『Into the Wild』を読了する
先日『Into the Wild』(Jon Krakauer著)という洋書を読み終えました。
例によって例のごとく、Brighture関係のTwitter界隈で流れてきたように記憶している一冊なのですが(松井さんがツイートしてらしたのかな?)本当に良かったです。
アラスカの荒野で死体で発見されたクリス・マッカンドレスという青年の足跡をたどりながらその死の真相に迫るノンフィクションです。これがとてもスリリングで、ページをめくる手が止まりませんでした。
映画もいいけれど
本作は映画化されていて、僕も世界一周に出る前の2016年、英語を学ぶために留学させていただいたフィリピン・セブ島の英会話スクール「クロス・ロード」のマネージャーさんのおすすめいただいて観たことがあります。
ヴァージニアの裕福な家庭に育った青年が自分探しのためにすべてを捨てて旅に出て、そしてアラスカの荒野で餓死するというシンプルなストーリーラインと美しい映像が印象的な映画です。
原作がノンフィクションなので、当然実話をもとにしています。そこもまた、僕のような社会からのはみだし物にはとてつもなく心に響きました。
ただ、たしかに良かったんですが、「ただそれだけ」と言えばただそれだけの映画だったというのが正直な感想だったのも事実です。裕福な家庭に生まれた青年が「ウエーイ!」って感じでアメリカ西部〜アラスカを旅して最後餓え死にしてしまうっていう。
が、今回英語の書籍を読んで「これは書籍を読まないと面白さが半減してしまう」と思いました。せっかくの映画をちゃんと堪能できていなかった、ということです。
死の真相に迫る著者:ジョン・クラカウアー氏の執念
ジャーナリストであり自身も冒険家でもあるジョン・クラカウアー氏が家族を捨ててからアラスカにたどり着くまでのクリス青年の足跡をたどっていくうちに、一般的に言われていた「無鉄砲で向こう見ずな青年の犬死」といったアメリカの世論に徐々に懐疑的になっていく様子がなんだかすごく真に迫っていること。これが原作を読むことの醍醐味だと思います。
クリス青年の死は、アラスカの大自然をなめてかかってしまった馬鹿な青年の末路などではないかもしれない。そういう疑念が著者の中に湧き上がってから、それを証明しようと関係者の証言を集めたり、自身で過去のクリス氏にまつわる記事や果ては論文までにあたっていく様は、淡々としているからこそ、ちょっと鬼気迫るものがあります。
クラカウアー氏自身の中にあるクリス・マッカンドレス的なるものの琴線に、彼の何かが触れたんでしょう。そこはぜひ本書にあたって経験していただきたいと思うんですけど、これはもう本当にジャーナリズムの鏡というか、「読ませるなー」と思いました。
良質なテクストを読んだ後の爽快感があります。
HAPPINESS ONLY REAL WHEN SHARED
幸福は誰かと分かち合わなければならない…。本書のクライマックスで登場するクリス青年の言葉ですが、この箇所で僕は涙腺が崩壊しました笑
僕は2016年から一年ほど世界を放浪しましたが、素晴らしい思い出は、「どこに行ったかではなく、誰と行ったか?」によるものだ。そんなふうに思ったからです。
ぼくの旅はクラス青年のそれほどタフなものでは全くなかったけど、全てを捨てて旅に出た青年がアラスカの荒野で、極限の状態で最後に絞り出した言葉がこれだった…というのには痛切に心を打たれます。
英語は難しいけれど
英検一級・TOEIC900点レベルの英語力って、僕のイメージではこの『Into the Wild』くらいの英文をスルスル読めるものって感じでした。
が、現実は英検一級合格後、2年以上多読を続けているにも関わらず、僕には本書を読むのは大変骨が折れました。植物や化学物質の名前、地名・人名などはもとより、見たことのない単語のオンパレードでしたし、表現も修辞的で大変意味が取りにくかったです。
でもいずれこういうのを読めるようになりたい!って思わせてくれる一冊であったのは事実です。意味はたしかに取りにくいけれど、これが大変「かっこいい英語」であることもわかります。少なくとも僕にとっては。
だからこれからもどんどん硬軟織り交ぜた難易度の英文をたくさん読んで・聞いて、ジョン・クラカウアー氏の英語を、これくらいのレベルの英語をちゃんと読めるようになりたい。そういう向上心に火をつけてくれたことも、本書の魅力ということになるのでしょう。
日本語版を購入しようとしたけれど…
すごく引き込まれるお話だったので、日本語訳を読んでみたい!と思い読了後書店に直行したのですが、残念ながら購入することは躊躇してしまいました。
理由は二つあって、一つ目はなんだか日本語訳がしっくりこなかったこと。もう一つは英語のKindle版に収録されている「Afterword」の箇所の翻訳が収録されていなかったことです。
日本語訳に関しては、僕がその質をとやかく言えるようなことでもないんですが…なんとなく「自分のイメージと違う」という印象だった、というだけのことです。好きな漫画がアニメ化された時に「キャラクターの声がイメージしてたのと違う」みたいなことってよくあると思うんですけど、そんな感じです。訳そのものはおそらく原作に忠実で、本書の魅力を損なうものでは決してないと思うのですが…。
ただ、二つ目の「Afterwordの箇所の翻訳が収録されていない」のは結構不満で、これはすぐに付け足してほしいなと思っています。これが読めないと買う価値ない!とすら思うからです。というのも、本書の魅力をここまで高めてくれているのは、この「afterword」あってこそ!だから。
先に書いたように、本書の魅力はクリス青年の人間性や生き方にある種の共感性を見いたした著者の「クリス青年の死の真相を知りたい」というジャーナリストかつ冒険家としての真摯な姿勢と矜持にあると思うからです。
ま、これとてafterwordにとにかく難しい単語が出てきまくりすぎて読むのに骨が折れたので、日本語版でらくして再読&答え合わせしたい!っていう僕の個人的な(身勝手な)欲望に基づくものですけれど。でも、この「その後(と訳せば良いのかな?)」の翻訳がめっちゃ読みたい!という気持ちには変わりがありません。
そんなわけで、オススメです!
とまあそんな感じで『Into the Wild』の魅力を思いつくままに書き連ねてみました。
『Into the Wild』はやっぱりまず書籍で読んで、それから映画を見る、これが正しい楽しみ方だと思います。
で、できれば先に日本語訳を読んでおいてから英語を読むのがいいかな?と。話の内容がある程度分かっている状態でないと、大部分の人にとってはこの本を英語で読むのは結構苦しいはずです。
僕は映画を先にみていたので、クリス青年の旅とか冒険に関する部分は比較的意味を取りやすかったですが、著者の思索とか、各チャプターの冒頭に必ず引かれているトルストイやジャック・ロンドンなどの、クリス青年が愛したという高尚な文学家の英文の引用は、はっきり言ってほとんど意味がわからなかったです。
これもクリス青年の遺品であった書籍に彼自身がアンダーラインを引いていた箇所だったりと、彼の人となりや考え方を知る上でとても重要な参考文献になるはずなので、この辺がわかれば本書がもっと堪能できたのに…と思うとやっぱり先に佐宗 鈴夫氏の日本語訳にあたってから原文を読む、というのが僕レベルの英語学習者には妥当なステップだったな、と。
ただ、そういうのなしでやっぱり直接原著に当たれる英語力が欲しい!っていうのが一番強くて率直な感想だったりします。
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