戦争犯罪と人道に対する罪ネタニヤフ、ガラント両氏の国際刑事裁逮捕状 発表から〜すべてがNになる〜


2024年11月25日【国際】
 国際刑事裁判所(ICC)の予審裁判部は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対して逮捕状を出しました。ICCが発表したプレスリリースから、戦争犯罪と人道に対する罪に関わる具体的な容疑について述べた部分(要旨)を紹介します。(中見出しは編集部)


犠牲者と家族の利益のため公開

 予審裁判部は、少なくとも2023年10月8日から検察官が逮捕状を請求した2024年5月20日までに犯された人道に対する罪と戦争犯罪について、ネタニヤフ氏とガラント氏に逮捕状を発出した。
 逮捕状は、証人を保護し、捜査活動を守るために「秘密」とされる。しかし予審裁判部は、以下の情報を公開することを決めた。それは、逮捕状で言及されたものと類似の行動が今も継続しているようにみえるからである。さらに予審裁判部は、逮捕状の存在を知らしめることが、犠牲者やその家族の利益になると判断した。
 まず予審裁判部は、ネタニヤフ氏、ガラント氏が行ったと推定される行動は、ICCの管轄権の対象だと判断する。すでに予審裁判部は、ICCの管轄権が、ガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムにも及ぶと決定していた。

国際武力紛争の法律に基づいて

 予審裁判部は、当該の時期に、イスラエルとパレスチナの間の紛争に、国際武力紛争に関する国際人道法が適用されると信じる合理的な根拠を見いだす。これは、両者が1949年のジュネーブ条約の締約国だからであり、イスラエルがパレスチナの一部を占領しているからである。予審裁判部はまた、イスラエルとハマスの間の戦闘に対して、非国際的武力紛争に関する法律が適用されると見なす。予審裁判部は、ネタニヤフ氏とガラント氏が行ったとされる行為は、パレスチナの民間人、より具体的にはガザの民間人に対するイスラエル政府機関や軍の活動に関係していると判断した。従って、それは国際的な武力紛争の両当事者の関係に関わるとともに、占領国と被占領地の住民の間の関係にも関わる。これらの理由から、戦争犯罪に関して予審裁判部は、国際武力紛争の法律に基づいて逮捕状を発出することが適切だと判断した。予審裁判部はまた、推定される人道に対する罪は、ガザの民間人に対する広範かつ組織的な攻撃の一部だと判断した。

飢餓を戦争手段=戦争犯罪

 予審裁判部は、両人が、少なくとも2023年10月8日から2024年5月20日にかけて、ガザの民間人から生存に不可欠な物資―食料、水、医薬品、医療物資、および燃料や電気を含む―を意図的かつ故意に奪ったと信じる合理的な根拠があると考えた。この所見は、ネタニヤフ氏とガラント氏が国際人道法に違反して人道援助を妨害するうえで果たした役割や、あらゆる手段を通じて援助を促進しなかった事実に基づいている。予審裁判部は、両人の行動が、ガザで困窮する住民に食料その他の必需品を届ける人道団体の能力の崩壊につながったと考えた。すでに述べた制限や、電力の切断、燃料供給の削減もまた、ガザでの水の入手可能性や病院が医療を提供する能力に重大な影響を与えた。
 予審裁判部はまた、ガザへの人道援助を許可し増大させる決定はしばしば条件付きだったことに留意した。それらの決定は、国際人道法上のイスラエルの義務を果たすためや、ガザの民間人に必要な物資を十分に供給することを保障するために行われたわけではなかった。実際には、それは国際社会の圧力や米国からの要請に応じたものだった。いずれにせよ、人道支援の増大は、住民による必需品入手を改善するには不十分だった。
 加えて予審裁判部は、人道支援の搬入に対して課された制限について、明確な軍事的な必要や国際人道法に基づく正当な理由がないと信じる合理的な根拠を見いだした。国連安保理、国連事務総長、各国、政府系や市民社会の組織が、ガザの人道状況に関して発した警告や訴えにもかかわらず、最低限の人道援助しか許可されなかった。この点で予審裁判部は、はく奪が長期間にわたったこと、および必需品や人道援助の停止と戦争目的とを結びつけたネタニヤフ氏の声明を考慮した。
 従って予審裁判部は、ネタニヤフ氏とガラント氏が、戦争の手段として飢餓を用いた戦争犯罪に刑事責任を負うと信じる合理的な根拠を見いだした。

「殺人」=人道に対する罪

 予審裁判部は、食料、水、電気、燃料、特定の医療物資の欠如がつくり出した生活条件は、ガザの民間人の一部の破壊をもたらすように事前に計画されたもので、それが栄養不良や脱水症状によって子どもを含む民間人の死をもたらしたと信じる合理的な根拠があると考えた。検察が提示した2024年5月20日までの物証に基づいて、予審裁判部は、絶滅させる行為という人道に対する罪のすべての要素が満たされたと判断することはできなかった。ただ、これらの犠牲者に関して殺人という人道に対する罪が犯されたと信じる合理的な根拠があると考えた。

極度の苦痛=人道に対する罪

 加えて、ガザに医療物資や医薬品、特に麻酔薬や麻酔器が入らないように意図的に制限および妨害することで、両人は、治療が必要な人々に対し非人道的な行為によって重い苦痛を与えたことにも責任がある。医師は、子どもを含む負傷者の手術や四肢切断を麻酔なしに行うことを強いられ、患者を鎮静させるために不十分で安全でない手段を用いることを強いられ、これらの人々に極度の苦痛と苦しみをもたらした。これは、その他の非人道的行為という人道に対する罪に相当する。

「迫害」=人道に対する罪

 予審裁判部はまた、上記の行為がガザの民間人のかなりの部分から、生命と健康への権利を含む基本的人権をはく奪したこと、住民が政治的および民族的理由で標的にされたことを信じる合理的な根拠を見いだした。従って、迫害という人道に対する罪が犯されたと考える。

民間人攻撃指示=戦争犯罪

 最後に、予審裁判部は、ネタニヤフ氏とガラント氏が、文民の上司として、ガザの民間人に対して攻撃を意図的に指示するという戦争犯罪に対して刑事責任を負うと信じる合理的な根拠があると評価した。ネタニヤフ氏とガラント氏は、犯罪の遂行を予防し、やめさせる、あるいは問題を管轄する当局の処理に任せることを保障するうえで、行使可能な手段を持っていたにもかかわらず、そうしなかったと信じる合理的な根拠が存在する。


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