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整える

いつも行く道を歩く。
空は晴れて、空気は乾いている。
道行く人はマスクをしていたり、しなかったりするが、私は寒いことを理由につけることにしている。

そういえばこの道を歩くのは、年が明けて初めてだったと歩いている最中に気が付いた。
外出は確かにしていたが、車で出掛けてしまうか、別の道を通って駅まで向かうかで、隣町へと続くこの道を歩いたのは本当に久しぶりのことだった。

それに気が付いたのは、どうも違和感があったからだ。
――なんかおかしい
――なんか違う
そう感じつつも、どこが違うのかよくわからず歩き続けること数分。
ようやく気が付くことができた。
道に沿って植えられている植物が、こぞって整えられているのだ。

視界の右側は道路、左側は植えられた木々が見える。
右側はすっきり広く、左側は圧迫感があるのが常だったはずなのに、視界全体がすっきりし、視野が広がったがために違和感を覚えたようだ。

正月が明けてすぐに剪定をしたのだろうか。
まさか正月に強行したとは思わないが、なるほど、私のように正月を後引く人間がいるのを見越して、まだ出掛ける人が少ないうちに作業を済ませたのかもしれない。

「なるほど、なるほど」とひとり納得して歩いていると、道路の排水溝を掃除する車が作業をしているではないか。
――ここでも整えている

私はこうして美容院へと辿り着き、伸びてしまった髪を切り、染めて、無事私自身も整えることができた。

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大須絵里子
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