もう転ばないために
うまくいかない日もある。
――何をやってもどうもうまくいかない
今日はそんな日だったのかもしれない。
――今日はだめな日だな
朝からのうまくいかなかったことを一つずつ数えながら、
そしてまた新たに起こる、やっぱりうまくいかないことに
――ほらまた
笑って済ませるのが常だった。
そうやって消化できているのだから、
その状況をむしろ楽しめているのだから大丈夫と思っていたのだ。
少し前にこれではいけないのだという事を知った。
「今日はうまくいかない日」と心で思っていると、
潜在的にうまくいかない方へと自ずと行動してしまうらしい。
――今のは私らしくなかった
そう自分に言葉を掛け、ではどうあったら自分らしいのかを考えることで
「うまくいかない自分」から脱することができるようだ。
夕方、大学生の帰宅時間と重なってしまい、歩道は非常に混雑していた。
集団で楽しそうにゆっくりと駅へと向かう学生たちの流れは、
主婦にとっては非常に忙しい時間帯と重なって
もどかしさを感じずにはいられなかった。
前方の横断歩道の信号が青に変わるのが見え、
私は人混みを小走りに抜けて、横断歩道を渡り始める。
――うまくった
信号はまだ青のままで点滅すらしていない。
でも走り出した手前、
最後まで走り抜けようと思ったのがいけなかったのか、
私は横断歩道のど真ん中で派手に転んでしまった。
走るリズムに合わせて幅広で裾の長いパンツが足元でひらひらと舞い、
その裾に自分の足を引っかけてこけたのだ。
すぐ立ち上がり、横断歩道を渡りきったが、
膝からアスファルトへ落ちたため、膝がとても痛い。
用を済ませたあと、店の中で恐る恐る膝を確認してみれば、
パンツの膝部分に大きな穴が空いていた。
今日のうまくいかなかったことの決定打だった。
――気に入っていたのに…
学べることは日常の中にたくさんある。
学生たちは、あんなにも余裕があって、
若い体を持っていても誰ひとり慌てている者などいないではないか。
私らしくなかったなぁと、
次は自分らしく行動しようと改めて言葉を掛ける。
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