政府の「総合経済対策」原案大企業に10兆円超のばらまき〜すべてがNになる〜

2024年11月15日【経済】

 石破茂内閣が月内の閣議決定を目指す総合経済対策の原案が14日までにわかりました。物価高対策として低所得者世帯への給付金などを盛り込む方向です。

 経済対策は(1)すべての世代の現在・将来の所得を増やす(2)物価高対策(3)国民の安心・安全の確保―を柱とします。その考え方について原案は「アベノミクスの成果の上に立ち、岸田内閣の『新しい資本主義』をはじめとする経済財政政策の取り組みを引き継ぎ、さらに加速・発展させていく」と述べます。さらに日本銀行に対して「2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」と表明。大企業・富裕層を優遇する一方、貧困と格差を広げたアベノミクスを継続する姿勢を鮮明にしました。

 低所得者向け給付金として住民税非課税世帯1世帯当たり3万円、子育て世帯には子ども1人あたり2万円を給付する方向で検討しています。

 また、最低賃金を「2020年代に全国平均1500円」にする目標を掲げます。そのために中小企業へは「賃上げ促進税制について、制度詳細の周知広報を徹底する」としました。しかし目標達成の期日が遠すぎるうえに、中小企業支援が賃上げ促進税制では赤字企業には効果がありません。

 原案は全世代の所得増を掲げ「誰一人取り残されない社会」を実現するとうたいます。しかし、住民税を課されている年金生活者の世帯には賃上げの恩恵も給付金の恩恵もなく、マクロ経済スライドなどによる年金の実質減額ばかりが押し付けられます。

 医療・介護分野では「病床削減を早急に実施する医療機関」を支援すると明記。病床と医療機関の削減に拍車をかける方向です。

 一方で大企業には大盤振る舞いです。人工知能(AI)や半導体を製造する大企業へ、10兆円以上の公的支援を行う枠組みを制定することを明記しました。関連法案を次期通常国会に提出するとしています。

 経済対策にかこつけて原発推進や軍拡を盛り込もうとしています。原案は原発について「最大限の活用を目指す」として、「再稼働、次世代革新炉の開発・建設に向けた取り組み」などを推進すると明記しました。

 軍事力については「抜本的に強化する」としています。また「能動的サイバー防御の実施に向けた検討」を加速するとしました。能動的サイバー防御は平時からインターネットを監視し、サイバー攻撃を受ける前に相手側サーバーへの侵入・無力化などによって対抗する措置のことです。周辺国との対立を深める上、市民監視の強化やプライバシーの侵害につながる恐れもあります。

 経済対策の根拠となる24年度補正予算案は13兆円を上回る見通しです。石破政権は22日の閣議決定をめざします。しかし、衆院で少数与党となっているため、国民民主党などの協力を得る必要があり、日程は見通せません。(清水渡)

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