洗練されたこの街のこと
今朝はいつもより少し早く家を出た。
出勤する人たちが多いその時間帯は
当然のように電車は満員だった。
目的の駅で降り
いつもならそのまま目的地へ向かうのだが、
少し時間に余裕があったため
ぐるりと駅周辺を歩いてみることにした。
どこにも人はたくさんいる。
たくさんいるから誰も知らないのか、
たくさんいるのに誰も知らないのか、
どちらなのだろう。
人は大きなビルへと吸い込まれるように流れていく。
そんな中、ふと、
小さな建物の前に列ができていることに気が付く。
喫煙所だ。
入り口には「最大5名まで」の張り紙の文字があり、
外には5、6人が並んで待っていた。
その律儀さと規則正しさに日本人の心を見る。
犬の銅像の上には、しだれ桜が咲き始めていた。
それを写真に収めようと、
スマホで撮影している人たちの多いこと。
背後を通りかかった私は映り込んでしまっただろうか。
もちろん自己主張などせず、通行人に徹しておく。
さらにぐるりと駅を回れば、交番があった。
交番前には年配のお巡りさんが立っていて、
朝9時になってもまだ気怠さが残るこの街と同じように
少し怠そうに、そしてどこか眠たそうな雰囲気だった。
昨夜から夜通し交番勤務なのかもしれない。
交番前には鳩が地面を突きながら歩き回っており、
お巡りさんはちらりと見ては、そっと微笑んでいる。
なんてのどかな光景なのだろうか。
これで駅を無事一周できた。
ほんの少し歩いてみるだけで、
街の違う一面を見ることができる。
洗練されたこの街の面白さは
実はまだよくわからないでいる。
もう少し、時間をかけて見て感じていきたい。
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