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小さな発見

電車が駅に着き、私が立つ側と反対の扉が開いた。
私はぼうっと外を眺めていたが、うっそうと草が生い茂るだけで、特徴的なものはなにもない。

何もない中でふと、草の中にある黒い粒に気が付いた。
大きさはダンゴムシがまるまったのよりも、もう少し小さいくらい。
よく見ればそれは草の伸びたてっぺんあたりの、葉と葉の間にくっついている。
オシロイバナの種だ。

通り過ぎるときにはただの草でしかないのに、その名前がわかると途端に存在感を増す。
名前がわかれば特別に見え、そして紐がくっ付いているかのようにするするするっと思い出を引っ張り出してくる。
――小さいころに種を割って遊んだな
なんて懐かしい気持ちにしてくれる。

ただの通過点に過ぎない電車の線路脇が、何でもなくない場所になった。
私は相変わらず窓の外を眺めながら電車に揺られているが、マスクの下ではちょっと口角が上がっている。
この季節でなければ気付かなかったものだ。
こうした小さな発見は、私の日常においてとても大切なものだ。

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