エリクソン研究会記録『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』P201L15~P210L3 第29回

※本記事はめんたねにて2013年3月〜2017年6月まで行われたエリクソン研究会のメモ書きを文字起こししたものです。テキストは『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』を使用しました。メモ書きなのでテキストを読んだ前提でないと、わからない書き方になっていることにご注意ください。
またエリクソン研究会では現在は別のテキストの『2月の男』を読んでいます。
http://mentane.net/workshop/pg167.html

P=ページ数 L=行数
読んだページ数P201L15~P210L3

P201~P217 拒食症のバービィの話
エリクソンの方針→自罰的な人は罪の形で指示を与えること。
同情するとうそつきといい、不適切に扱うと従う
これはどう言うことか?

P202L5~6「自分を宗教、つまり神、キリスト、マリア様、ある聖人や宗教や宗教一般と同一視し、自ら餓死していきます」
きれい/きたないにもの凄くこだわる人。潔癖症や拒食症みたいな感じ。人間の清浄モジュールに近い。とにかく無菌室みたいな空間で美しくありたい。最終的に体も無くなってしまって、半分神みたいな感じになってしまった方が良いと考える。そうすれば、うんこもしっこもすることもない。バービィは透明になりたいと言う。意識が大変に強く、かくあるべきと言う自己理想に向かって動く人。

バービィの家は「人間なんてぼちぼち正しくなくても仕方無いよね」という普通の感覚が無い家。家の文化が「正しくあらねばならない」という厳格な文化。母親もきちっと体重管理をして痩せ型の体型をしている。バービィの人格に親の影響があるので、親の態度変えることを強引にやる。

母の口を閉じることで、違う反応が出るようにしている。バービィにとって両親とは?規範を与える人であり、従うべきルールでもある。母親もバービィに対して、食べなさいとは形の上ではいうが、そんなに積極的に本心から言ってない可能性が高い。

何か情動を感じさせる方向にエリクソンは治療を引っ張っている。

P209L1「座って~」
バービィに色んな話をエリクソンはするが、母親は嫌がる。何故か?

子供の代わりにすべての質問に答える親。母親はエリクソンがバービィに質問をするのを嫌がる。

例えば皆で飲み会か何かで話していて話題のキャスティングボードをやたら握りたがる人。他人の話を興味をもって聞けない人。違う話をしているのにいきなり自分に関する話題を出す人。などが思い起こされる。

子供に対する影響力の問題か?良くわからない。

P205丸太小屋の話
超デラックスなものと、普通なモノがあって、超デラックスとそうじゃないものがある。どう言うことか?
イメージとしてはデコトラ(デコレーショントラック)の中にも、クールなものとイケてないダサイものがあるみたいな話。ファンやオタクの中にあるモノをファンやオタクが熱く語ると、そういう分け方があるのか!とカルチャーショックを受けるそういう感じ。
良いオタク/悪いオタク
そういう枠組みや価値観もあるのか!という驚き。丸太小屋に普段接して居ないであろうバービィに、丸太小屋にもデラックスなものと、普通なものがあるんだよと話してあげると言葉にしがたい情動、価値観が揺らされる感覚が起きる。そうするとトランスに入りそう。意識の枠が崩されるので。

価値観の芯がバービィは弱い
芯が弱いからこそ、激しく宗教に入れ込む。解りやすい価値に飛びつく。自分では何が良いのか、正しいのか決められないので、世間一般に正しいモノにすがる。
代表的なモノとして神がある。
こういう人たちは、ご飯を食べるか食べないかと言うことでも私には食べる価値が無い、資格が無いといったようなことを言う。自分の意志で行動するのでは無く、神の正しさに意志をゆだねている。

P204後ろから4行目
「全く見ず知らずの人が母親の口を閉じたままにしておく~」

エリクソンの意図
エリクソンは、子供が見ている前で親にハッキリとものを言うことをよくやる。そうすると、子供に対する影響力を持つことが出来る。バービィの前で母嫌に黙っておくように厳しく指示をする意図はバービィに情動的反応を引き起こすことだ。

ここでは、バービィの言葉を母親が代弁することをエリクソンは罪とした
新しい罪悪の定義をエリクソンがした。この事を母親も受け入れた。母親もバービィに似ている感覚を持つ人間。母親もバービィも罪悪意識が強く、重視する人間なので、罪悪であるという物言いは大変に効く。医学的な正しさという言葉も善悪の言葉に近い。罪悪がこの場合、行動を規定する強いモチベーションになる。バービィ一家は皆罪悪意識が大きいのでハッキリと過ちですと言うことで効果が出る。

これが、罪悪意識をあまり気にしない人にやっても効果が無い。クライアントが罪悪で動くなら罪悪で働きかけ、利益で動くなら利益で働きかける。相手がどういうロジックで動くのかを見極めるのは重要な事。

こうした物言いをして新しい罪悪の定義をしたあとでは、バービィが母親に話しかけるときに、情動的に異なった風に母親を見ることになる。

バービィみたいな人は以下の対比で世界を捉える。
人間である自分を罪と感じ、神に近づこうとする動きをする。


精神的な存在
無欲で、正しくて、善である


身体を持つ
悪で、誤る、罪で、欲がある

神になれるのが一番良いけれども、それが出来ないならせめて神の周りに居る人になりたい。そうすれば、神に近づくことが出来る。

この症例に関するエリクソンのとらえ方は
①拒食のステップ
②過食のステップ
③拒食と過食を行ったり来たりする
④安定する
というプロセスでとらえている。

拒食も過食も愛情のメタファーである。
愛情や承認が欲しいと思い、代わりに食べ物を大量に食べる。その裏返しで、愛情や承認が欲しいのだけど、どうせ手に入らないと思い、手に入らないくらいなら絶つことをして、食べ物をとらないという拒食に出る。

あることに強烈にこだわりをもつと似たようなパターンになる。
例えば巨乳に強烈なこだわりがある男が居たとする。ストレートに巨乳を求めた場合、巨乳好きとなり、エロサイトで巨乳画像を集め出したりする。この場合出方はプラスだ。しかし、自分の欲しい巨乳は手に入らないと歎いた場合、絶望して自分の欲望を切り捨てようとする。その結果あんなものは脂肪の塊だといって蔑み、ツルペタが最高だと真逆の欲に走る。この場合出方はマイナス。

SMでも似たような事が起きて、攻撃が出来ない人が、SMでM側つまり攻撃される側に入ると言うことがよくある。そういう人の場合上の人からはマゾヒズムに関わるが、下の人間にはサディズムに関わる。

ゾンディーテストでは
ストレートに出すのが+
裏返るのが-
使い分けたり、行ったり来たりするのが±
こだわりが無いのが0

P206無法者ソーヤの話
これは何のための話か?
「道に迷った」ので助かった(ミスで助かった)。エリクソンの父のハッキリとした態度は、エリクソンのバービィや家族へ対する態度と共通するアナロジー。最終的にはエリクソンの父はめでたしと終わった。エリクソンの父がハッキリした態度をとったのでめでたしとなった。

3時間未亡人というのは、エリクソンの父が9時に帰るまでは、ソーヤに殺されているかも知れないとエリクソンの母が思ったことをいっている。

バービィの前で母親に指示を出したら、バービィの情動を引き出すだろう
という見立てをエリクソンは立てていたが、ふつうはこういう見方はしない。エリクソンは他人の中でどう言う感情が出るかという推測がとても上手い。

普通は自分のこと、自分の感情が中心になる。
エリクソンはこういう時には、働きかけの目標をたて(今回はバービィ)
働きかける相手の頭の中で働きかけがどう響いて、どう捉えるのかという計算を常にしている。バービィの件ではどれかの話で、上手く引っかかったらOKだろうと、ゆるい感じで働きかけている。

バービィの常に正しくちゃんとやらなければいけないという考えを、崩そうとしている。助かって嬉しかったことと、食べ物をストーブの上で温めていたという話も、食べ物をおいしそうに描写して、食べ物を良いモノとしてイメージ付けている。

命が救われることと、食べ物を温め直すことを結合し。食べ物が良いものとして暗示的に働きかけている。

エリクソンの伝えたいことは、エリクソンの母が父親が死んだと思い込んでいたように、頭の中で確信を持って信じていることが、実際はそうではないことがあるということ。

母がバービィの代弁をすることが良いことだと思っていたが今回は代弁することがそうではないと、これまでの定義づけが変化する。

病んでいる人はかたくなだ。新しい可能性、定義づけを持ち込まない。外から入る情報に心を開き、耳を傾けよというのがエリクソンがずっと言っていること。これは、バービィだけでは無く、ワークショップに参加しているカウンセラー達にも言っている。

エリクソンの母は、父親が死んだことで自分が未亡人になったと勘違いをした。間違いが訂正されると父親が生きていたことが解るので嬉しい。この間違いはエリクソンの母親に非があったわけでは無い。誰が悪くなくとも、人間は間違えることがあると言うことだ。常に正しくあれば幸せになれるという世界観の人が、こういう物語を聞くと揺らぐ。何ともいえない感じになる。

全体的な話の流れとしてネステットループになっている。食べ物の話から入り、ソーヤの話になり、食べ物の話で終わる。

予想P205L2「バービィに~
物語というものに洞察を深めよと凄く言う。
アドラーライフスタイル
人は世界を眺めるときに、合った事実をただ事実と捉える方が難しい

物語のフォーマット
意味づけをしながら捉える。物語パターンが乏しい人は、またその物語かよ。と物語、モノのとらえ方解釈の仕方がワンパターンだ。
世界には色んなタイプの物語があり、色んなタイプがあるという可能性を前提として、見られるようになるだけでも心理療法になる。また、エリクソンはどのように語れば面白いのか?を考えている。面白く語る技術も持っている。

P209歯磨きの話
バービィが口の中にある入れ物をコントロールする。口にものを入れる前段階で、これがコントロール出来ると食べるものもコントロール出来る。雪玉効果になる。その際、前段階ではあえて飲み込まないもので、口の中に入れるものにする。だから歯磨き粉やうがい薬。その上で、約束をさせて、破った場合に罪にする。

バービィはどこかで罰を望んでいる。聖人になりたいと思う一方で、うがい薬がマズイのも罰になっている。こういう人は、何かもっともなことをちゃんといいながら、適度に貶すことを言うと関係が持てるタイプの人。

SMプレイのMの人も同じ。ただ気持ちよさを受け取ってはいけないと考えている。御免なさいと罰せられて初めて落ち着くことができる。

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