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オッペンハイマーの遺産:原爆とは何だったのか


C・ノーラン監督の「オッペンハイマー」は、真夏公開の大作としては異彩を放つ存在だ/COURTESY OF UNIVERSAL PICTURES

広島と原爆の被害


 広島は、第二次世界大戦中の1945年8月6日に原爆攻撃を受けました。この攻撃により、広島市街地は壊滅し、多くの人々が犠牲となりました。被害の大きさは計り知れず、市内の建造物やインフラは完全に破壊されました。さらに、爆心地周辺では爆風や熱線による火災、放射線による被曝などにより、数多くの人々が即座に死亡しました。被爆者は長期にわたって健康被害に悩まされ、多くの人々が後遺症や被爆症に苦しんでいます。広島原爆の被害は計り知れず、戦争の悲惨さを象徴する出来事と言えます。広島の被害は、あらゆる人々に対して戦争の無残さと平和の尊さを認識させる役割を果たしています。  

はだしのゲンと反戦のメッセージ  


 はだしのゲンは、中島京子によって描かれた漫画作品です。この作品は、被爆者である中島自身の経験をもとに、原爆の被害や戦争の悲惨さを描いています。はだしのゲンは、そのストーリーを通じて反戦のメッセージを伝えています。戦争の恐ろしさや被爆の悲惨さを通して、人々に平和への思いを伝えようとしています。また、主人公のゲンは、困難な状況でも希望を持ち続け、生きる力を示しています。このメッセージは、戦争がもたらす悲劇を知るための教材としても用いられており、教育現場でも積極的に活用されています。はだしのゲンは、戦争の犠牲者や被爆者の声を次世代に伝える重要な作品として評価されています。  

人間のふりをした悪魔ジョン・フォン・ノイマンと計算機科学  


 ジョン・フォン・ノイマンは、20世紀の重要な数学者・物理学者・計算機科学者です。彼はマンハッタン計画において重要な役割を果たし、初期のコンピュータアーキテクチャにおける基本原理を提案しました。彼はコンピュータの構造についての基本概念を確立し、ノイマンアーキテクチャとして知られるようになりました。彼の貢献によって、計算機科学は大きく発展し、現代の情報技術の基盤となりました。  原爆の威力を最高に高めるために空中で爆発させるというアイディアと計算もノイマンのものでした。また、彼の開発したノイマン型アーキテクチャーは核爆弾を上回る核融合爆弾の開発時の数々の計算に貢献し,世界を複数回壊滅させることが可能な数の核融合爆弾の保有を米国に可能にさせました。

ノイマンの助手,スタニスワフ・ウラム

 核融合に関わる膨大なエネルギーは当初科学者の間で発生させることは不可能だと考えられていたので水爆も実現不可能だと考えられていました。しかし,そのエネルギーを核分裂によって獲得するというアイディアを考えたのは長年ノイマンの助手を務めたスタニスワフ・ウラムでした。現在核融合がこの手法によって起動しているのかはわかりませんが,核融合発電がこの形式で起動されているのであるならば核融合炉を動かすたびに大気は汚染され、水質も放射線にまみれるので注意が必要です。

オッペンハイマーと核兵器の開発  


 オッペンハイマーは、マンハッタン計画において重要な役割を果たしました。彼は理論物理学者として知られ、核兵器の開発においても中心的な存在でした。彼は理論的な視点から核兵器の可能性や利用について深く考え、その思想はマンハッタン計画に大きな影響を与えました。彼は核兵器の利用について懸念を抱きながらも、同時に科学の進歩や安全保障の重要性も理解していました。オッペンハイマーの思想は、核兵器開発の限界や非人道的な一面についての議論を促し、後の核兵器の制限や軍縮の議論の礎となりました。彼の貢献は、科学技術と人道を考える上で重要であり、彼の思考は今なお私たちに多くの示唆を与えています。  オッペンハイマーは核爆弾の開発では重要なポストにいましたが,核融合爆弾である水素爆弾開発に対しては最終的には反対の立場をとりました。ジョン・フォン・ノイマンが一貫して水爆の開発を進めるべきだ、との立場を貫いたのとは対称的です。また,オッペンハイマーがヒンドゥー教の教義から引用し水爆を批判した「我は死神なり,世界の破壊者なり」という言葉は核爆弾開発に携わった多くの研究者から主語が「我々」ではなく,オッペンハイマーが主語を「我」にしたことで非常に評判が悪かったとのことです。後世にオッペンハイマーの業績が1人の手柄のように伝えられているのもここに問題があるように感じます。

原爆の意義と継承  


 広島原爆の被害については、広島市は被爆から75年を迎えます。広島市はこの悲劇的な出来事を風化させないために、学校教育などを通じて広島原爆の被害の実態を後世に伝える努力をしています。
原爆による被害は甚大で、爆心地周辺では瞬時に建造物や人々が消失しました。周辺地域では放射線や火災による二次被害も発生し、多くの人々が犠牲となりました。被曝による後遺症や被災者の心の傷も深く、現在でも被害者やその家族が苦しんでいます。
 広島原爆の影響は日本だけでなく国際的なものであり、世界に対して核兵器の非人道性を訴える強力なメッセージとなりました。特に漫画「はだしのゲン」は、広島原爆の被害を体験した作者が描いた作品であり、反戦の強いメッセージを世界に発信しました。
 ジョン・フォン・ノイマンやオッペンハイマーが関わったマンハッタン計画は、科学技術の進歩と共に核兵器開発の道を拓きましたが、その一方で人類の存亡を賭けた戦争を抑止する重要な役割も果たしました。彼らの貢献は計り知れず、近代の計算機科学の発展にも大いに寄与しました。
 原爆は人類にとって未曾有の脅威であり、その開発と使用は破滅的な結果をもたらしました。しかし、その意義は核兵器の非人道性を訴えることにあります。オッペンハイマーの言葉「原爆という兵器は、もはや人間の知恵によって制御できるものではない」という言葉は、核兵器の使用を警告する重要なメッセージとして受け継がれています。(原爆の威力は実験段階でTNT2万トンに相当する)彼の遺産として、広島の原爆(ウラニウム型原子爆弾)被害を忘れず、核兵器のない世界を目指すべきことを継承しましょう。  

建前と本音

 「はだしのゲン」が教育現場でも活用されているとこともあるのでしょうが広島県ははだしのゲンを平和学習教材に引用掲載から削除しています。この広島市の行動には疑問符がつきますが、原爆の戦争利用を忘れないためにも、クリスファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」は日本でも公開されるべきでしょう。当時の日本の陸軍の合言葉は「一人十殺」「一億総玉砕」でした。日本人の心情からは目を背けたくなる作品ではありますが、旧日本軍がなぜ、原爆を二発も落とされるまで降伏しなかったのかの責任の方が大きいように感じます。映画的にも原爆投下日の8月6日に公開ということが可能なら話題性もあり観客動員も見込めると思います。

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