クローズアップ 大阪東南部「金剛バス」全路線廃止 住民置き去り 声反映されない「協議会」進む〜すべてがNになる〜
2023年11月9日【地方総合】
大阪府東南部で「金剛バス」(路線バス)を運行する金剛自動車(白江暢孝社長、本社富田林市)は9月11日、全15路線を12月20日に事業廃止すると突然発表しました。この日初めて知らされた地域住民の間で驚きと不安が湧き起こっています。(大阪府・森尾町子)
近鉄喜志駅、富田林駅、上ノ太子駅を起点とする運行エリアは、富田林市、太子町、河南(かなん)町、千早赤阪村の4市町村など。全路線の沿線住民は約6万人で、年間約110万人、1日平均約2600人が利用しています。
通勤・通学、通院や買い物など住民の暮らしに直結する「足」として1937年から利用されてきました。バス廃止に怒る住民から「なくなると困る」「陸の孤島になる」など切実な声が出ています。
大阪府の吉村洋文知事は何の支援策も打ち出していません。
5月19日、4市町村長にバス廃止を申し入れた金剛自動車は、乗務員の離職を防ぐため、自社が公表するまで非公表とするよう情報を抑えこんでいました。
■情報を隠す
太子町に住んで12年になる美佐田和之さん(71)は、「5月に知っていた4市町村長はなぜすぐ住民に知らせ意見や要望を聞かなかったのか。選挙で選ばれた首長が4カ月も情報を隠すのは住民に対する裏切り。4カ月あればもっと議論できたはず」だと指摘します。
各議会議員に対して9月8日に初めて4市町村長がいっせいに説明したことについては「行政のチェックという議会の機能を首長が独裁的にコントロールするものであり許せない」と二元代表制の問題にも言及します。
現時点で地元自治体は広報で簡単に知らせるだけで住民説明会を開いていません。
4市町村や近畿運輸局、府、交通事業者、バス労組、学者などで構成する「地域公共交通活性化協議会」が10月平日に3回開催され、廃止後の代替交通を検討しました。委員28人のうち8人の住民・利用者は地元自治会長などから選ばれていますが公募ではありません。
「協議会」自体、決まったことを発表する場でしかなく、住民は傍聴できますが、意見・要望は言えず通勤・通学者の声が反映される場とはなっていません。
■住民運動を
美佐田さんは、今からでも住民説明会を住民が参加しやすい土日に開くよう地元自治体に求めるとともに、住民の生活を守るためには住民自身が声を上げ運動をつくる重要性も訴えています。
住民有志の会による駅前早朝宣伝では、バスから降りてきた通学中の高校生から「おっちゃんら頼むで。僕ら困るから」と声がかかる場面も見られました。別の宣伝では「横断幕を貸してほしい」と声を寄せる住民もいます。
乗客数の多い5路線は近鉄バスや南海バスが引き継ぎ、4路線は完全廃止、残りは各自治体が事業主体のコミュニティーバスなどで代替する方向が「協議会」で伝えられました。
日本共産党の西田郁子太子町議は「4市町村でバスを走らせることは赤字必至。住民負担を抑えるには府や国の補助金が必要。誰もが安心して利用できる公共交通の実現へ、住民の足を守っていきたい」と語ります。
維新府政はライドシェアがーと言ってないでこういう既存の公共交通網を強化すべきではないでしょうか。