『英語のハノン』初級・中級・上級コンプリートした英語コーチの僕が実感している効果と正しい学習法
【2024年8月29日追記】
『英語のハノンフレーズ編』の記事をアップしました。
ぜひ、本稿と併せてお読みください。
2021年10月17日から学習を始めた『英語のハノン』、翌年11月3日に「上級編」を無事終えて3冊の『英語のハノン』をコンプリートしました。
一年以上一日も休むことなく、いや一日だけ休んだことがあるんですけど、それ以外は来る日も来る日も、ひたすら『英語のハノン』を練習し続けました。
終えてみての感想は「やってよかった」。これにつきます。
ここまでよく練られた英語学習参考書は10年に一度出るか出ないかのレベルです。本書を信じて、インストラクション通り毎日きちんとタスクをこなしていけば、3ヶ月後・半年後・1年後に、あなたの英語は見違えるようになることでしょう。
この記事では、英語のハノンを終えた僕が考える「正しいハノンの使い方」「英語のハノンで得られる学習効果」「英語のハノンを威力をさらに高めてくれる他の学習の組み合わせ」をお伝えしようと思います。
12,000文字近い長編になりますが、ぜひ最後までお読みいただいて、47歳(当時)にして英語力の爆発的な伸びを実感している『英語のハノン』の効果を、みなさんにも感じていただければと思っています。
A.正しい『ハノン』の使い方(実施方法)
当然なんですが、正しい方法で取り組まないと『英語のハノン』がもたらしてくれるはずの効果は得られません。
以下は「初級編」の冒頭で述べられている『英語のハノン』の正しい実施方法と、個人的な若干の補足です。これ以外のやり方で実施することは「例外」だと思います。まずは基本に忠実に沿って、進めていってください。
1.閉本で行う
練習にはダウンロード音源(無料)を使います。本書は読むためだけにあるのではありません。中心は音源をメインに使用した学習です。
練習すべき英文が2回流れたあと、スピーカーの指示にしたがって、最初に口に出したセンテンスを変化させる。その変化させたセンテンスをさらに2回=計3回発話します。ハノンの基本的な進め方はこれです。
全ての発話は、録音と録音の間のポーズ中に完了していなければいけません。次の音声が流れてくるまでに間に合わなければ、それは「できていない」ことになります。
最初は本を開いて、そこに書かれているドリルの英文と音源から流れてくる音を結びつけながら練習しますが、慣れてきたら必ず本を閉じて行います。ここが最も大事です。
この「聞こえてきた音を、(視覚に頼らずに)聞こえてきたとおりに真似る」というのが『英語のハノン』の学習法のキモです。この「音を中心に英語を学べるようにした」というのが英語のハノンが画期的だった部分の一つだからです。
勝手にカタカナ英語に変換してもいけませんし、自分が読みやすい・言いやすいようにアレンジしてもいけません。
2.1日一ドリルずつ進める
最初のうちは比較的簡単なので、どんどん進めて行きたくなる気持ちはわかるのですが、先に進む時間があったら同じドリルを何回も何回も、口がなれるまで実施するべきです。
1日1ドリル、これもハノンを進めていくときの鉄則でしょう。でないと後々のタフなドリルに出会ったときに必ず挫折することでしょう。
もう一度言います。一日一ドリル。これが鉄則です。
3.Natural Speedの音源でできて「完成」
ハノンには「スロースピード」と「ナチュラルスピード」の2種類の音源が用意されています。
「スロースピード」は練習用ですから、これができるようになっても、ハノンから得られる真の効果は得られません。実施する際は最終的に「ナチュラルスピード」でできることを目指してください。
理由は遅いスピードの方のリピーティングでは、そのセンテンスや音の変化などなどに理解がきちんと及んでいなくてもある程度「ごまかし」が効くからです。
しかしながら、ネイティブがしゃべるナチュラルスピードの方の音源というのはそういう誤魔化しが効きません。コチラの方の音源をきちんとリピーティング・パターンプラクティスできるようになって初めて、その英文は「単に知っている」だけの知識から、実際に使える英語・英文に移行したことになります。
僕たち日本人英語学習者は、「単に知っている」状態の知識を量的に増やしていくことをもって「英語ができるようになる」と認識していますが、実際に英語ができるという感覚は、そこから一歩先に進んだ「知識を使えるものにする」ことで得られます。
負荷の低いスロースピードの音源を使って学習していてはそこにたどり着くことは難しいでしょう。体が(口が)覚えてしまうまで、何十回でも何百回でもナチュラルスピードで練習する。これが大事です。
4.毎日やる
リスニング、スピーキングなどの音声を伴う英語学習というのは効果の発現しにくい「遅効性」の学習と言われています(だからみんなやりたがらないんです)。なかなかできるようにならない。あるいはなったような気がしないんです。
筋トレと同じです。一日やっただけでムキムキになったり、望む体型を手に入れたりはできないですよね?
更に厄介なことに、この手のプラクティスは一日休むと昨日までできていたことができなくなったりします。逆に毎日続けていれば、いつか必ず実を結ぶ。そしてそこには特別な才能は必要ありません。正しい方法に従ってただ続ければいいだけです。
この手の遅効性の学習は「続ける」ことで、昨日までの学習(プラクティスと言ったほうがしっくり来ますが)で出来るようになったことを維持・発展させていくことができるのですが、一日中断してしまえばいとも簡単に一昨日以前の状態に簡単に戻ってしまいます。
英語学習が中断する方というのはだいたい「昨日は5時間やったから、2日くらい休もう」みたいな感じで、コンスタントに一定量の学習をこなすことができない人たちです。
僕自身の学習経験、そしてコーチとしての英語指導経験からもこれは明らかで、毎日コンスタントに一定量の学習ができない方というのは一進一退を繰り返し、結果的にかけた時間に対して期待されるべき英語力の伸びを得られないまま次第に学習からフェードアウトしていきます。
1日5時間やった!オレすごい!と自画自賛してその後4日休むのなら、一日30分をコンスタントに5日続けるほうが、半分の所要時間で伸び方は劇的に違います。残酷なくらい変わります。英語学習というのはそういうものですが、とりわけ「音」にフォーカスした学習群は、この傾向が顕著に現れます。
それでもまだ、毎日コンスタントに30分時間を割く努力を怠りますか?
5.できなかったら翌日に持ち越す=次に進めるための基準とは?
決めた時間その日のドリル(Unitじゃないですよ、Drillです)を実施してみてどうも上手にできるようにならなかった場合は、思い切ってその日は切り上げて、翌日もう一回同じDrillを実施しましょう。
一晩寝てみてまた翌日同じフレーズを口にしてみると、意外と出来るようになっていたりするものです。それを確認してから次に進むのがいいでしょう。
ちなみに、「出来た/出来ない」の判断は以下です。
・各音源のポーズ中にリピーティングが終わっている
・1〜5までの全てのセンテンスが詰まらず淀みなく言える
・正しい発音で音源のセンテンスをコピーできている(※)
この内のどれか一つが欠けてもだめです。1Drill、5センテンス、全てをよどみなく、つっかえることなくスムーズに言い切れることを持って「OK」とするべきです(発音に関しては「※」欄にて後述)。
B.『英語のハノン』の効用について
それでは次に、『英語のハノン』を一日一Drill、閉本、ナチュラルスピードで一年以上実施して得られた効果をご紹介します。
参考にしていただけると幸いです。
1.Speaking=わざわざ留学しなくても話せるように
先日、縁あって通訳のお仕事をしたんですが、コチラの思いを英語を使ってお伝えするのに、ほとんど違和感やフラストレーションを感じませんでした。フィリピンで生活していたときに比べてスピーキングが遥かに上達しています。
また、先日某大手英会話スクールのオンライン講師の求人に応募して模擬授業(モッククラス)を実施したんですが、「英語をしゃべる/聞く」については何ら問題ないレベルでこなすことができ、採用されました(採用担当者の評価による)。
通訳・オンライン英会話講師の求人への応募、どちらも『上級編』の後半に差し掛かっていたときに行ったことです。これはハノンを始めた1年前には考えられなかったスキルです。
オンライン英会話レッスンなどの「アウトプット学習」をしたことはほとんどありません。日本にいながらにして「英語でお金をいただけるスピーキング力を手に入れられる。
これが個人の経験に基づく『英語のハノン』の効果、威力です。
2.Listening=実は一番効いてくる
『英語のハノン』を初めて僕がすぐさま効果を実感し始めたのが「英語が聞き取れるようになった=つまりリスニング能力が上がった」ということでした。
リスニング力の向上はとどまるところを知らず、初級、中級そして上級と、実施する『英語のハノン』のレベルが上ってくるにつれ、クリアに聞こえてくるコンテンツがどんどん増えていきました。
お時間のある方はこちらのポッドキャストのアーカイブからお好きなものを適当に選んで試しに聞いてみてください。『英語のハノン』を始めた一年前の当時、僕はこの『This American Life』が聞き取れるようになりたいと、ずっと願って学習を続けていたのでした。
それが今はあまり苦もなく聞き取れるリスニング力になっています。細かい部分では分からない箇所はありますし、アメリカの文化に精通していないと意味が取れない部分などはありますが、少なくとも「何を言ってるんだか見当もつかない」ということはもうありません。
後述する単語学習等との相乗効果もあるでしょうから純粋に『英語のハノン』だけやっていればいいということはありませんが(そもそも、これ「だけ」をやっていればいい、という学習法なんてありません)少なくとも一年間続けてきて最も劇的な伸びを感じているのが、実はスピーキング以上にリスニング力だった、というのは知っておいていていただきたいです。
3.Reading=「リテンション力の向上」がリーティング力を押し上げてくれる
先ほどお話した「リスニング力」の伸びはリーディング力の向上に一役買っています。
リーディング力の向上に必要なのものは「語彙力」と「文法知識」ですが、早く、正確に読めるようになるためには「リテンション能力」が必要になってくるからです。
リテンション能力とは「記憶力」、とりわけ短期的な記憶を保持しておく力のことを指します。この能力は5〜6秒程度分くらいの英語を一時的に脳に保持して処理する力を指すようですが、『英語のハノン』の「聞こえてきた英文を真似る」というプラクティスを実施するためには聞こえてきた英文を一旦脳に記憶しておく必要があるわけです。
その「一時的に保持できる英文の量」が、ハノンを練習することで飛躍的に高まります。
よく長文読解などを指導させていただいていると「(読んでいると)どこまでが主語だかわからなくなる」「どれが述語動詞なのかがわからない」「どこまでが関係代名詞節なのかが…」と言った生徒さんの声を耳にします。
この症状は、一度に処理できる英文の量が少ない=リテンション能力が低いことで起こっていると考えられます。直前まで読んでいた箇所の意味、文構造、などが短期記憶から抜け落ちてわからなくなるんです。
リテンション力が高まると、流れてきている・目に入ってきている英文を一時的に保持しておく脳の領域が広くなります。意味を追いかけながら「これはまだ文の主部が終わっていないな」とか「今関係代名詞節の途中だな」といったことを認識しながら同時並行的に「いま」読んでいる/聞こえてくる英文を処理できるようになるんです。
これがリーディングで出来るようになると、無駄な「返り読み」はなくなっていきますし、そもそも英文を一時に処理できる絶対量が増えますから、畢竟読むスピードも上がります。しかも内容がクリアに頭の中に入ってくる、というおまけ付きです。
リーディング力が爆発的に伸びてきている僕は洋書を読むのが最近ほとんど苦にならず、気がつけば楽しみながらネイティブレベルの英語話者ならほぼみんな達成しているという洋書多読1000万語を達成しました。
4.Writing=英語を英語のままで考えて、アウトプットできるようになる
「聞ければ読める」ようになるように、「話せれば書ける」ようになる、これもまた当然のことです。
話すこと=「頭の中で英作文した文章を声に出している」ということですから、パソコンなり原稿用紙に向かって、文法を意識しながら時間をかけてじっくり文字を起こしていく「ライティング」は、「スピーキング」というアウトプットに比べて難易度は随分下がります。
『英語のハノン』はスピーキングのドリルであるのと同時に優れた文法書でもありますから、ハノンを使った学習を通じて口にすることができるようになったフレーズを構成している英文法は、ライティングのときにも絶対にさっと出てきます。
スピーキングにしてもそうですが、この「英語で考えて英語のままアウトプットする」という感覚はとても気持ちがいいものです。この感覚を一度味わうと、英語を学んでいくのが本当に苦痛でなくなってきます。
C.他の学習と組み合わせて効果倍増!
単体でももちろんかなり強力なのが『英語のハノン』ですが、もちろん他の学習と組み合わせることで、よりその効果が増してゆきます。
英語を使って何が出来るようになりたいかにもよりますが、ここでは英語の全般的な力を引き上げて、望む方向に向かっていくための土台作りとして有効と思われる「『英語のハノン』+α」の学習を3つ、ご紹介したいと思います。
1.多読(・多聴)
まず1つ目は「ネイティブがネイティブに向けて書いた文章」の多読、そして多聴です。
多読に用いる文章は、TIME誌とかNewsweek誌などの難しい文章ではなく、ネイティブの小学生が読むようなシンプルな文章が望ましいです。いわゆる「多読」の原則に忠実に従って読むんです。
多読の効用は数知れませんが、『英語のハノン』との相乗効果を考えたときに最も大切にしたいのが「英語を英語の語順のままで理解できるようになる力」です。
先程「スロースピードでのハノンの練習はごまかしが効く」というお話をしましたが、ここでいう「ごまかし」というのは日本語の語順で、英語→日本語の変換をしながらでも英文を聞いたり読んだり口にしたりするということです。
しかしながら、実際の運用レベルでの英語においては、日本語をいちいち介在させて処理しているうちはまだまだです。
英語多読の「うんとやさしい英文を大量に読む」という練習は、この「英語を英語の語順のままで理解する力」「英語を日本語に変換しない力」を飛躍的に伸ばしてくれます。音声系の学習と同じく、多読のこの力も遅効性のものですが、やっていれば必ず「英語の語順=英語の文法」が頭ではなく身体で理解できるようになってきます。
ハノンとの相乗効果における「多読」を考えたときに最も大切にしたいのがここです。決して難解な文章を、ウンウンうなりながら読み下す力をつけたいのではありません。
むしろその真逆で、大量の優しい文章を読みまくることで「SV/SVC/SVO/SVOO/SVOC」が、なんにも考えなくても処理・理解できる脳を作ってしまうんです。
これが出来る状態で『英語のハノン』のプラクティスを実施すればより「音」にフォーカスした学習に専念しやすくなるので、オーラシーを重視する『英語のハノン』学習効果は増すでしょう。
2.単語学習
『英語のハノン』によって、頭で考えなくても正しい英文法を使って発話できるようになったなら、語彙量を増やすことでより読める/話せる/聞ける/書ける英語は増します。
ただし、ここで言う「知っている単語」の定義は、一般的な英語学習者の方がイメージしているものに比べて若干ハードルが高いかもしれません。
「知っている英単語」とは、見た瞬間/聞いた瞬間に意味が出てくるというものです。「うーん…」とうなりながらひねり出さないと意味が想起できない単語というのは『英語のハノン』を使って英文法を使いこなせるレベルになった人にとってはまだまだ「使えない」単語です。
ペーパーテストの4択の中から正しい答えをマークして塗りつぶす知識としては、それで十分事足りますが、それではせっかく『英語のハノン』で鍛えられて磨き上げられた英語力にとっては不釣り合いで、あまりにもったいないと思います。
僕が提供させていただいている英語コーチングでも「一秒以内に意味が出こない単語は知らないのと同じです」とお伝えして、チェックテストでできなかった場合はやり直しをお願いしています。
僕たちが『英語のハノン』を使って手に入れるのは知っているだけの英語知識や文法知識ではなくて「使える英語」です。ですから語彙力も、それに釣り合うくらいのレベルにまで持っていきましょう。
繰り返しになりますが、「使える英単語」というのは、その単語が視覚・聴覚からそれぞれインプットされた瞬間に「日本語の意味が言える」か「その語のもつイメージを想起できる」単語ということです。
「瞬間」です。考えていてはいけません。
appleという文字列を見た瞬間にあの赤くて甘いみずみずしい果物を想起できるレベルで、今取り組んでいるレベルの単語を想起できるレベルに持っていくこと。これが「使える単語にする」の定義です。
個人的に、英語学習をする人は「単語学習をおろそかにしない」のが良いと思っているので、これはハノン云々の前に原則論ということになりますが、単語はちゃんと時間をとって学習しましょう。
3.黄リー教で英語を精密かつクリアに理解できるようになる
『英語のハノン』を学習の中心に据えつつ、多読・多聴で英語を前から処理する力を養い、見た/聞いた瞬間に意味が取れる英単語の数を増やす。
これだけで、あなたの英語はすでにもう実用に十二分に足るレベルになるんですが、ここに「精読=文章の構造を緻密に解析しながら読める力」が加わることで、まさに鬼に金棒になります。
これを可能にしてくれるのが「黄リー教(基本文法から学ぶ英語リーディング教本)」です。
詳しい『黄リー教』の説明は上記のリンク先の拙記事に譲るとして、ではこの『黄リー教』がどう『ハノン』と相乗効果を及ぼしあうかというと、読める・意味を解析できる英文の幅を圧倒的に広げてくれる、いうことです。
精読の本なんて、書店に行けばそれこそ掃いて捨てるほどありますが、黄リー教がそれらと一線を画し、ここまで絶大な支持を得ている理由はひとえに「知識を知識のままで終わらせない」という、ある意味『英語のハノン』に通じるようなストイシズムだと思っています。
『黄リー教』を英語学習に加えることで、『英語のハノン』で身につけた(文字通り体得した)英文法を使って、より複雑で抽象的な英語が読めたり聞けたりするようになります。
具体的には著者である薬袋先生が提唱されている「スラ錬/ヤオ錬」という練習方法で、頭で考えなくても
「ing形の4つの可能性はなにか?→動名詞、進行形、現在分詞形容詞用法、分詞構文」
「名詞の文中における働きは何か?→主語・動詞の目的語・補語・前置詞の目的語・同格・副詞的目的格」
というようなことが、パッと理解できるようになります。
ちなみに、ある文法事項が頭で考えなくてもスラスラ言えるようになるまで何十回も何百回も練習するのが「スラ錬」で、そのスラ練での知識を応用して実際に複雑な文を読み下していく練習が「ヤオ錬」です。
これに習熟することで、英文を正しく読んで正しく構築するための論理的思考プロセスが身につきます。そうなると間違えた英語を話たり書いたりするリスクはゼロに近づいていきますし、読んでいて・聞いていて、文の構造がわからない、ということも(ほぼ)なくなります。
これは裏返すと「ある文章がわからない=語彙がない」ということですから(リスニングの場合は「音が聞き取れていない」もありますが)、第二言語として英語を学ぶ者にとっては福音です。
なにせ「英語がわからないのは、単にその語彙を知らないからに過ぎないんだ」というふうにキメられるんですから。
単語を一個覚えれば、その分読める文章が一個増える。あの退屈な単語学習に対するモチベーションをこんなに劇的に上げてくれるシチュエーションが他にあるでしょうか(反語)。
4.発音のレッスン=発音は独習できないと心得る
最後にオンライン英会話の「発音レッスン」。これは受けておいたほうが絶対にいいでしょう。
ここでご紹介している4つの学習のうちで「時間がないからどれか一つだけ選んでください」と言われれば、間違いなく僕は「発音レッスン」をチョイスすると思います。
諸説ありますが、おそらく「小学校就学前までに英語のシャワーを浴びせる=24時間ネイティブスピーカが子供の周囲を取り囲んで生の英語の音を聞かせる」という環境にいない限り、発音が100%ネイティブになるということはありません。
つまりどれだけ努力しても、ネイティブに近づくことはできたとしても、ネイティブのように発音できるようにはならないということです。
辛いですが、換言すると「僕たちは間違えた発音でしか話せない」ということになります。どれだけ発音が上手な人だったとしても、そこには必ず多少の「間違い」が含まれています。中学生以降に英語を学び始めた人は尚更です。
間違った発音、それ自体は決して問題ではないんです。ここで僕が強調したいのは「僕たちは自分の発音の間違いに自分で気づくことができない」ということなんです。
どれだけ耳のいい人でも、どれだけ音感の優れた人でも、発音を独習すると必ず自分の話しやすいクセで話してします。そしてその話やすいクセというのは当然僕たちの母語である日本語に引っ張られて発される音です。
具体的に言うと、本来英語にはないはずの音を勝手に捏造して、一番近い日本語のどれかの母音、子音を勝手に当てはめて発音してしまうということです。
更に厄介なことに、英語にとってもっとも大切な「リズム・イントネーション」に至っては、独習によって得られるものは英語話者としてはだいたい壊滅的で、正しい英語のリズム・イントネーションは得てして「そんな読み方、話し方があるなんて思いもしなかった」というものだったりします。
『英語のハノン』を独習することの陥穽はここにあります。つまり、自分で知らず識らずのうちに、間違った音・リズム・アクセントで発音するクセを強化しながら学習を進めてしまうリスクが高いんです。
間違った音・リズム・イントネーションで話される英語の「通じなさ」は致命的です。そんな英語が身についているリスクに気が付かないまま、ハノンの学習を進めてしまうこと。一年後に「は?」と呆れられてしまう英語の完成です。
発音を学ばずにシャドーイングなどの「音声系」の学習を進めてしまう最大のリスクはここにあるんですが、日本人英語学習者はこのリスクに対してあまりにもイノセントで無自覚なんです。
ただ、さすが名学習参考書『英語のハノン』です。「初級編」の一番最初に、「音」にフォーカスしたドリルをきちんと用意してくれています。僕たち学習者は必ずここから始めるべきなのですが、このドリルとて、複雑で多彩で豊かな英語発音を完全に網羅しているわけではありません。
発音は独学では決して身につけることはできません。ロジックはわかっても、それを身体のレベルに落とし込むには途方も無い練習と、適宜「間違い」を指摘して修正してくれる人、そして「正しい音の出し方」を教えてくれる人がどうしても必要なんです。
この「誤った発音の矯正」というのは実はネイティブスピーカーには難しいことなんです。ネイティブというのは(音声学・フォニックスの専門家でもない限り)「どうして自分たちが正しい発音で話せるのかを客観的に説明することができない人たち」のことだからです。
だから発音は、すごく発音のきれいなノンネイティブにお願いして学ぶべきところなんです。
ここは個人的にはフィリピン人講師の独壇場という気がしています。万が一日本人でこれがデキる人がいたら、お金に糸目をつけず教えを請うべきでしょう。
それくらい、発音の誤りを指摘してくるれる存在は重要です。ここをきちんと抑えておくことで、「オーラシー」を英語力アップのための中心に据えて編まれた『英語のハノン』の学習効果は数倍に膨れ上がるでしょう。
【おわりに】果てしない英語学習の道のりだから
英語学習は果てしない道のりです。
先日拝聴した講演で、『英語のハノン』の著者のお一人である横山先生ご自身が「もう何十年も英語をやっているけれどまだまだ…」というようなことを仰っていました。
先生ほどのエキスパートでらっしゃいますからそこには謙遜もお有りなのでしょうけれど、一方で、これはおそらく先生のほとんど偽らざる本音なんだろうと考えたりしています。
僕は41歳で英語を学び直し始めてまだ6年ちょっとのヒヨッコです。そんな僕にでも、英語道の果てしない道のりのことは感覚的にわかります。
やればやるほど目指すゴールの大きさと遠さに思わず足がすくみそうになる。それが「英語」というものです。
けれど同時にだからこそ、一生かけて取り組む価値があるとも言えると思っています。果てしない道のりだからと諦めるのか、だからこそやってみるのか、それはその英語学習者次第なのかもしれません。やらない選択肢だって十分に合理的ですし、他のことに時間を割くことも全くクレバーな選択でしょう。
ただ、そんな「果てしない」ものであるはずの英語の道のたった一年間をこの『英語のハノン』に捧げるだけで、その英語力は多分今とは全く別の違った地平へと僕たちを連れて行ってくれる、それが『英語のハノン』を終えた僕の飾らない素直な気持ちです。
そんな世界があったとは思いもよらなかったような世界、自分の貧困な想像力では決して思い描くことのできなかった世界を見せてくれる存在のことを「メンター」と呼びます。
僕の純粋な英語の道における最初のメンターは、セブ島でお世話になった語学学校のCEOでした。この方から僕は「多読・多聴」という学習方法を教わり、英語が広げてくれる世界の豊かさと楽しさを学びました。今こうして英語を生業とすることが出来るようになったのはまさにこの方のおかげです。それまでは初心者に毛が生えた位の英語力しかなかったこの僕が、です。
そして「今」の僕のメンターは間違いなく、『英語のハノン』と、それをこの世に出してくれた横山先生・中村先生にほかなりません。
抽象的な言い方になりますが、『英語のハノン』のおかげで、僕が認識していた英語の世界はよりクリアで精密で、そして鮮やかなものになりました。こんな素晴らしい書籍に生きているうちに出会えたことの奇跡に感謝するばかりです。
この長い長い投稿をお読みくださったあなたなら、もうきっと『英語のハノン』をやりたくてウズウズしていらっしゃるに違いありません。
そして正しい仕方で真摯に英語とこの書籍と向き合うことができたなら、僕がそうだったように、この記事をお読みくださったあなたもまた、全く新しい英語の地平を切り拓くことが出来るはずだと、そのことを最後にお伝えして、長い長いこの本稿を終わりにしたいと思います。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。どうか『英語のハノン』を手にとったすべての方が、英語とともに、幸せな人生を歩んでいかれますように!
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