トヨタの不正(下)新車短期開発の圧力〜すべてがNになる〜
2024年6月19日【経済】
トヨタの完全子会社ダイハツは2023年4月28日に、内部告発で発覚した認証不正を公表しました。その後、第三者委員会の調査で新たに174件もの不正が判明。同年12月20日、国内外で生産する全車種の出荷を停止するに至りました。
第三者委員会の調査報告書(同日)には、トヨタの経営姿勢がダイハツの労働現場に大きな圧力と変化を加え、従業員を不正行為に追い込んだ経過が書かれています。
同報告書によると、不正多発の「真因」は「(不正の)未然防止や早期発見のための対策を何ら講ずることなく(新車の)短期開発を推進した」ことでした。短期開発の始まりは、05年にトヨタ出身の会長が就任し、「軽自動車で収益を上げられるビジネスモデルを確立するための事業構造改革に注力した」ことです。「開発の工数と予算を削減する観点から」短期開発が推し進められました。16年にトヨタの完全子会社となり、トヨタの海外事業に参加した結果、短期開発に拍車がかかりました。
試験の人員削減
人員が不足しても「開発部門の自助努力に頼って」短期開発が進められました。認証試験に関わる人員はコストカットのために削減されました。認証申請書類をつくる法規認証室の人員は最多だった09年と比べ43%(15年時点)に減らされ、衝突試験を担当する安全性能担当部署の人員は最多だった10年と比べ40%(15年時点)に減らされました。
不正行為の件数は、短期開発の弊害が強まった14年以降に増加しました。
完成車試験の省略も短期開発を進める中で始まりました。審査官の立ち会いが不要な試験項目で、開発段階の試験データを流用したのです。同報告書は「開発段階の試験データを可能な限り認証申請用にも利用する取り組みが行われて開発評価の試験と認証試験の区別が厳格ではなくなったことが本件問題の大きな原因」だと断定しています。流用が可能だったのは開発部門と試験部門が混然一体となっていたためです。
例えば、側面衝突時のエアバッグの作動を確認する試験では、本来の電子制御装置ではなくタイマーでエアバッグを作動させていました。開発試験と認証試験を兼ねた実験当日までに電子制御装置の設定が間に合わず、開発日程を優先させるために犯した不正でした。開発完了後の完成車で認証試験を行う原則を守っていれば、起こりえない事態です。
経営姿勢が根源
同報告書は、再発防止策として短期開発の見直しや開発試験データの流用禁止を提案しています。また、不正の多発を受けてダイハツが認証機能を開発部門から独立させたと記しています。労働運動総合研究所の佐々木昭三理事は話します。
「トヨタ本体も開発試験データを無断で認証試験に流用し、エアバッグの試験にタイマーを使う不正を行っていたのですから、グループ企業の不正の根源はトヨタ本体の経営姿勢にあるとみるべきです。企業利益を優先した結果、安全確保のために最優先で守るべき国際基準の認証ルールに違反したということです。安全管理体制を改め、十分な人員や開発・検査期間を確保するべきです。不正を見抜けなかった国も検査のあり方を見直し、体制を強化する必要があります」
(おわり)
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