化への適応力強化: 常に複数の可能性を考える習慣がつくことで、実際に予期せぬ変化が起きた際の適応力が高まります。
講座を終えて
ハイパーアイランドジャパンの講座は、単にテクニックを学ぶだけでなく、未来に対する考え方そのものを変える貴重な機会となりました。特に印象に残ったのは、講師が繰り返し強調していた「シナリオの正確さよりも、プロセスから得られる洞察が重要」という言葉です。
確かに、作成したシナリオがそのまま現実になる可能性は低いでしょう。しかし、多様な可能性を考え、それぞれに対する準備を整えることで、どのような未来が訪れても柔軟に対応できる力が身につくのです。
また、このプロセスを通じて、自分自身の固定観念や思い込みに気づくこともできました。「こうあるべき」という既存の枠組みを一旦取り払い、全く異なる未来の可能性を想像することで、新たな視点や発想が生まれるのです。
おわりに
シナリオプランニングは、ビジネスの世界だけでなく、個人の人生設計にも応用できる強力なツールだと感じました。不確実性が増す現代において、柔軟な思考と多様な選択肢を持つことの重要性を、身をもって学ぶことができました。