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【洋書多読】『Your Future Self』(272冊目)

『Your Future Self』(Hal Hershfield著)を読了しました。

本書は、人間が未来の自分をどのように捉え、これが意思決定や行動にどう影響を与えるかを探る一冊です。著者は心理学や神経科学の研究を基に、未来の自分とのつながりを深めることが人生をより豊かにする鍵であると主張しています。

本書では、未来の自分を「見知らぬ他人」と感じる人が多いことを指摘し、これが短期的な快楽を追求する原因になると述べています。これは大変腑に落ちる本書の主張であり、目から鱗でした。

一方で、未来の自分を「親しい友人」のように感じられると、健康的な生活習慣や財政的な安定、長期的な目標への努力が促進されるといいます。これは「今を生きる」というお題目を自己正当化のツールとして使う現代人の諸問題を解決する優れた方法論の一つであると思います。

著者は、具体的に未来の自分とつながる方法として、ビジュアライゼーション(未来の自分のイメージを具体的に描くこと)や未来の自分に手紙を書く練習を提案しています。また、AIやVRなどのテクノロジーを活用し、未来の自分の外見をシミュレーションする方法も効果的だとしています。

本書の核心は、未来をただの抽象的な概念として扱うのではなく、「未来の自分」という具体的な存在として意識することで、今の行動に意味と目的を持たせられるという点です。このアプローチにより、目先の誘惑に流されず、より持続可能な人生の選択が可能になると説いています。

人生の選択をより良い方向に導きたい人や、将来への不安を軽減したい人にとって有益なガイドとなる一冊です。超おすすめです。

英語レベルに関して

『Your Future Self』は、TOEIC®︎800点程度の英語力があれば十分に読むことが可能です。ただし、いくつかの注意点があります:

1. 難易度の特徴

  • 専門用語: 心理学や神経科学に関連する専門用語が登場しますが、著者は一般読者向けに書いているため、これらの用語は丁寧に説明されています。専門的な背景がなくても理解しやすい構成です。

  • 文章構造: 比較的複雑な文章や抽象的な概念が含まれるため、リーディング速度が少し遅くなることはあるかもしれませんが、大きな障害にはならないでしょう。

  • 例え話やストーリー: 理論を補強するために具体的な事例やストーリーがよく用いられており、これが内容理解を助けます。

2. TOEIC 800点の読者にとってのポイント

  • リーディングの強化: 時制の使い分け(未来と現在)や条件節など、TOEICで学んだ文法知識を活用できます。

  • 語彙力の補強: 一部の抽象的な単語や学術的な表現は辞書を引く必要があるかもしれませんが、文脈で推測しやすいです。

  • 実用性: 内容が自己啓発的であり、日常生活に応用できるため、英語学習のモチベーションを高めるきっかけにもなります。

3. 読書のコツ

  • 辞書を活用する: 多読的な読み方にこだわりすぎて、専門用語やあまり見慣れない表現は辞書で調べることを躊躇しないでください。内容理解を優先してほしいところです。

  • 章ごとの要約を作る: 章ごとに内容をまとめることで、全体の流れを把握しやすくなります。

  • 音声版を併用する: オーディオブックを併用すると、リスニング練習にもなり、理解が深まります。

英検一級の英語力があれば、『Your Future Self』は辞書にほとんど頼らずに快適に読めるでしょう。以下に詳細を示します:

4. 難易度と英検一級のレベル

  • 語彙力:
    英検一級で必要とされる高い語彙力があれば、本書に登場する心理学や神経科学の専門用語や抽象的な表現にも十分対応できます。一部の専門用語は未知の可能性がありますが、文脈から意味を推測する力もあるため、読解には支障がないでしょう。

  • 文章構造:
    英検一級のリーディングセクションでは、複雑な文法や論理構造を含む文章が出題されます。本書の文章もこれに似た構造が多く見られますが、一級レベルの読解力があれば問題なく理解できる範囲です。

5. 読みやすさ

  • 専門書としての位置付け:
    『Your Future Self』は、専門的な内容を扱っていますが、一般読者向けに書かれているため、学術論文のような堅苦しさはなく、英検一級レベルの読者には比較的スムーズに読めるはずです。

  • ストーリーテリング:
    著者は事例やストーリーを豊富に用いて理論を説明しているため、内容が生き生きとしており、退屈しにくいです。これは英語を使った読書を楽しみたい英検一級レベルの読者にとっても魅力的でしょう。

6. 英検一級の読者が得られるメリット

  • テーマの知的挑戦:
    本書のテーマは心理学や自己啓発に関連するため、抽象的な概念や批判的思考力を要求される部分があります。これに取り組むことは、英検一級取得後の知的好奇心を満たすと同時に、英語で考える力をさらに深める機会になります。

  • 実践的な英語力向上:
    多くの一級合格者は次の目標として「英語で知識を深める」ことを目指します。本書は、そのような目的にぴったりの題材です。

 総評

TOEIC®︎800点程度であれば、辞書や文脈推測の力を活用しながら十分読み進められます。多少の語彙や構文のチャレンジはありますが、内容自体が魅力的で読みごたえがあるため、英語力向上にも役立つ一冊です。

英検一級取得者であれば、本書をほぼストレスなく楽しめるでしょう。また、内容が興味深く実生活にも役立つので、読書自体が学びと楽しみの両方を提供してくれます。

隣人を愛するように、自分を愛する力

著者Hal Hershfieldは、未来の自分を「親しい他人」のように扱うことで、共感力や思いやりが高まる可能性について触れています。

このアプローチには、未来の自分の視点を想像し、その感情やニーズを理解する能力が必要です。これは、他者の立場に立って物事を考えるスキル(共感力)と重なる部分があります。

そのため、未来の自分を思いやることが、他者との関係性を向上させる資質に通じる可能性が考えられます。僕が本書を強く押したい部分はここです。

また、本書では未来の自分とのつながりを深めることが、自分の行動や選択に対する責任感を高めると説明されています。この自己意識の強化が、他者との関係にもポジティブな影響を与える可能性は十分にあり得ます。

本書ではこれらが具体的に「見知らぬ人と仲良くなる能力」にまで拡張されるかについての明確な記述は見られません。しかしながら、自分のことを大切に扱えないと他人にも同じように接する事はできない=「汝を愛するように、汝の隣人を愛せ」というのはキリスト教をはじめ、多くの社会集団で経験的に言い伝えられている幸福のためのTIPSです。

本書は数千年以上にわたって宗教的に、あるいはスピリチュアリティの視点から言い伝えられている「幸福に生きる秘訣」を科学的に証明しうる可能性を十分に感じさせてくれる一冊であると言って過言ではないと思います。




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Ken Sugihara
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