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新聞 忘却の先の無関心

種類:日経新聞 朝刊
掲載日:2023/1/22

子育てにおいて、三猿の教えを心がけている部分がある。
悪い行いを見ない、悪く導く言葉を聞かない、悪く言わない。
子どもには、素直に育って欲しいと願う。

子どもがほんの小さな頃、ニュースを観ようとテレビを点けたら軍人がミサイルを撃ち込む映像が映った。
ちょうど他国で戦争が勃発した時で、次の日も、その次の日も似通った映像が流されていた。
子どもたちは訳もわからずその映像を眺めていたが、私は「こんなものを見せてはいけない」とそれ以降ニュースを点けなくなってしまった。

子どもが成長した今も、戦争の映像は見せていいのかと迷う時がある。
あってはならないことなのだから、知らなくてもいいのではないかと極端なことを考えてしまうことさえある。
戦争を知らない私でさえこんなにつらいのに、知っている人たちはどうして覚えていろと言うのか。
私は大人だが、三猿のように悪い行いを見ず、聞かずに過ごしてはなぜいけないのか。
そんな気持ちが根底にあることは否めない。

今日の朝刊の春秋に、コロナでの人の死ついて書かれていた。
一例として戦争についての以下のような記述があった。

終戦記念日前にだけ増える戦争報道は、しばしば「8月ジャーナリズム」と批判される。
それでも忘れたままより年に1度でも思い出す方がいい。
怖いのは忘却の先にある無関心だからだ。

あぁそうだったのかと納得がいく。
私は戦争に対して、決して無関心ではない。
今こうして戦争についてネガティブな感情を抱けるのは、先人のみなさんが伝えてくれたお陰なのだと知った。
嫌だから目を背けるのではなく、いけないからこそ「これはいけないことだ」と関心を持つことが必要なのだと。

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大須絵里子
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