エリクソン研究会記録『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』P230L10〜P241L12 第34回
※本記事はめんたねにて2013年3月〜2017年6月まで行われたエリクソン研究会のメモ書きを文字起こししたものです。テキストは『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』を使用しました。メモ書きなのでテキストを読んだ前提でないと、わからない書き方になっていることにご注意ください。
また、エリクソン研究会では現在別のテキストの『2月の男』を読んでいます。
http://mentane.net/workshop/pg167.html
P=ページ数 L=行数
読んだページ数P230L10〜P241L12
P231Qエリクソンが春の話をした狙いは?
エリクソンがよく使う手法だが、話の中でのアンカーとしての狙いが考えられる。季節は巡る以上、毎年春は必ず来る。春が来る度にエリクソンの話を思い出すきっかけができる。この他にエリクソンは、空の話や、夕暮れの話など。
重要な話をするときは、必ずその人が目にする者であろうものと絡め、印象に残る形で話す。
忘却の効果はどのくらい続くのか?
記憶のメカニズムとして、記憶は時間が経つほど忘れ、記憶を残す方が難しくなっていく。人が何かを思い出すときは、思い出すきっかけ、フックがあるときだ。
例えば尾谷が誰かに借金をして、その人はそのことをすっかり忘れていたとする。だが何かの話題で借金の話題が出たときにフッと尾谷の借金を思い出す。思い出さず、忘れているときは無意識に沈み、忘れていることすら忘れている。忘却とは「どのくらいつづくのか?」という時間の問題では無い
それよりも思い出すきっかけ、フックの問題だろう。もっともフックが沢山あっても思い出さないケースはあるが。
春の間の話はどれくらいまで?
大抵間の話は忘れてしまっているが、間が大きければ大きいほど記憶のフックが付きやすく思い出されやすい。忘れさせたい話の直前の話は忘れさせたい話と同じ長さがベストである。直前の話が短く、忘れさせたい話が長いと、長い話の方が記憶に残りやすいからだ。
ちりばめ技法
全体ではAの話をしながら、細切れに合間合間にBの話を入れ、細切れにちりばめたBの話を合体させると1つの話になる。
エリクソンは種まきのように色んなエピソードを挟む。そのエピソードは同じ話とは限らないが、構造的には同じ一本の筋で通っている。同じ話でやる方が少ないかも知れない。
B'B''B'''
という話の展開よりも
CDEみたいな
これは一体何の話だ?と思わせるような脇にそれる話をちらほらちりばめる。
P232真ん中
出所が不明な覚醒。どこで情報を入手したのか?出所を忘れる。
心理療法でやりたいのは?
情報をインストールしたいが、出所を忘れさせたい。他人から与えられた情報よりも、出所を忘れさせ、自分で考えたと思わせた情報の方が抵抗が無く入るからだ。
何故彼女の答えがでたのか?
とまどう
「ちょうどあることが浮かんできた」
追い出さないと思い出したくないことを思いだしてしまう
無意識では覚えている意識の見えないところで動く。重要なのはこの女の人は忘れたいと思って居る。人間こうなりたいと思って居ると無意識下で平気でやる。
P236
エリクソンがサリーに名前を聞いたのはなぜか?
①ぼけた?
②スポットライトを当てる?
1週間のセミナーを本にしたものだが、この1週間同じメンバーでは無く、日によって入れ替わっている。だからサリーの知らない人に名前を名乗らせる?どちらか解らない。
P236~237
言葉一つで行くネットワークのように結びつく
日本の「焼く」と英語の「bake」では意味合いや前提や言葉から想起させるものが違う。「個人的な意味」患者の頭の中にある、言葉のネットワークをそのまま理解すると言うこと。難しい哲学書を読むときにこの考えは必要。
例えばヘーゲルの本を読むとき「自己」「内観」という言葉が出てくるが、本の中で独自の概念として使っていることが多い。どういうネットワークで言葉と定義が繋がっているか把握しないとヘーゲルの言わんとすることは解らない。
「優しい」ということばが患者から出たとき、優しいと優しくないときはどう違うか?優しいことは良いことか?わるいことか?具体的にはどう言うことか?優しいの反対語はなにか?優しいとどんなことが起きるか?と色々質問を投げて定義を明確にする。
エリクソンの発言も同じく、エリクソンの生きていた時代背景も理解しないと解らない。
アズイフテクニックをやっている感じがする。P237昔の話
P237
パイロットの話の意図は?
①相手の言葉を理解する
②言っていることをその通りに信じる必要は無い
本当に言いたいことは別にある。無意識的に理解するまで言葉を真に受ける必要は無いし、飛行機恐怖症という言葉に乗っからない。同じように働きかけるときも、無意識に働きかければ、意識で理解して無くても実行する。
人間が無意識的に動くのは本当だ。アドラーのライフスタイル分析当人の中に無意識的なルールがある。そのルールは作られると忠実に無意識が守る。
言葉でどうこうやりとりするよりも、無意識に約束事をさせ行動を起こさせるのが重要だ。カウンセリングをして、クライアントに宿題を出す宿題をやると治療が上手く行くし、やらないと上手く行かない。宿題をやることそれ自体が、既に行動を変えているからだ。1つ変化が起きれば、他のことが変化する可能性がある。
最近尾谷はある生徒の作文を添削している。その生徒は喋っていても、何を言っているか解らないし、言葉が足りない印象を受ける。そこで、一日五行の日記を宿題にした。最初は支離滅裂な文章だったが一月もやっていると段々改善してくるし、日記のエピソードの中身も充実してくる。日記を書くことで、普段の人とのしゃべり方も変化していく。言葉の充実は世界の変化、ものの見方の変化になり、それまで思い込みで周囲とのトラブルがあったがそれも減ってくる。エリクソンも書き取りの宿題をやらせる。
P240真ん中「自分を信じていないのです」(サリーを直接見る)
エリクソンが紙を封筒に入れて、秘書に手渡したのは、意識では見ないつもりでも、無意識ではついうっかり見てしまうので、トレーニングの為には見ることを封じた方が良いのでこういうことをした。
エリクソンは意志の力信じていない
意志の力は精神的なスタミナを使う。消耗する場面には以下のものがある。
①物事を決断するとき
②何かを我慢するとき
③迷い続けるとき
一日に使える意志の力は決まっている。
意志の力を温存するには。意志をシステム、環境に置き換えることだ。放って置いてもシステム環境がやってくれるように整えることだ。
エリクソンはメモをみたいと思っても見ることが出来ない。見ようかどうか迷ったり、見ることを我慢することは無い。意志の力をセーブしている。
意志の力を必要とするものについては信じない。
無意識を信じると上手く行くとはどういう話か?
無意識は素でできることは上手だが。素で出来ないことは下手。ここでは意識が必要になる。
①無意識で無能
②意識で無能
③意識で有能
④無意識で有能
という上達のプロセス
無意識は-から+へ動く。我々を+へ向かって導こうとするシステム。他の動物も例えば犬も的が来るとワンワン吼えて自分の身の安全を守り、エサを与えると寄ってくる。+には近づき、-からは離れるように出来ている。これは意識的な動きでは無い。
人間の性格とは困った状況に対応、適応してきた学習の結果だ。解決案を考え実行することを無意識が学習した。上手く行かない状況、対処、学習。
無意識は+に向かって物事を学ばせるが、見境が無い。勤勉実直すぎていつでもどこでも学習をやってしまう。急ブレーキが効かないし、長期スパンで動くから、急に方向転換が出来ない。基本不器用だ。細かい調整は意識でやらないと上手く行かないケースも出てくる。それくらいに無意識には圧倒的にパワーがある。このパワーはモチベーションにも繋がる。モチベーションがあれば意志の力を使う必要はない。ここに乗っかって動ければ物事を大きくやれる。
仮に超人になりたい!と意志で思ったとしても、無意識は極力体に負担を掛けずにサボるから、現代的な自己理想に合わせてくれるとは限らないのだ。
生命体が健康に生きるために必要なもので、エリクソンも動物的な健康を推奨している。自己理想や自己啓発はあんまり言わない。無意識とは3歳児とはよく言われる。動物が自然と目指す方向にパワーを出す。周りからニコニコされたい、行っては行けないところには行かない。このレベルの話。意識であれこれ思うよりも無意識に任せれば肉体的にも社会的にも健康的になる。病んでいる人は無意識の上に意識での信念体系が乗っかってしまっていてこじれているのだ。
エリクソンの時代よりも、今の時代の方がこじれている。TV、ネット、本など理想的なモデルが情報として沢山流れてくる。昔はシンプルなキリスト教をトップにした家族中心の文化だった。無意識と意識がシンプルに繋がっている人は少ない意識的な努力が要求される社会になった。意識無意識の風通しを良くして、無意識が何を望んでいるのか知る必要がある。
バーバラくらい発達した無意識なら上手く行くかも知れないが、皆があれ程のものを持っているわけでもない。
カウンセラーはクライアントの余計な邪魔はしない。邪魔なものがあれば取り除く。それさえやれば、あとは放って置いても勝手に良くなるので無意識を信じよエリクソンは言う。
よく自己啓発のセラピーで「やりたいと思ったことをやる」というのがあるが、本当にやりたいことがある人は上手く行くが、無意識レベルでこれが出る人は少ない。意識のレベルで世界に適応する体のクセが出てしまって、それを無意識と思ってしまうから大抵上手く行かない。
例えば、上手く行かない場面でじっとしてやりすごすパターンをもつ患者が居るとする。これまでにじっとすることで自分を守って得をすることを学習してきた。こっちの方が得をするんじゃ?と無意識が納得すれば新しいやり方に変わる。
目指している方向は正しいとしても道具がちがう
砂漠でシャベルをつかっていた人が、鉱山に行ってシャベルを使っても掘れない。だからツルハシを使ったらどう?と考えさせるのがセラピストの仕事
掘ろう!という気力が無意識の仕事だろう。
エリクソンは直面化をあまりさせない。無意識のレベルでツルハシを使わせる。バーバラの件のように。
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