首相繰り返す八幡製鉄判決古びた旗にしがみつき 企業献金の存続に固執〜すべてがNになる〜
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2024年12月7日【2面】
石破茂首相は3日、日本共産党の田村智子委員長の代表質問に対する答弁で、1970年の八幡製鉄事件最高裁判決を延々と読み上げ、企業・団体献金の温存を正当化しました。同判決は「会社は自然人たると同様…政治的行為をなす自由を有する」「政治資金の寄附もまさにその一環」だと簡単に容認。自民党は同判決を一貫して「錦の御旗」にしてきましたが、それは、もはや「古びた旗」と言わざるを得ないものです。
田村氏はすでに今年3月5日の参院予算委員会で、同判決後、有罪が確定した企業による贈収賄事件が10件にのぼることを踏まえるべきだと主張。企業が政治にカネを出し、口を出すことは当然だという政治のもとで政治腐敗が続いたことを批判しました。
憲法学の通説
同判決を巡っては、専門家から疑問が出ています。5月27日の衆院政治改革特別委員会の参考人質疑では、東京大学の谷口将紀教授(政治学)が、同判決が企業の政治活動の自由を認めている点は「行き過ぎであるという評価が憲法学の通説」と指摘。細川護熙政権(1993~94年)で首相補佐官を務め「政治改革」を推進した成田憲彦駿河台大学名誉教授は本紙のインタビュー(6月18日付)で、同判決は「見直しのチャンスが必要だ」と指摘しました。
企業にはいかなる意味でも参政権はなく、政治活動の自由が無制限に認められるわけではありません。経済活動に関連して「政策提言」することがあっても、それは本来、「経済活動の自由」の一環で、企業に国民個々人と同じ「政治活動の自由」があるわけではないはずです。
参政権を持たない企業が献金という形で民主政治のプロセスをゆがめ、国民の参政権を侵害することは許されません。企業の「政治活動の自由」をたやすく承認し、そこから「献金の自由」を導く八幡製鉄事件判決は大本から見直しが必要です。
さらに、現在の自民党の言い分を厳しく戒める司法界からの発言もあります。
背任か汚職か
岡原昌男元最高裁長官は93年11月2日の衆院政治改革調査特別委員会での参考人質疑で、「自民党の中で、判決を非常にルーズに読んで、企業献金差し支えないと解釈しているが、あれは違う」と指摘し、企業献金が企業のもうけにならなければ背任罪、見返りを要求するなら汚職になると指摘。「あの判決をもって企業献金はなんぼでもいいという考えはやめてもらいたい」と述べています。
さらに、企業献金は「そのものが悪とか善とかいうより、法律的に理屈は通らない」と指摘。「法人はその定款、寄付行為に定められた事業の範囲以外はできない、つまり適法性がない。企業献金が現在のような形で数百万、数千万あるいは億といった単位で入ってくるのは悪だ」と明確に述べています。
八幡製鉄判決にしがみつき企業献金の存続に固執する自民党に道理はありません。(中祖寅一)
国民あざむく悪質答弁
法文に文言を恣意的に挿入
石破茂首相は、日本共産党の田村智子委員長の代表質問(3日、衆院本会議)への答弁で、裏金事件をめぐり、政治資金規正法には無い「企業・団体献金を含む」という文言を、あたかも政治資金規正法の文言であるかのように答弁し、企業・団体献金を正当化しました。国民をあざむく悪質な答弁です。
田村委員長は、企業・団体献金の禁止こそ裏金事件の「抜本的再発防止策」だと追及したのに対し、石破首相は政治資金規正法を引用し「同法2条には、企業・団体献金を含む政治資金を民主主義の健全な発展を希求して拠出される国民の浄財であるとした」と答弁しました。
ところが、政治資金規正法の基本理念を定めた第2条は「政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし」となっています。条文には「企業・団体献金を含む」という文言はありません。
石破首相は答弁で、あたかも「企業・団体献金」が「国民の浄財」に含まれると法律に明記されているかのような印象を与えようとしました。野党の多数が一致して求める企業・団体献金の禁止を何としても阻止したいためのごまかしの答弁です。
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