ちっとも、やほー!ではない
仲のいい社員さんからLINEが来た。
どうだろう、わたしは仲良しだと思ってるけど。
まぁいいや。
「やほー!退職します!」
突然のLINEに声が出た。
ええええええええええ!!!!!
発してからそのままア行を右に5回フリック。
「えええええ」
うざがられたらやだなと思って、ちょっとだけ「え」の数を減らした。返すまで10秒くらいだったと思う。アイコン右上に点灯する赤丸バッジを即消し去りたいわたしは、仕事もプライベートも常に爆速返信なのだ。
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出会ったのはたしか3年前。
意気投合したきっかけは忘れもしない、フットボールアワーの漫才について“あなたもあのネタ知ってるんですねぇ!?”となったこと。お互いになった。はず。お互いのはず。
Rさんはいつもみんなに優しくて頻繁にお菓子を差し入れてくれる。そのとき渡されたのが、チョコレート菓子の紗々だった。
お笑いファンなら分かるよね。めちゃくちゃ面白いよねマジであのネタ。
そのきっかけひとつで好きだと思った。
それから何度か一緒に大きなお笑いライブを見に行った。
いつも「何日空いてる?〇〇のライブのチケットあるんだけど」とLINEをくれる。地下ライブに通うわたしでは到底取ろうと思わないほどの大きなライブのチケットを、抽選を当てた状態で連絡をくれる。わたしはいつも「少しお待ちください!」を秒で返す。空いてなくても、テトリスして空ける。
Rさんにとって、一緒に行く相手はきっとわたしでなくてもいい。チケットが2枚ある、だから誰かを探している。同時に何人にもLINEを送ってる中で、わたしの返信がとにかく早いのだ。
目的と役割が明確だとシンプルで分かりやすくていい。ライブに行って、見て、帰る。浴びたエンタメに心をほくほくさせつつもお互いに感想を深掘りすることもなく、わたしは「いい催しでしたね、誘ってもらえて良かったです」とだけ伝える。
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「今後もう現場でご一緒できないの寂しいです」と素直に言うと、「現場で被らないだけだと考えたら変わらんよ」と返された。すなわちそれは、別にプライベートでまた会うでしょ?ってこと。そりゃそう、だけど。でも、そういうことじゃない。
プライベートで会える人は当然特別なのだけれど、お金を生む活動で関われる人というのもまた特別だ。
だって、ただの友達とはそうそう一緒にお金を稼げたりはしない。一緒にお金を稼げるということは、お互いにお互いのお金になる価値のある能力を認め合っているということだ。
能力について「わたしはどれも完璧にはできないです」と漏らしたことがあった。Rさんは「それは何でもできるってことだよ」と言ってくれた。きっと覚えてないだろうけど。わたしはそのとき明らかに救われましたよ。
何度も言うが、Rさんはいつも優しい。だからわたしは、Rさんならいつだってわたしの求めている返答をくれるのでは…という期待を勝手に抱いてしまう。相談を持ちかけるフリをしながら、背中を押されたくて連絡してしまったことがあった。
その時にくれた返答はこうだ。
「答えはないけどどっちにしても自分に返ってくるなら、自分が楽しめる方を選択をしたら」。
わたしもその通りだと思った。
わたしが根底で思っているまんまの思考をまっすぐ言語化してくれるから、わたしはRさんを好きなのかもしれない。否定せずに聞いてもらえることが分かっていて、言ってほしい言葉を受け取りにいくだけなのは、単なる逃げなのではないか。どうなんだろう。これが正しいのかはまだ分からない。
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改めてほんとうに、やほーではない。
「ちっとも「やほー!」ではないです!」
退職されたあともまた救われにいってもいいですか。わたしから飲みに行きませんかと言える人、本当にいないんですよね。
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![ちゃん](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/112037315/profile_828d6735a518b2f9854852ae7625740a.png?width=600&crop=1:1,smart)