【洋書多読】Mindset:Updated Edition: Changing The Way You think To Fulfil Your Potential(242冊目)
Carol S. Dweck 著『Mindset:Changing The Way You think To Fulfil Your Potential』を読了しました。
僕が読んだバージョンは、オリジナルのものに比べて10,000語程度長くなっているようです。両者の目次を比較してみると見出しはほぼおなじになっているようですが、実際にはオリジナルの出版後著者が必要と判断した情報が加筆されています(同書「Introducion」に具体的な記述あり)。
成功者と失敗者を分かつものはマインドセット=ある状況に陥ったときの心の持ちようにある、というのが本書の主題です。人間が持つ二種類のマインドセットがどのようにその後の成長、結果に結びついていくのかを、膨大な実証事例をもとに解説してくれています。
「Growth Mindset」を持つものがすべからく失敗から何かを学び成功を手にしている一方で「Fixed Mindset」の持ち主がどのように失敗から自己肯定感を低下させ凋落の一途をたどっているかを「人は得てして「Fixed Mindset」の状態に陥りやすい」という傾向とともに解き明かしていってくれる本書。
とっても読み応えがありました。
読み応えはあるけどちょっと読んでてしんどくなりました。
ただ正直なところ、ほとんど同じ話の繰り返しに半ば辟易しながらかろうじて最後まで読みおおせた、というのが偽らざる僕の読後感です。
とにかく「Growth Mindset=善:Fixed Mindset=悪」の二項対立でひたすら話が進んでいきます。ビジネスの場面で、スポーツ選手において、子育てにおいて、パートナーシップにおいて…実際の事例を紹介しながらただひたすら「Growth Mindsetの人は幸せ・成功を手にし、Fixed Mindsetの人は不幸になって没落していく」という話を何十回も繰り返し読まされていると、話がシンプルなだけに必要以上に嫌気が差してきます。
英文量7万語超の尺でこの善悪二項対立の単純化された比較を読まされ続けるわけですから、僕を始め「Fixed Mindset」のおかげで人生で様々な生きづらさを被ってきてるという事実に本書を読み進めていく中で徐々に自覚的になっていく人からすると、若干腹が立ってきさえすると思います。
とはいえ、それは本書がまさに「痛いところ」を=つまり核心をついているが故である、とも言えるでしょう。
話がシンプルなぶん反論の余地をみつけるのもなかなか難しいような気もします。ロジックの正確さや、心理学的な考察の盤石性とかいう以前に、あまりに当たり前過ぎて人々が気づかない・指摘しない「失敗しがちな人間の性向」に、愚直なまでに真正面から科学的アプローチを施したがゆえの説得力、と言えるかもしれません。
興味のある方は、本書を手にとって頂く前に著者自身によるこちらのTEDトークを視聴してみていただくのもいいかもです。むしろ長い時間かけて一冊の本を読むよりも、こちらのTEDでさらっと概要を掴むほうが色んな意味で良い気がします。この動画を見て興味が沸いた方は実際の原書をどうぞ、と言う感じです。
とてもゆっくりで聞き取りやすい英語は、リスニングの苦手な方のシャドウイング教材としてもピカイチ!かも知れません。
教育関係者に読んでほしい一冊。TOEIC700点代後半〜OKの英語
気になる原書の英語レベルですが、著者の聞き取りやすくて理解しやすいTEDのスピーチを彷彿とさせるような、とても読みやすい英語でした。
TOEICなら700点代後半から、英検なら準一級以上、いずれは英検一級もチャレンジしてみたい、という向きの英語学習者にピッタリの、かんたんすぎず難しすぎない丁度いい頃合いの英語という感じがしました。
心理学に興味のある方、この領域の語彙力が豊富な方などなら英語力がもう少したらなくても十分興味深く読みすすめることができると思います。
何より、本書は僕のようにコーチングを生業としている人や、学校の先生などの教育関係者の方に特に読んでいただきたい一冊です。
というのも、本書の主題がまさに「Growth Mindset」=成長型のマインドセットを育むことで、困難に積極的に立ち向かえるパーソナリティを育むことができというものだからです。
天賦の才能を寿ぐのではなく、失敗を乗り越え失敗から何かを学ぼうとする「姿勢」へのフォーカスによってGrowth Mindsetを育むことができる。これほど可能性に満ちた、前向きなメッセージを運んでくれる価値観は、コーチングなどの未来志向アプローチにとても親和性が高いと思います。
人生になんらかの不全感や欠乏感を感じている人にも手に取ってみていただきたい一冊です。
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