トランプ次期米大統領の人事「忠誠心」・強硬派の面々〜すべてがNになる〜
2024年11月18日【国際】
共和党内からも人選疑問の声
米大統領選で勝利したトランプ前大統領は次期政権の主要閣僚人事を次々と発表しています。国務長官や国防長官など外交や軍事を担う陣容は対中タカ派ばかり。国内政策の高官人事もトランプ氏に近い面々で固めています。人選を巡って共和党内からも疑問の声が出る事態となっています。(ワシントン=洞口昇幸)
国防長官に指名されたピート・ヘグセス氏(44)は、退役軍人で保守系FOXニュース司会者。トランプ氏は人選に当たり、「忠誠心」を最も重視しているといわれています。
「危険な人物」
ヘグセス氏は、米軍内での人種や性別の多様性の容認を批判し、軍制服組トップで黒人のブラウン統合参謀本部議長の解任を求める発言をしています。
政府や軍の要職経験のないヘグセス氏について、共和党内にも「誰だ?」と、国防総省トップに据えることを疑問視する声があります。トランプ氏はヘグセス氏について「米国第一主義の信奉者だ」と述べています。
ロイター通信によると、民主党からは「国防長官は非常に重大な仕事だ。ヘグセス氏のような不適格で危険な人物を就かせることは、われわれ全員を恐怖に陥れる」(ダックワース上院議員)との声が上がっています。
国務長官に指名されたマルコ・ルビオ上院議員(53)は、中国を「米国がこれまで直面した最大で最先端の敵」と言い表すなど、外交的タカ派・対中強硬派として知られます。
ルビオ氏は、民主党のバイデン現政権による対イスラエル支援についてもまだ不十分だとし、より強力なイスラエル支持の立場を示してきました。
またイランを「テロリスト政権」と呼び、敵対的な構えを鮮明にしています。ロシアのウクライナ侵略戦争を巡っては、戦争終結のためには「非常に難しい選択がいくつか必要になる」と述べています。
ルビオ氏の国務長官指名について、民主党進歩派のサンダース上院議員が率いる運動団体「私たちの革命」は、「トランプ氏の(選挙戦での)『戦争を止める』という誓いはすでに崩れつつある」と危険視しています。
真剣ではない
大統領補佐官(国家安全保障担当)には、対中タカ派のマイク・ウォルツ下院議員(50)が指名されました。北大西洋条約機構(NATO)の同盟国の軍事費増を求め、外交姿勢がトランプ氏と共鳴するところがあります。
司法長官に指名されたマット・ゲーツ下院議員(42)は、共和党の保守強硬派、強固なトランプ支持者で、扇動的な発言で知られます。金銭を介して未成年者と性行為をしたなどの疑惑で司法省の捜査や下院倫理委員会の調査を受けていました。
ゲーツ氏について共和党内からも「真剣な指名ではないと思う」(マカウスキ上院議員)などの声が出ています。
トランプ氏は、化石燃料の増産に向け「国家エネルギー会議」の新設を発表しました。公有地の石油採掘場や先住民の土地管理を所管する内務長官に指名したノースダコタ州知事のダグ・バーガム氏(68)が同会議トップを務めます。
バーガム氏もトランプ支持者で、石油業界の経営者らと協議しながら大統領選でトランプ陣営のエネルギー政策の策定を主導しました。
次期政権の主な顔ぶれ(敬称略)
◆大統領首席補佐官 スーザン・ワイルズ
大統領選でトランプ陣営の選対本部長
◆大統領補佐官(国家安全保障担当) マイク・ウォルツ
フロリダ州選出の下院議員。陸軍特殊部隊「グリーン・ベレー」出身、対中強硬派
◆大統領次席補佐官 スティーブン・ミラー
トランプ政権1期目の大統領上級顧問。不法移民の大量強制送還を主張
◆国防長官 ピート・ヘグセス
FOXニュースの司会者。イラクとアフガニスタンの両戦争の退役軍人
◆国務長官 マルコ・ルビオ
フロリダ州選出の上院議員。中国やイランに対する強硬派
◆司法長官 マット・ゲーツ
フロリダ州選出の下院議員。トランプ氏へ強い忠誠心示す
◆内務長官 ダグ・バーガム
ノースダコタ州知事。ソフトウエア会社の元幹部
◆厚生長官 ロバート・ケネディ・ジュニア
無所属で大統領選に出馬、撤退後にトランプ氏支持。ワクチンに懐疑的
◆国土安全保障長官 クリスティ・ノーム
サウスダコタ州知事。熱烈なトランプ支持者
◆エネルギー長官 クリス・ライト
米石油サービス会社リバティー・エナジーの創業者で、最高経営責任者兼会長
◆政府効率化省トップ イーロン・マスク
実業家。大統領選で自ら所有するX(旧ツイッター)でトランプ氏を応援
◆環境保護局長官 リー・ゼルディン
ニューヨーク州選出の元下院議員。トランプ氏の長年の友人
◆中央情報局(CIA)長官 ジョン・ラトクリフ
テキサス州選出の元下院議員。トランプ氏の弾劾裁判で同氏を擁護
◆国連大使 エリス・ステファニク
ニューヨーク州選出の下院議員で、共和党下院の幹部。トランプ氏の熱烈な支持者