徹底追及 統一協会 癒着解明・被害救済自民9候補 争点化せず 総裁選の政策で〜すべてがNになる〜
2024年9月17日【1面】
接点発覚の候補者・推薦人も
9人が立候補した自民党総裁選は、統一協会(世界平和統一家庭連合)と政界の癒着や被害者救済への姿勢が注目されています。ところが、統一協会の問題を政策として示した候補者は皆無で、争点化を避けています。候補者や推薦人の顔ぶれを見ると、協会や関連団体との接点が発覚した議員もいます。協会側と厳しく向き合えるのか、各候補に問われています。(統一協会取材班)
本紙は総裁選の候補者が出そろった告示前日、9候補の事務所にアンケート用紙を送りました。「これまでの統一協会や関連団体との接点」と「統一協会問題についての主張や政策」を問う内容です。
各候補の多忙を考慮して「あり」「なし」の2択で答える欄も設けていました。しかし、期限を過ぎても誰ひとりとして返信はありませんでした。
2022年7月に安倍晋三元首相が銃撃された事件後、統一協会や関連団体と自民党議員の癒着が相次いで浮上。同年に自民党が実施した自主点検では、衆参の同党所属議員379人(当時)のうち179人に協会側との接点があったとしています。
その中には、総裁選の候補者3人、候補者を推薦した58人の名前がありました。(表参照)
候補者で名前が出ていたのは、石破茂元幹事長、加藤勝信元官房長官、小林鷹之前経済安保担当相です。
石破氏は、地方創生担当相だった15年6月に協会系政治団体「世界戦略総合研究所」の定例会で講演。17年に協会系の日刊紙「世界日報」の元社長から10万円の献金を受けたと明らかにしています。
加藤氏は、協会の関連団体「世界平和女性連合」に「会費」名目で計3万円を支出。18年には、信者が集まるイベントに祝電を送るなどしていました。
小林氏は、同年に協会の関連団体「千葉県平和大使協議会」の大会に祝電を送りました。21年7月には、信者らの自転車イベント「ピースロード」の開会式であいさつしました。
自民党の自主点検で名前が出なかった高市早苗経済安保担当相も「世界日報」に対談・インタビュー記事が掲載。林芳正官房長官は、21年9月に山口県内で協会関係者と面会したことを明らかにしました。
(1面のつづき)
「接点」認めた58人 候補者の推薦人に
自民総裁選 実態伝えぬ報道
自民党総裁選は、同党に所属する国会議員から20人の推薦を集めることが立候補の条件です。同じ議員が複数人を推薦することができないため、各陣営で推薦人の“争奪戦”が繰り広げられました。
その様子をNHKや民放は連日、ニュース番組で時間をさいて報じました。推薦人の中には、統一協会(世界平和統一家庭連合)や関連団体との接点を認めた議員も少なくありません。しかし、そうした実態は詳しく報じられていません。
本紙の調べでは、自民党の自主点検で統一協会や関連団体との接点を認めた58人が総裁選で候補者の推薦人になっていました。自身も統一協会の関連団体との接点があった小林鷹之前経済安保担当相は、推薦人の半数にあたる10人が接点を認めています。
ビデオメッセージ
高市早苗経済安保担当相の推薦人になった土井亨・元国土交通副大臣は、統一協会の「希望前進礼拝」(2021年4月)にビデオメッセージを贈りました。土井氏は、協会創設者である文鮮明(故人)の妻、韓鶴子・現総裁を「真(まこと)のお母様」と呼んで称賛。さらに、信者に向けて「ともに活動する中において、協会のみなさんや青年たちが真のご父母様(教祖夫妻)のために生きる教えを忠実に守りながら実践されている姿に感銘を受けております」と述べました。
小林氏を推薦した斎藤洋明衆院議員と上川陽子外相の推薦人になった深澤陽一衆院議員は、いずれも統一協会の関連団体が提示した推薦確認書に署名したと認めました。
事実上の政策協定
推薦確認書は(1)憲法を改正し、安全保障体制を強化(2)家庭教育支援法・青少年健全育成基本法を制定(3)LGBT問題、同性婚合法化の慎重な扱い(4)「日韓トンネル」実現を推進(5)国内外の共産主義勢力の攻勢阻止―などの内容で、それらに賛同する議員や候補者と交わす事実上の「政策協定」でした。
協会側から「選挙でボランティアの支援を受けた」と認めた推薦人は、斎藤、深澤の両氏を含めて11人。「統一協会が主催した会合に出席した」と認めた推薦人も3人います。
信者にも高市氏リーフ届く
妻が統一協会の信者で、高額献金の被害を本紙に語った上村雅博さん(70代)=仮名=は、総裁選の告示直前に、候補者となった高市早苗経済安保担当相からリーフレットが郵送で届いたと明かします。
上村さんの妻は信者になるまで、政治活動に全く携わっていませんでした。
高市氏は、自身の政策をまとめたリーフを全国の自民党員らに送付しました。リーフが届いた上村さんの妻は、自民党員や党友などとして登録されているとみられます。
「妻は選挙のたびに名簿で電話をかけたり、パンフレットを配ったりしている」と話す上村さん。協会側との接点を認めた議員が立候補し、各候補の推薦人に58人が名を連ねている実態からも「新総裁が統一協会との関係を断ち、被害者救済に取り組めるのか、疑問を感じざるを得ない」と述べています。
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