社会保障考える 住宅政策岐阜協立大学教授(社会福祉学) 高木博史さん〜すべてがNになる〜
2024年8月25日【2面】
家賃補助 双方に利点
自公政権は社会保障を抑制するため、毎年、数値目標をきめて「自然増」を削減する政治をすすめてきました。国民の命、暮らしに直結する社会保障はいまどうなっているのか、多岐にわたるテーマで現場や識者の声をまじえ考えます。(随時掲載)
“家賃が高く払えない”―。住宅保障は社会保障施策として重要な役割を持っていますが、日本は住宅確保を「自己責任」としてきました。岐阜協立大学の高木博史教授(社会福祉学)に住宅政策の課題を聞きました。
―日本は住宅確保を自己責任としてきました。
住居は生活の基盤です。仕事するにも履歴書に「住所」を書く必要があります。また、生活保護申請の際には、生活保護法に必須条件としては示されていないにもかかわらず、生活の実態を踏まえない誤った指導のもと「住所」を書くことを強制される場合もあります。
自民党政権、とりわけ2012年発足の第2次安倍政権以降、社会保障のあらゆる分野において、「自己責任」が押し付けられてきました。住宅確保も生活困窮者自立支援法(13年4月施行)による住居確保給付金などの新設もありましたが、基本的には、そうした「自己責任政策」の一つに位置付けられてきたと言えます。
「自己責任政策」を変えるには政治を変える必要があります。ソーシャルワーカー(社会福祉士)を育てる立場としては、そこに関わる人たちが必要に応じて署名活動や情報発信などソーシャルアクション(行政や世論に働きかける活動)を行う重要性も訴えていきたいです。
「保証人」の壁
―日本の居住政策の課題は?
公営住宅入居で、問題になるのが連帯保証人です。生活困窮者は人間的なつながりが希薄な人も少なくないため入居に必要な連帯保証人が立てられません。少なくない自治体が連帯保証人を求めており、入居時の大きなハードルとなっています。
ただ、岐阜県は23年12月募集から連帯保証人が不要になりました。岐阜県内の市町村でも、連帯保証人が不要となる傾向にあります。
選べる住まい
―政策として求められているものは?
生活困窮に陥ると、はじめに滞納されやすいのが家賃です。生活費の中で、一番比率が高いのが住居費だからです。
調査した際、岐阜県内の公営住宅の家賃額(1カ月分)は、1町を除き、3万円未満でした。生活保護の住宅扶助が岐阜市や大垣市などでは3万2000円ほどのため、公営住宅の家賃でやっと住める水準です。
一方で、公営住宅は立地的に駅から遠いところに建てられているケースもあります。老朽化も進んでおり、募集を停止している部屋(=政策空き家)やエレベーターが備わっていないなど、バリアフリー化されていない住宅もあります。このような場合、高齢者や障害者が入居したくても入居できません。また、建て替え計画もほとんどないか未定となっています。
居住する際のニーズを考えた際、国や自治体がとるべき政策は、個別の生活実態に応じて、ある程度柔軟に対応できる家賃補助制度をつくることです。家賃補助なら、市民は自分に合った家を選べますし、自治体にとっても公営住宅の維持費がかからない分、リスクが小さいと言えます。