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うぺぺ!新年祭りだっぺ!


凛とした冬の空気が、ヤンサの町を包み込んでいた。年の瀬を迎え、普段は穏やかに流れる時間が、何かしら慌ただしく感じられる季節となっていた。町の通りには、赤い前掛けを着けたナマズオ族たちが、せわしなく行き交っている。

「うぺぺ!今年こそは大当たりを引くっぺ!」

黄色い鈴を首に下げ、いつも以上に長い髭を整えたギョリンは、おみくじ売り場の前で興奮気味に跳ね回っていた。

「ボクも今年こそは大金持ちになるっぺ!成金屋としての第一歩だっぺな!」

その横では、セイゲツが優雅に立ち、額に掛かった髭を軽く払いながら、冷静な表情を浮かべていた。

「確率論から言えば、毎年同じことを繰り返しているだけでは結果は変わらない。しかし...」と言いかけて、興奮で思わず「でもそれがいいんだっぺ!」と声が裏返った。慌てて咳払いをする姿に、周りのナマズオたちが微笑ましげに目を細めた。

その頃、町はずれの古びた祠では、ギョシンが不安げな表情で神託を待っていた。頭の×字の傷が、冷たい北風にうずいている。

「オイラの今年の運勢はどうなるんだっぺか...」

突然、祠から七色の光が漏れ出し、ギョシンを包み込んだ。

「汝の運命を変えるには、七つの祭りを成功させよ。それぞれが異なる文化の精神を宿すものとせよ」

神託を聞いたギョシンは、オイラにそんな大役が務まるのかと不安になったが、持ち前の行動力で早速準備にとりかかることを決意した。

「よーし!まずは正月祭りからだっぺ!」

その決意を聞きつけたセイゲツは、すかさず協力を申し出た。「私が知識面でサポートしましょう。まずは各地の正月行事について...」と、またもや興奮して「調べるっぺ!」と言い終わってしまい、顔を赤らめた。

一方、町の裏通りでは、ギョドウが新手の詐欺を企んでいた。「おめでたい正月だってのに、借金取りはまだまだうるせえっぺな...」と独り言を呟きながら、しかし今回ばかりは違った。町中に広がる祭りの準備の熱気に当てられたのか、ギョドウは思わず立ち止まった。

「なあ、俺も...手伝わせてくれねえっぺか?」

その言葉に、ギョシンは大きく頷いた。「みんなでやった方が楽しいっぺ!それに、オイラ一人じゃ絶対失敗しちゃうっぺ!」

こうして、個性豊かなナマズオたちが力を合わせ、前代未聞の正月祭りの準備が始まった。ギョシンのものづくりの才能、セイゲツの知識、ギョドウの街の裏情報、そしてギョリンの商才が、不思議と調和していく。

準備の日々は慌ただしく過ぎていった。ギョシンは電気の力を巧みに操り、幻想的な光の装飾を作り上げた。その際、興奮のあまり過剰な電流を流してしまい、一時は町中が停電になるというハプニングもあったが、それもまた笑い話となった。

セイゲツは各地の伝統行事を組み合わせ、独特な祭りのプログラムを考案した。時々「これは素晴らしい案だ」と言いかけて「っぺ!」と付け加えてしまい、その度に顔を赤らめた。

ギョドウは、普段の詐欺師としての交渉力を活かし、町中の商店から協力を取り付けた。「俺様の交渉術は伊達じゃねえっぺ!」と、珍しく誇らしげな表情を見せた。

そしてギョリンは、商才を活かして祭りの経済面を管理した。「ボクに任せるっぺ!これで大金持ちへの第一歩だっぺな!」と張り切った。

ついに迎えた元旦。

町は幻想的な光に包まれ、伝統と革新が混ざり合った祭りの音色が響き渡る。ギョシンの作った電飾は、まるで天の川のように美しく輝き、人々の心を魅了した。

「うぺぺ!こんなに素敵な祭りになるなんて!」ギョシンは感激の涙を流した。

セイゲツも思わず本音を漏らす。「やはり、理論だけでは分からない魅力というものがあるっぺねえ...あっ」また言ってしまい、今度は周りと一緒に笑った。

ギョドウは、普段の悪だくみを忘れ、純粋に祭りを楽しんでいた。「なあ、俺...もしかしたら、新しい道を見つけられたかもしれねえっぺ」

そしてギョリンは、「ボクの商才のおかげで、祭りの収支もばっちりだっぺ!」と、誇らしげに報告した。

夜空に打ち上げられた花火が、ナマズオたちの願いを天へと運んでいく。ギョシンの頭の傷跡さえも、祭りの光の中で希望の印のように輝いていた。

これは、七つの祭りの始まりに過ぎない。しかし、この正月祭りで得られた絆は、確かにギョシンの運命を、そして町全体の未来を、新しい方向へと導いていくのだった。

「うぺぺ!これからが楽しみだっぺな!」

ナマズオたちの声が、新年の空に響き渡った。


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