2025とくほう・特報 暮らせる年金へ京都市 本城元子さん〜すべてがNになる〜


2025年1月23日【3面】

76歳、働けど… 支給月7万円 貯金崩す日々

 5年に1度の年金改定議論をへて、石破政権が今国会に提出する年金改定法案は、今月末に開会する通常国会の焦点の一つです。3600万人の高齢者の生活に直結します。“軍拡でなく、安心して暮らせる年金を”―。高齢者の生活実態をシリーズで追います。

 京都市北区・鴨川沿いの閑静な住宅街に、親が30年前に建てた一戸建て住宅で暮らす本城元子さん。低い年金のために76歳になったいまも買い物代行などの仕事をしています。しかし、それでも足らず預貯金を切り崩す生活に将来不安を訴えます。

 2カ月に1回振り込まれる本城さんの年金は、額面15万9730円。これに京都市の介護保険料6200円と後期高齢者医療保険料3600円が天引きされて、控除後振り込み額は、14万9930円です。1カ月の支給額は7万4965円という低さです。

 貯金通帳からは、ガス代、上下水道代、電気代、スマホ代などが毎月引き落とされ、「貯金はみるみる減っていく」といいます。

労災にもならず

 本城さんの右脚には、大きなサポーターが目立ちます。原因のひとつは、生活費の足しにとシルバー人材センターから紹介された個人宅を月2回訪問して掃除する作業です。京都の最低賃金水準の1060円×3時間。交通費は支給されません。

 昨年11月、腰から足先まで痛みが走りました。痛みに耐えかねて仕事をやめました。

 「仕事で痛めたのに、“雇用ではない”といって労災保険も適用されないシルバー人材センターの枠組みは疑問です。通勤に使っていた敬老パスも年間9000円かかり、少ない年金からためて買っているのに」

 本城さんは、「こんな物価高では節約の計画が立てられない。今後、働けず、お金が払えなくて必要な介護が受けられるのかと思うと、心配です」。

 生活保護を受けられないか京都市に問い合わせました。1カ月分の年金額は生活扶助を3000円程度上回り、「生活保護はかろうじて受給できない年金額」との回答。「泣く思いでした。預貯金を使い果たしたときには最後のセーフティーネットが受けられる願いも打ち砕かれた」と訴えます。

「通報制度」に光

 司法の救済にも希望を持った本城さん。年金裁判を2、3回傍聴してきました。地裁判決では裁判官も女性の低年金に言及せざるをえませんでした。しかし、最高裁は昨年6月、京都事案について、年金を下げても違法ではないとの不当判決を出しました。

 本城さんは、その時、女性差別撤廃条約の選択議定書にある個人通報制度に“光”を見いだしたといいます。「日本も批准させて、私たちも国連の女性差別撤廃委員会に低年金を訴えたい。年金制度を国際基準に引き上げることが大事です」

 本城さんは、女性差別撤廃条約実現アクションの団体に加わり、府議会や市議会での意見書採択運動として全会派への申し入れ行動に参加しました。

 「物価が上がれば年金額も増えると思ってきた」と話す本城さん。ところが自身の年金支給直前の2004年、自公政権は「100年安心」と銘打ってマクロ経済スライドを導入しました。物価が上がっても年金は低く抑える仕組みです。「国の制度改正という名の改悪に翻弄(ほんろう)されてきた」と話します。

 「年金は老後の命綱です。現役時代の賃金が年金額にはねかえってきます。若い現役労働者に年金問題に関心をもってほしい」と訴える本城さん。「お金の心配をしないでも、安心して暮らせる年金制度にするために共に運動をすすめていけたら、うれしい」と結びました。

 (阿部活士)

補聴器助成運動も頑張る

全日本年金者組合京都府本部 粟倉恵子副委員長・女性部長の話

 女性部として、2022年の女性の暮らし実態アンケートを実施しました。月収10万円以下が、回答した1550人の46%にのぼりました。2018年調査の36%より増えており、年金削減が具体的に見えました。

 「負担感の大きいもの」の1位は国保料と介護保険料で、食費、税金、光熱費と続きました。これらは、生きていくために削れないものです。国や自治体にひどい目にあわされていると実感しました。年金者組合が広く高齢者の声と力を集められる組合であり、国民年金だけで生活する人たちの要求と願いに応えたい。

 また、いま、高齢者にとって加齢性難聴が大きな問題になっています。1個数十万円する補聴器は、自費負担です。東京都をはじめ全国の自治体で独自助成が広がっていますが、京都府・京都市はゼロ円です。公的補助を求める運動もがんばります。

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