問うとはどうゆうことか?
お正月の積読解消の中に、哲学者の梶谷真司さんの「問うとはどういうことか」がありました。問いは万能で、受け身にも、攻めにも使える優れものです。著者は、問いの効果を4つ挙げています。
知ること
理解すること
考えること
自由になること
「自由になること」は、新しい視点でした。
常識から、偏見から、苦しみから、無知から自由になる。
私たちは、日々いろいろなものに縛られて生きています。問うことの最も重要な意義は、そこから自由にしてくれることにあります。
自分の当たり前を疑ってかかる、新しい信念を持つ。そんなきっかけをくれるのが「問い」という誰しもがすぐ実践できるプロセスだと思うと、ワクワクします。
何を問うのか?
では具体的に、何をどう問えば、理解がすすみ、自由になるのでしょう。本著では、10個の問いを紹介しています。
全部覚えて、えーっといまはコレ!という引き出しから出すやり方は現実的ではなく、湧き出てきた疑問がどれに当たるのか、たまに自覚的になる程度でも、問うレベルを上げられそうです。
1.意味を問う
言葉のいみ、行動のいみ、出来事のいみ
2.本質を問う
「〇〇とは結局何か」
単なる説明や意味ではなく、それを成り立たせている固有の特徴を捉えようとする問い。毎日やってたら気がおかしくなるので、ふとしたときで良さそう。
これでいいのか?本当は違うのでは?原点に立ち返り、本質を問うことで、物事の一番大切なことに向き合うことができる。
3.理由を問う
「なぜ〇〇なのか?」「なんのために〇〇するのか?」
物事はその「原因」がわかることで、行為はその「目的」「動機」が明らかになることで、判断や意見はその「根拠」が与えられることで、この世界にしかるべき位置を持つようになる。理解しやすくなり、説得力が出てくる。
4.方法を問う
「どのように〇〇するのか?」
お互いの理解を擦り合わせる対話に必要な問いだ。実は、すごく難しい。「頑張る」一つとっても、なにをどうするのか説明できないから、頑張りますに逃げることが私はよくある。
5.状況を問う
「誰がいつどこで何をしたの」
具体的な状況の説明を求めるための問い。
6関係を問う
「〇〇と△△はどう関係しているのか?」
関係、比較、相違、類似、共通、区別、因果、条件、結果
7.事例を問う
「たとえは?」「具体的には?」
私たちの思考はしばしば粗雑で、それっぽい解釈や言葉ですまそうとする。
女ってこうだよね、男ってこうだよね。評価ってこうするよね、カルチャーってこうでしょ。ポジションを取るというのは、それっぽくみえるもんだ。
著者は、そんな時に「反例を問う」が効果的だと述べている。私たちは油断すると、自分によって都合の良い偏った考えだけを受け入れようとする特徴がある。確証性バイアスというやつ。そんな自分に負けないためには「本当にそうか?」「当てはまらないケースはないのか?」「他にもっといいものはないのか?」と自分に問い掛けたい。
8.要点を問う
「つまりなに?」「一言でいうと?」「大事なことは?」
9.意見を問う
「あたなはどう思うのか?」
意見を持つということは、世の中とどう関わるのかを決めることである。それは責任ある思考をするということで、よく生きる近道だと著者は述べている。
10.真偽を問う
「本当にそうか?」
自由になるにつながる深遠なる問い。物事をすぐに決めない、知的な謙虚さをくれる。
10個を4個に分類できる
カール・トム博士の介入的インタビューの手法では、上の10個の質問をよりシンプルに4つに分類している。ひごろから、採用インタビューや人事コンサルをする人にとっては、こちらの方が使い勝手は良さそうだ。
線形的質問(Lineral question)
物事のファクトを問う質問。
4.方法を問う、5.状況を問うに該当する。
循環型質問(Circular question)
物事の関係性を問う質問。
6.関係を問うに該当する。
省察的質問(Reflexive question)
相手に意見や振り返りを求める質問。
8.要点を問う、9.意見を問う、2.本質を問う、10.真偽を問うあたりに該当する。
戦略的質問(Strategic question)
こちらの意見やフィードバックを伝え、相手にグッと考えさせる、核心にせまる問い。省察的質問をより強化したイメージ。
「〇〇であれば、こうすべきだと思いますが、どうですか?」
「実はそれって、〇〇だったとは言えませんか?」
多用すると相手に圧迫感を与えてしまうので、使い所は考えた方がよい。ただ、〇〇の内容がポジティブだと、相手から「それは考えたことはなかった!ありがとう」と感謝されたりもする。
例えば「Aさんのその行動に勇気づけられて、BさんはXXすると思いますが、チャレンジしてみませんか?」>「そうですね、やってみます!」となったりもする。
プロセスに介入するためのプラスα
上の質問で圧倒的に足りないのが「解釈」を問う質問だ。
世の中に絶対的真理はなく、それぞれの解釈によって構成されている。
自分の外で起きた出来事、自分自身の行動、自分の頭にふとよぎった思考。それらを「どう解釈したのか」=信念 を知ることで、本質的な課題解決ができると信じている。
これについては、エドガー・シャインの「プロセスコンサルテーション」に書かれていたので、また別のnoteで紹介したいと思います。
簡単そうにみえて、実は難しい、パワフルな手段である「問い」。まだまだ修行中の身なので、極めていきたい。