臨時国会の焦点〜すべてがNになる〜
臨時国会の焦点

2024年11月29日【3面】
石破茂政権は22日に「総合経済対策」を閣議決定しました。国民民主党が主張していた「103万円の壁」の引き上げが盛り込まれたことが注目されていますが、これをどうみるか、またいまどんな経済対策が求められるかを考えます。
暮らしよくする税制を
消費税の緊急減税こそ
日本共産党の田村智子委員長は石破政権の経済対策について「一時的・部分的で、場当たり的なバラマキが繰り返されており、これでは経済対策にならない」(22日の記者会見)と批判しました。本当に国民の実質所得を増やし、日本経済を再生させるためには、抜本的で全面的な経済対策が必要です。しかし石破政権の対策はそうなっていないのです。
まず、「103万円の壁」の扱いそのものが不明瞭です。「103万円の壁」とは、親の扶養親族になっている学生などのアルバイト収入が所得税の課税最低限である103万円を超えると扶養を外れ、世帯の手取りが減少してしまうことです。
石破政権の経済対策は「103万円の壁」について「2025年度税制改正の中で議論し引き上げる」ことを盛り込んだものの、引き上げ幅や財源についてなにも触れていません。国民民主党が掲げた「178万円」へ課税最低限を引き上げようとすれば、7兆~8兆円もの財源が必要とされます。もしも消費税増税や社会保障の削減で捻出するなら、低所得層ほど負担が重くなり、経済対策に逆行します。
所得税の課税最低限は、物価や賃金が上昇したのに30年間も据え置かれており、「生計費非課税」(日常必要な生活費や教育費に課税しない)の原則から引き上げるのが当然です。
そのためにも「応能負担」(能力に応じた負担)と生計費非課税の立場で税制全体を抜本的に改革する必要があります。政府は法人税の引き下げや研究開発減税など大企業への減税を繰り返し、大株主への税の優遇も続けてきました。大企業・富裕層への減税や優遇を見直してこそ公正な財源を確保できます。
そもそも、生計費非課税の原則を最も乱暴に踏みにじっているのは消費税です。田村委員長は22日の会見で「生計費に対する最悪な課税である消費税の廃止に向けた緊急減税が求められる」と指摘しました。
この間、消費税は3回も増税され、生計費への課税が強化されてきました。消費税の廃止に向けた減税は生計費非課税の原則から決定的に重要であり、全面的な物価対策としても有効です。価格転嫁ができずに自腹を切っている自営業者や中小企業にとっても重要です。
税と社会保障の根本は所得の再分配です。税制のゆがみをただすことは、財源確保にとどまらず、貧困と格差を是正するという意味を持ちます。消費を喚起し、経済を立て直すためにも避けて通れません。
内部留保課税で賃上げ
滞留資金を経済に還流
石破政権の経済対策は「賃金・所得を増やすため、日本経済・地方経済の成長力を強化する」ことを「最重要課題」としています。そのために、半導体をはじめ一部産業への公的支援や賃上げ税制の「周知広報を徹底する」ことなどを盛り込みました。
しかし“大企業が潤えば利益が国民にしたたり落ちる”という発想では、格差を広げるだけで、国民生活は豊かになりません。それどころか、大企業は530兆円もの内部留保を積み上げてきました。
田村委員長は22日の会見で「大企業が利益を上げて、その利益を内部留保としてためこんでいて賃金に回っていかない」と指摘しました。大企業の内部に巨額の資金が滞留し、経済全体に還流しないことは、誰もが認める日本経済のゆがみです。
日本共産党は時限的な内部留保課税を提案しています。大企業の内部留保のうち、アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)以降に積み上がった200兆円に対し、賃上げや設備投資に回る部分を控除したうえで、年2%の課税を5年間行うものです。控除で大企業の賃上げを促進しつつ、見込まれる10兆円の税収を中小企業の賃上げ支援にあてることで、滞留している資金を経済に還流させることができます。
政府の「賃上げ減税」は赤字で困っている企業には使えません。社会保険料の企業負担分の軽減や賃上げ補助金などの直接支援こそ、すべての中小企業に行き渡る有効な政策です。中小企業の直接支援に踏み出して、最低賃金をすみやかに時給1500円以上に引き上げるべきです。
国民要求実現の抜本策
社会保障・教育予算拡充で
本気で経済成長をめざすなら、「国民の暮らしの困難に向き合い、切実な要求をかなえる緊急かつ抜本的な経済対策」(田村智子委員長、28日)をすすめる必要があります。そのためには、社会保障と教育の予算拡充が必要です。日本共産党は27日、来年度の学費値上げを止め、値下げを進めるため、国公私立大に対する1000億円の緊急助成を政府に要請しました。
先の総選挙の結果、主要政党のすべてが「教育無償化」や「負担軽減」などを公約しています。教育負担の軽減は政治の責務です。
国立・私立大学が次々と学費値上げを実施または予定しています。原因は、国立大の運営費交付金の削減や、私立大への低すぎる経常費補助など日本の高等教育予算が低すぎることです。
石破政権の経済対策には、学費「無償化」はもちろん、教育費負担軽減の政策は「多子世帯の学生の授業料無償化」だけです。
日本共産党は、緊急助成とともに高等教育の漸進的な無償化を求めています。
物価高騰が高齢者の年金生活を直撃しています。年金は「マクロ経済スライド」による実質削減政策をやめ、物価高騰にふさわしい引き上げを実現すべきです。介護報酬引き下げを元に戻し、拡充に向かわせるべきです。最低保障年金の創設や、国民健康保険料の引き下げなども求められます。
ところが、自民党の経済対策では、AI・半導体分野に対して複数年度にわたり10兆円以上の公的支援を行うなど、大企業に大盤振る舞いする方針です。また「防衛力を強化する」とし、5年で43兆円の大軍拡をすすめようとしています。軍拡と財界・大企業の利益最優先という政治のゆがみを正し、大企業・富裕層に応分の負担をさせ、大軍拡を中止すれば国民のための財源を生み出すことは可能です。
