差別・偏見あおる自民・維新外国人や性的少数者を攻撃〜すべてがNになる〜
2023年7月8日【2面】
LGBTなど性的少数者について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」などの差別発言をし、2月に首相秘書官を更迭された荒井勝喜氏が4日付で経済産業省の幹部に復帰する人事が発表されました。この間、政治家が公然と差別や偏見を助長しかねない発言を行う場面が目立っています。先の通常国会では、外国人や性的少数者の人権に深く関わる法律が成立しましたが、その審議のなかでも差別的意識を広げることにつながる言動が相次ぎました。日本政治の人権意識はどこへ…。(中野侃)
「改悪入管法」をめぐっては、外国人が抱えるさまざまな背景を無視して“入管の収容者は「犯罪者」だ”とするキャンペーンが繰り返されました。
政府や入管庁は、難民申請の乱用・悪用で退去を回避する外国人がいることを問題視し、一定の制限が必要だと主張。「殺人や“強盗致傷”等の重大犯罪での服役後に、難民認定を複数回申請するなど、難民認定制度の乱用と疑われる事案がある」(斎藤健法相)などと強調し、不安をあおりました。
「支援者たたき」
さらに、ここに加わったのが「支援者たたき」です。日本維新の会の梅村みずほ参院議員は、名古屋入管で亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんに「詐病(さびょう)の可能性」という侮辱の言葉を投げつけ、そのうえ支援者が悪いかのように事実をねじ曲げる主張を展開。これに呼応し、「外国人犯罪者が、体調不良を訴えて仮釈放されたり、難民認定申請をして強制送還を免れたりといった行動が出来るのは、日本国内にいる人達(活動家?)の入れ知恵なのでは?」(自民党・杉田水脈衆院議員)などという妄言まで飛び出すなど、追及の矛先を入管行政からそらすために外国人や支援者をターゲットにした攻撃が行われました。
「4党LGBT法」の審議では、女性の安全がトランスジェンダー(出生時に割り当てられた性と性自認が異なる人)の権利擁護によって脅かされるかのような言説が振りまかれました。
悪法強行と一体
そもそもLGBT差別禁止をめぐる議論の出発点は、性的指向や性自認にかかわらず、誰もが「個人の尊厳」を尊重される社会をめざすというものです。ところが、自民党などが中心となり、「この法案が成立したら、外形は男性だが自身は女性であると称する人は女湯や女性用手洗いに入れるようになるというのは本当か」(同党・赤澤亮正衆院議員)などと法案の趣旨をゆがめる発言が続出。「行き過ぎた人権の主張、もしくは性的マジョリティー(多数派)に対する人権侵害、これだけは阻止していかないといけない」(同党・宮澤博行衆院議員)などと女性の人権・安全を守ることとトランスジェンダーの人権・安全を守ることが対立するかのような主張が喧伝(けんでん)され、当事者への差別やバッシングが急激に広がりました。
とりわけ重大なのは、こうした一連の差別的発言や言説が岸田政権による悪法強行と一体で行われたことです。政治家が率先して国民の不安をあおり、マイノリティー(少数者)への差別や分断を広げることが悪法を押し通す「推進力」になる…。「人権後進国」の政治の深刻さが浮き彫りになりました。
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