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アラフォーからの挑戦!こどものメンタルヘルスを守るソーシャルベンチャー
こんにちは、Osozakiです。
私は会社員をしながら、ボーダレスアカデミーという社会事業家のコミュニティにゆるゆると参加し、今年から思春期のこどものメンタルヘルス課題に対する社会事業(ソーシャルビジネス)に取り組んでいます。
今回は、連載してきた原体験トークを少しお休みし、今私が抱いているソーシャルベンチャーへの想いやビジョンをお伝えします。
社会起業集中講座でぶつけてみた本丸!
自分の原体験から、高校時代から、摂食障害の治療施設を日本で作ることが夢だった私。しかし、その後紆余曲折があり、30代からは完全にビジネス領域へキャリアをシフトしました。しかし、40歳を過ぎたら何か社会事業に取り組むだろう・・という、「漠然とした確信」がありました。
そして、子育てやキャリアの変遷を経て、42歳になった2025年の冬。
現職と子育て(長女・8歳)が少し落ち着いたタイミングで、ボーダレスアカデミーの社会起業家伴走支援プログラムの短期集中講座に応募。2日間で自分が取り組みたい社会課題のコンセプトをもとにソーシャルベンチャーの第一歩を学びました。
今回、参加前から心に決めていたのは、20年以上私の心をくすぶっていた「摂食障害」をテーマをぶつけてみること。
一旦当時抱いていたビジネスコンセプトを共有したところ、意外に多くの共感や後押しを得られたことが驚きでした。
「もしかしたら、何かできるかも!?」と、冷凍保存されていた「心の情熱」に火が付きました。
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ヒアリングを通じて知った「摂食障害の多様性」
原体験があるからこそ、知らないこともある。一旦自分の経験は白紙に戻し、まず現状を学ぶことを始めました。
一旦火が付いた心の炎に薪をくべるかのように、フルタイムの仕事の合間を縫って、摂食障害の治療をしている病院に電話したり、摂食障害カウンセラーのYoutubeをみたり、経験者にヒアリングをしたり、支援団体や親の会に問い合わせたり、学術文献を読みあさありる日々が続きました。
ヒアリングを重ねる中で、一人一人の摂食障害のストーリーや回復方法、回復の定義は実に異なることを痛感。特に、長年病気と付き合っている方は、診断すらまともに受けられないまま、自分に合った回復法(対処法)をその都度見出し、数十年以上病気と付き合ってきた方も多いと分かりました。
要は「摂食障害になりました→診断されました→専門的な治療を受けました→治りました」という教科書通りのストーリーは、ほぼ存在しないという現実がそこにはありました。
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「摂食障害」は氷山の一角にすぎない!?
しかし同時に、「思春期に摂食障害を発症した当事者」には、いくつかの共通点があることも気づきました。
主要なものをあげると、、
「親に相談できない/わかってくれない」というメンタルハードル、
そもそも思春期やこどもがアクセスしやすい相談先がないこと、
(そのために)「自分で何とかしなきゃ」と自力で抱え込む傾向、
また中学受験や進学後の学力不信など、学業ストレス要因も多いこと、
などなど。
また、残念ながら、(稀な摂食障害専門の治療施設を除き)入院治療や通院治療はあまり効果がなく中断傾向が高いことや、既存の対面型サポートグループには、年齢層が高めの当事者や親が多く、初発の思春期患者は馴染みにくいケースも多いとも思いました。
そして、少し俯瞰してみてみると、それらのハードルは、実は、摂食障害だけでなく、「思春期にメンタルヘルス課題を抱えるこども」に共通する傾向かもしれないということも段々理解してきました。
少しアングルを変えてみると、「摂食障害」は氷山の一角であり、「思春期に心身の不調(メンタルヘルス)を患ったこどもが適切にケアされていない」という大きな社会課題がその根底にあるのではという気づきが生まれました。
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こどものメンタルヘルスは社会課題!?
そこから、更にリサーチを重ねる中で、「あえて思春期というタイミングで、メンタルヘルスをケアすること」の重要性にも気づき始めました。
いくつかファクトをお伝えすると:
日本を含め世界の児童・青年のうち、約20%(5人に1人)が精神疾患・問題を抱えている。日本は先進国の中で精神的幸福度は最下位
成人の精神疾患全罹患者のうち、約半数は14歳までに、75%は25歳までに発症。つまり、思春期は、「精神疾患が発生しやすい時期」
日本の子どもの自殺率は2025年に過去最多を更新。不登校児童の数も年々増加傾向。受験うつなどを経験するこどもは75%といわれるなど、日本特有のこどものSOSも深刻化
児童精神科を受診する年齢層では、中学生が一番多く、高学年(小4-6年)が続く。
しかし、日本の児童精神科医は海外と比較し1/60程度→圧倒的に専門家が少ない
・・・・などなど。
これだけ、日本のこどもが心のSOSを出しているのに、圧倒的にケアが足りない、、これこそ社会課題なのでは?という、新たな視点が生まれました。また、行政と医療中心の取組では、全くおいつかず、この領域こそ、民間/ビジネスの手法を取り入れたアプローチが必要なのではとも思いました。
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メンタルヘルスリテラシーが鍵!?
では、どうしたらよいのか?
こどもの早期治療アクセス、社会スティグマという2つのレバレッジポイントをもとに、ソリューションを検討していた時に、メンタルヘルスリテラシーという言葉に出会いました。
メンタルヘルスリテラシーとは、「精神健康の向上、精神疾患の予防、早期発見・診断、治療の継続や回復のそれぞれの土台として必要な力やスキル」といわれています。
学術調査などでは、メンタルヘルスリテラシーの効果として、①精神疾患に対する知識の向上、②正しい知識により、精神疾患に対する偏見や態度が改善する、③助けを求めることに関する行動意図が改善、④他者への気遣いができるようになるなどが挙げられています。
まさに、私が探していたソリューションに近いのでは!?とかすかな希望が生まれました。更に調べると、欧米諸国などでは、メンタルヘルスリテラシー教育などの導入が進んでいますが、日本では最近やっと40年ぶり(!)に、学習指導要領が改訂。2022年度より新学習指導要領に、「精神疾患の予防と回復」が追加され、やっと小中高の保健教育で心の健康や精神疾患に関する内容が扱われるようになったようです。
しかし、現在では導入される学年や授業数もかなり限定的。大きな一歩ではありますが、専門家からはまだ不十分という意見も多い状況です。
メンタルヘルスリテラシー=読み書きそろばん!
メンタルヘルスリテラシーは、「心の健康行動に対する心構えやライフスキル」といわれます。学力でいうと、読み書きそろばんのような「土台」となる知識やスキルを指すイメージでしょうか。
なるほど・・・そのような基本的な「土台」がない中で、急に思春期に、「摂食障害」やら「鬱」やら、精神疾患という「応用問題」に直面しても戸惑うのは当然ではないか?ましてや、こどもに自分の状態を親や周りの大人に「相談せよ」といわれても、子どもとしては「急に因数分解を解け」と言われている状態なのでは・・と思いました。
また、親もこのようなメンタルヘルスリテラシー教育を受けてきていないし、今後これを学校で教える先生ですら経験がない(そもそもどうやって教えるのだろう・・)
つまり、親や周りの大人、ひいては地域社会に「共通言語」がないから、語れないし、話がかみ合わない。わからないから、怖い。そのような状況なのではと思うのです。
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「筋力」x「皮下脂肪」で、ケアするこどもの心
では、何がソリューションなのか?
ひとつのイメージとして、体を想像してみてください。魅力的なボディーを維持するには、適切な筋肉と適切な皮下脂肪が必要ですよね?
同様に、こどもの心の健康のためにも、「メンタルヘルスリテラシー」という筋力が必要。そして、(ここからは全くの自論ですが)その筋力を補完する形で、(効率化とプライバシー尊重の社会風潮の中で削除傾向にある)家庭や周りの人との「雑談」や「(良い意味での)おせっかい」という「皮下脂肪」のようなプロテクションが同時に必要なのではと思っています。
リテラシーという知識だけではまだ足りない。そこに、まわりの大人の雑談やおせっかいがあれば、日頃の接点の中で子どもの変化に気づく。忙しすぎる現代人がそぎ落としてしまった「無駄な時間」にこそ、もしかしたらヒントがあるようにも思えている今日この頃です。
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7割の親は、心の健康を体の健康や勉強と同じくらい大事だと思ってる
最後に、最近感じた希望(HOPE)をひとつ。
最近、事業対象の仮説として検討している中学受験をした/させている親へのオンライン調査を実施しました。約150名の方々にアンケートをしてみたのですが、そのうち、7割の母親が「受験をするこどもの心の健康(メンタルヘルス)は、勉強(成績)や体の健康と同じくらい重要と思っている」と回答しました。
もちろん、ただ「正論」として答えた方もいるかもしれません。
しかし、親としては、「こどもの心の健康を、体や学業と同じくらい重要だ」と思っている。本当はこどもの心のSOSをわかるようになりたいし、どうしたらよいか知りたいと思っている、でもどうしたらいいかわからず「困っている」という状態なのでは?と私は解釈しました。
私が、つくりたい社会。それは、こどもの心の健康が、「体の健康や勉強と同じくらい」大切にされる社会。
このビジョンにむけて、明日も少し進めていたらいいな、、と思いながら、漠然とした過程を、地道に一歩づつ進む今日この頃です。
もし、このnoteを読んで、共感した方や、「面白そう」&「一緒に何かやってみたい」、応援したい!と思ってくださった方は、ぜひ「好き」やメッセージを!