コメ なぜ高騰価格安定に責任持たぬ農政〜すべてがNになる〜
2024年8月20日【国民運動】
コメの価格の上昇が続いています。店頭では5キロで1000円以上値上がりする状況も発生しており、家計を圧迫しています。安値が続いていた米に今、何が起きているのか。また、なぜそうなっているのか考えます。(日本共産党国会議員団 川辺隆史)
「仕入れの金額が激しく上がっている。昨年60キロ1万3000円程度だった低価格帯のコシヒカリが、2万3000円になった」
東京都心で飲食店を中心にコメを販売する米穀店の店主Kさんは、あまりの高騰ぶりに困惑を隠せません。
「得意先は他の食材の仕入れも値上がりしていて、コメまで値上げすると致命傷になる。販売価格に全て転嫁できずにウチが負担しているのが実情だ」
Kさんの仕入れは、中・小規模の卸業者間での売買をいう「スポット取引」。2023年末ごろからこの取引価格が上昇をはじめ、いまや天井知らずの急騰を見せています。米穀店でつくる日本米穀商連合会(日米連)が5月に行ったアンケートでは、「仕入れに苦労している」との回答が85%に上りました。
農林水産省は7月30日、6月末時点のコメの民間在庫量が前年同月より41万トン少ない156万トンと、1999年以降で最も少なかったと発表しました。コメ業界が6月末の適正在庫量だとする180万~200万トンを大きく下回る数字に、衝撃が走っています。
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6月末までの1年間のコメ需要の実績は、23年産米の生産量661万トンを上回る702万トンに上りました。これまで縮み続けてきた需要量が大きく伸び、需給が引き締まっている原因は、いくつか指摘されています。
第一に、小麦の価格上昇に伴うコメの需要増です。ウクライナ侵略によって輸入小麦の価格は過去最高となりました。現在、国際価格が落ち着きを見せていますが、歴史的な円安を背景に高止まりを続けています。
このほか農水省はインバウンドの大幅増を挙げますが、訪日外国人数×平均滞在日数×1日2食で試算すると需要量はおよそ5万トン程度です。
また昨年の猛暑による精米時の歩留まりの低下を原因とする見方も示されていますが、どこまでの影響があったかは定かではありません。
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農水省は、来年7月までの需要見通しを673万トンと見積もり、「需給はひっ迫していない」としますが、なぜ702万トンから29万トンも減少するのでしょうか。農民連ふるさとネットワークの湯川喜朗事務局長は「現在の品不足の状況からすると信じがたい。コメの減産を進めたい政府が数字合わせをしただけのように見える」と指摘します。
また、こうした高騰が、これから収穫となる24年産米にどのように影響するのか。
7月には九州南部などの早場米の出荷が始まりましたが、JAが生産者の出荷の際に支払う仮渡し金(概算金)には格差が生まれています。宮崎、鹿児島では23年産米を6000~7000円上回る60キロ2万円前後が支払われていますが、千葉、福井、高知など他の地域では1万5000円前後と、生産費を賄う水準に達していません。
低米価に苦しんできた農家にとって、生産者価格上昇の兆しは希望ですが、小売価格の高騰は国民生活を直撃します。
安倍政権下の18年、政府はコメの需給を調整する減反政策を廃止し、「需要に応じた生産を」と農家に無理難題を押し付けました。わずかな需給の変化で価格が乱高下する現状はその結果であり、コメ農家の経営ばかりか、国民生活を不安定化させています。政府が主食であるコメの需給と価格、農家の所得安定に責任を持つ農政へと転換することが求められています。