戦争する国づくり 大分の現場(下)“実戦さながら”日米訓練〜すべてがNになる〜



2024年9月17日【2面】

米兵の外出に住民不安


 大分県の玖珠(くす)町、九重町、由布市、宇佐市にまたがる陸上自衛隊日出生台(ひじゅうだい)演習場。総面積4900ヘクタールを誇る西日本最大規模の演習場です。ここで、7月28日から11日間にわたり、陸自と米海兵隊の実動訓練「レゾリュート・ドラゴン」が行われました。
 報道公開された同演習場扇山射場(玖珠町)での実弾射撃訓練には、日米合わせて約200人が参加。中距離多目的誘導弾やりゅう弾砲、迫撃砲、手持ち対戦車ミサイルなどの射撃訓練が“実戦さながら”に行われました。射撃音や爆発音が途切れることなく響き渡り、着弾の白煙が次々に上がりました。

オスプレイ飛行

 長年にわたり訓練の監視活動を続けている「ローカルネット大分・日出生台」の浦田龍次さんは「今回は日米のオスプレイが編隊飛行を行うなど、いままで以上に実戦的な訓練が行われた」と指摘します。
 重大なのは訓練が開始される前から米軍のオスプレイの飛行が確認されたことです。7月24日には夜9時以降にオスプレイが湯布院盆地上空に飛来し、ごう音を響かせながら1時間にわたり離着陸訓練を繰り返しました。
 浦田さんによると、九州防衛局は事前の住民説明会で「オスプレイなどの飛行は緊急の場合を除き午後9時まで」と説明しており、米軍はこれを平然と踏みにじりました。
 また、住民の大きな不安となっているのが共同訓練中の米兵の外出です。
 これまで訓練後の米兵の外出は演習場からバスを使って集団で直接目的地まで移動していたため、演習場周辺での外出は見られませんでした。ところが、近年の演習では徒歩やタクシーで湯布院の町に出る大勢の米兵の姿が確認されています。
 今回も7月24日の午前中に約10人の米兵が観光、散策に出ている様子が目撃されました。移転訓練が始まった発端は1995年に沖縄県で起きた米兵による少女暴行事件。住民の中には「沖縄のような事件・事故が起きてもおかしくない」という不安が広がっています。
 日米両政府は96年、沖縄県の「負担軽減」を名目にSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意を結び、実弾砲撃演習を本土5カ所(北海道矢臼別、宮城県王城寺原、山梨県北富士、静岡県東富士、大分県日出生台)に移転することを決定。その後、日出生台演習場では99年から、住民の反対を押し切り米海兵隊移転訓練が開始されました。
 同年の訓練は8日間で、使用弾数は約450発、参加人数は約190人の中隊規模でしたが、2022年の訓練は10日間、約1517発、約320人の大隊規模に膨らんでいます。「沖縄と同質・同量」との約束は守られず、訓練は年々拡大・強化されています。

全く違うレベル

 急速に進む日米の軍事一体化。浦田さんは言います。「これまでと全く違うレベルの『変化』―軍事力強化が起きようとしていることを政府は言わないし、多くの住民もまだ気づいていない。個々人が自覚的に立ち上がる運動を広げ、食い止めていきたい」
 (おわり)

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