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おすもうnote/四日目「力士の引退に思う相撲愛」
泣きそうになるから、書けずにいたこと。
相撲界の人、いつかは来る引退の日。
最近の私は、大関貴景勝ロスでした。
あれ、なんで土俵に居ないの?
あぁ、居ないんだよね。
「心にぽっかり穴が空く」とはこのことか、と。しばらく受け入れられないのです。
でもね、湊川親方となっての相撲解説が本当に素晴らしくて、泣いてばかりいられません。
現役力士と、最近まで対戦していた親方の解説は、分かりやすいだけでなく、とてもリアルな表現をされます。
どの関取に対しても感謝と尊敬の念が溢れていて、こちらまで幸せな気持ちに。
引退しても、親方として、また解説者として、今後の人生を応援したくなる…
これが私にとって、生涯、相撲界を愛する醍醐味でもあります。
横綱照ノ富士のことも、そうでした。
引退が発表されてからの丸一日、ほとんどスマホを開けなかったくらい。
切なさと、安堵の気持ちと、心からの「お疲れ様」と、それこそ、感謝と尊敬の念と。
思いがぐるぐると溢れています。
とある場所で出会った人とよく話すようになり、半年後に、お互い相撲好きとわかりました。照ノ富士が、大関からケガで序二段まで下がっていた頃のこと。その話で盛り上がり、一緒に応援してきました。
協会公式の大相撲アプリを見て、少しずつ番付が上がっていくのを、毎場所ごとに、話題にして…
序二段、三段目、幕下。ここまで来た!って。
幕下から十両に昇進すると、プロの関取と認められるのですが、幕下の上位15枚目にもなると熾烈な争いが待っています。関取経験者が多くいるこの番付を超えるには、相当厳しい壁があると言われています。
強豪校から華々しいタイトルを抱えて入門してくるニューフェイス達の気迫も溢れ、めちゃくちゃ熱いのが幕下上位。
一場所十五日中、七日間しか取組のない幕下力士にとって、一つの白星が大きく運命を左右します。
幕内経験者でも、ケガで序二段まで下がってしまうと、復帰まで相当な時間を要します。リハビリ生活が数年に及ぶこともあり、体力だけではなく、先が見えない不安との戦いなのでしょう。今も多くの人気力士が、地上波のテレビには映らない早い時間の土俵で、復帰を目指して励んでいます。つい最近までバラエティー番組に呼ばれていた力士達もね。
次の場所の番付は、上から下がる人と上がる人や、昇進や引退による人数の兼ね合いでも決まります。その為、成績が良くても、思うほど番付が上がらない状況も生まれます。いわゆる、「番付運」というものです。
幕下以下の力士に、手当てはあっても給与は無し。関取の付け人やちゃんこ番などの仕事もあります。
身につける着物や履き物も、階級によって決められています。食事やお風呂の順番に至るまで。
そんな厳しい世界なのです。
ケガや持病の不安を抱えながら上がる土俵が、どれほど怖いことなのでしょう。
照ノ富士が、十両に上がり関取に復帰してから、最高位の横綱に登り詰めるまでのストーリーを見守ってきた私達の間にも、相撲愛で繋がる絆のようなものが生まれていたように思います。
それは私達二人だけでなく、きっと全国の相撲ファンに共通の思いでしょう。目には見えないけれど、土俵には相撲を愛する人のエネルギーが注がれていると思うのです。
誰かを応援することで、幸せをたくさん頂いています。土俵は、明日を生きる力です。
横綱照ノ富士関、ほんとうにありがとう。
私達は、初めて土俵そばの溜席から、照ノ富士関を見た時、本当に驚きました。
額や身体だけでなく、指の先からも汗が、
ぽとり、ぽとりと、
ずっと、したたり落ちていたから。
土俵の土に、横綱の汗。
あなたの努力を一生忘れません。
昨日見た笑顔に、ほっとしました。
日本に来てくれて、ありがとう。
あなたの次のストーリーが、幸せに満ち足りていますように。
横綱引退発表のあと、
泣きながら書いている
おすもうナッツ