秋の奥武蔵グリーンラインを縦走してみたら、紅葉が見頃だった
埼玉県民のひねくれた二輪乗りが、どこか走りに行くときにまず思い立つ場所、それが奥武蔵グリーンラインであろう。
その昔、全てのオートバイ乗りのバイブルであったツーリングマップルには、著者のおすすめルートがピンク色で着色されていた。
埼玉の平野部から最も近いところで、このピンクのおすすめルートとして記載されていたのが奥武蔵グリーンラインである。
そのため、昔は、埼玉県民の初心者ライダーのうちの95%が、初めて走る峠道として奥武蔵グリーンラインを選び(私的統計より算出)、そして、埼玉の峠道の厳しさと奥ゆかしさを堪能したという。
今回は小川町方面から定峰峠を登り、定峰峠から南下、鎌北湖を目指すルートで奥武蔵グリーンラインを縦走してみることにした。
自宅から10キロ程走り、小川町へ。この日は人体が運動をするのに最適な気温で、暑くもなく寒くもない。
小川町までくると山が近付き、丁度、紅葉が楽しめることに気付く。なかなか見応えのある紅葉。奥武蔵界隈の山は全て杉が植林されていて、全く紅葉なんて楽しめないと勝手に思い込んでいたよ。
県道11号線をひた走り、「落合の店」の交差点を左折。この店名、落合橋といった地名に由来しているのか、往年の名プロ野球である落合博満(落合福嗣君のお父さん)といった氏名に由来しているものなのか、想像を掻き立てられる。シンプルながら味わい深い店名だ。
「落合の店」の交差点を左折した直後にある道路情報板。いいねえ、こういう道路の歴史を感じられる構造物。
しかし、この道路情報板には、情報提供者としての致命的な欠点が…。
それは、異常に位置が低くて標識が全く目立たない点と、定峰峠の先から通行止めになっていることが示されていない点だ!
定峰峠の先(秩父市側)が、2019年の台風19号による災害復旧のため通行止めとなっている影響からか、交通量がとても少ない。
オートバイで何度か走ったときは、道幅が狭いわりに交通量がそこそこあって、あまり良い印象がなかったのだが、これはいい!
本格的な峠道に入る前に、お地蔵さんが旅人を見守る。きれいに手入れされ、今も地元の人たちからも大事にされている。
お地蔵さんの向かいでは、ラジオをかけながら花を束ねる作業をしている地元の人の姿。昔から変わらない景色と空気がここにある、などと昔を知りもしない地域で勝手にノスタルジーな感覚をいただく。
お地蔵さんに手を合わせてから、再出発。
ここまでは勾配5%以下で川沿いをだらだらと登ってきたが、川を渡りいよいよ本格的な峠道へ。
息を切らしながら登っていると開けた場所が。
赤いノボリには、「定峰峠の鬼うどん」の文字。
店が開いていたら、かなりの賑わいを予想させる駐車スペースの広さと、店先の軒下にぶら下げられている干柿のミスマッチがにくい。
そういえば、ここ定峰峠はイニDの舞台ともなった超有名な峠でもあった。道の外にたまった落ち葉に導かれ、はっきりと描かれているブラインドカーブが美しい。
紅葉と落葉があれば、どんな道も上質な峠道に出来上がる。
定峰峠までの道の斜度は、手持ちのサイコン表示では、大体5%程度で、たまーに10%まで上がっていた。
距離は長めだが、交通量が少なく、勾配も緩め。登りやすくて気に入った!
初めて自転車で本格的な登る峠としては最適でしょう。
峠には駐車場があり、サイクルラックも完備。有名な茶屋もあって、休憩には最適だが、ここはイニDにも登場するような峠。当然人もたくさんおり、人混みを避けるために自転車に乗る私は当然スル~。
定峰峠は県道11号線と奥武蔵グリーンラインの交差点にもなっている。直進の秩父市方面は前述のとおり通行止め。峠の交差点(不思議なワードだな)を左折し、お隣の白石峠に向かおう。
定峰峠から白石峠まで向かう道は常に登り。斜度も定峰峠までの道よりきついが、距離はあまりない。疲れた足にムチを入れながら白石峠に到着。
この白石峠には、ときがわ町方面から登ってくる道もある。その道は、ヒルクライムを嗜むロードバイク乗りにとって、埼玉県で最も名を持つ道であり、埼玉県民のヒルクライマーは、皆この道をいかに早く走るかを四六時中考えている。
自分も何度か登ったが、苦しみを味わうのには最適な峠道だ。
白石峠をさらに南下し、大野峠へ向かう。
白石峠から大野峠までも、きつい登りが続く。
大野峠は、やけにだだっ広いだけで、展望は全く無く、本当に何もない。
その広さが逆に、味気なさを強調し、奥武蔵グリーンラインの持つ、埼玉の峠の醍醐味を引き立たせる。
この何もなさこそ、奥武蔵グリーンラインよ!
大野峠からさらに南下し、刈場坂峠へ。
刈場坂峠は奥武蔵グリーンラインの中で、最も標高の高いポイントで、随一のビュースポット。
奥武蔵グリーンラインは、たまにこんな爽快な景色も見せてくれるところが、またにくい。
寒々しい景色のようだが、この日は風も弱く暖かな日。両端の落ち葉に導かれた道路の上を軽やかに進む。
刈場坂峠を越えると、道は下り基調となる。
楽ではあるが、寂しさも覚える…。
檥峠は正に奥武蔵グリーンラインを代表するような、なんの変哲もない峠。というか、ここを峠とする意味が?
さらに下り、高山不動尊の茶屋へ。
昔は茶屋があり、展望台があったが、今は撤去されている。
その代わりに移動販売車が来ていた。
奥武蔵グリーンライン界隈には、このほかにも白石峠、堂平山頂でも移動販売が行われているので、3箇所も移動販売を行うスポットがあることになる!
季節によって売り上げが激変するのだろうな。
さらに進み顔振峠の茶屋へ。
ここはみんな大好き渋沢平九郎の逸話が残る地。
平九郎のことを一瞬思い出し、時間がナイので先を急ぐ。
目的地である鎌北湖の途中で、突如として出現する大岩。天文岩というらしい。岩には穴が空いていて、なんでも、江戸時代の天文学者千葉歳胤がこの大岩窟に入り、数学、暦法、天文について独学したらしい。
江戸時代にこのような場所の穴に住むなんて、怖かったろうな。そんな酔狂さがないと数学、天文は極められないということか…。
細かなアップダウンを刻みつつ、鎌北湖に到着!久しぶりに鎌北湖へ来ましたが、いや、なかなか見事な紅葉。紅葉を見るなら西の渡月橋、東の鎌北湖と称してもよいのでは。
鎌北湖には堤の上で休むスポットがたくさんある。広いし、ここなら気兼ねなくゆっくり休憩できる。と、取り出したのは家から持ってきたプロテインバー。初めて食べたが、中が詰まっていて食べごたえあり。補給には最適だな。
なんとなく、鎌北湖は寂しい場所とのイメージがあったが、今日の鎌北湖は、
紅葉を見に来た人、釣りをする人、登山をしに来た人、オートバイでツーリングに来た人、ただ暇をつぶしに来た人などなどで賑わいをみせ、気候と相まり、とても暖かさを感じた。
今回のライド、定峰峠の登り口から鎌北湖までの乗車時間は約2時間30分で、獲得標高が約1,500m。
十分な走りごたえで身体は満足、自然に癒され心も満足なライドとなりました。