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レアグルーヴのススメ
1.まずレアグルーヴって何?
直訳すると「珍しいグルーヴ」となるのですが、簡単な意味としてはソウルミュージックを主に単純に入手が困難な音楽や、ノレる音楽、独創的な音楽を指しています。でも結構曖昧です。
ただレアなだけではなく、昔は見過ごされたけど今聞くととても先進的で面白いといった評価をされた音楽たちがこれらに入ることが多いです。
2.レアグルーヴってなんで生まれたの
時は遡り70年代、音楽はサイケデリック(いわゆるヤク)ムーブメントを経て激変します。特にソウルミュージックの発展が目覚ましく、最大手だったMotownだけでなく様々な音楽会社がこぞってソウルミュージックを出すようになりました。そうした発展の中で70年代のソウルの音楽性を取り入れつつジャズのアドリブを持ちこんだりしたものが売れたり、前衛的で独創的な音楽も徐々に評価されるようになり、それに乗じて様々な曲が生まれては忘れられを繰り返していきました。そういった忘れられたものを再び持ちこんだラジオ放送がレアグルーヴの源流となりました。Wikipediaによると「1985年に、Kiss FMのDJである、ノーマン・ジェイ(Norman Jay)の番組The Original Rare Groove Showを通して紹介された事で知られる。」とのことで、そうしたラジオから誰も知らないレコードをディスコに持ち込んでドヤるDJ文化が生まれ、このようなレアグルーヴムーブメントが生まれました。
3.レアグルーヴのド定番
Donald Byrd Places And Spacesより「Change」
まずはレア・グルーヴといえばこれ!な「ドナルド・バード」です。彼は元々ジャズ奏者だったのですが、色々音楽を他人に教えていたことでツテがあり、その中の2人の生徒(?)の若い作曲家「マイゼル兄弟(フォンス・マイゼルとラリー・マイゼル)」と組むようになります。
彼らの作った音楽はディスコ的でありながら、ジャズのアドリブ要素を多分に含んでおり、そして爽やかです。このバンドははっきり言ってハズレがなくどれを聞いても素晴らしいのですが、今回はその中でも個人的に最高傑作と思うこのアルバムをチョイスしました。
またこのアルバムがあの「Blue Note」から出ているのもミソですね。
CDでの入手は簡単。LPはオリジナルマスター起こしで再発がされており、入手も非常に楽なので助かります。
Roy Ayers Ubiquity Everybody Loves The Sunshineより「Everybody Loves The Sunshine 」
ヴィブラフォン奏者の「ロイ・エアーズ」が作ったアルバムの一曲よりEverybody Loves The Sunshineです。超独特のコードに、シンセを大々的に使用、AORともソウルとも似つかない唯一無二のサウンドです。この人はとにかくヒップホップミュージシャンからの支持が厚く、サンプリングもよくされていたりします。なんならこの曲はヒップホップを題材にした映画にも出てるとか。朝に聞くとスッキリ爽やかに出勤できるのでおすすめです。
こちらのレコードの入手はやや大変、5000円超えも珍しくありません。
CDなら入手が容易なのでそちらで。
Bobbi Humphrey Blacks And Bluesより
「Harlem River Driver」
フルート奏者の「ボビー・ハンフリー」のアルバムです。アルバムジャケからは想像できないほど低い声が聞こえますが、彼女はボーカルは担当していませんのでお気になさらず。
とにかくグルーヴィーでちょっとサイケ。曲が進むたびに次第に楽器の嵐が押し寄せてきます。
アシッドジャズの先取りをしたかのようなクラブ向けなサウンドですが、時代が早すぎたのかもしれません。しかしこうしたアルバムが後々拾われ再評価されるようになったのですからいい時代ですね。
こちらはCDでの入手が容易です。またLPもdiscogs情報によるとAmazonにあるLPはオリジナルマスターからの再発のようで、こちらも入手が楽です。
4.レア・グルーヴの穴場アルバム(高額から安価まで)
Bobby Hutcherson Montaraより 「Montara」
ヴィブラフォン奏者の「ボビー・ハッチャーソン」のアルバムの一曲です。全体的にスピリチュアル漂う雰囲気で、落ち着く音楽です。
もしかしたらヒップホップファンならお気づきになったかもしれません。そうこのアルバムはあのスチャダラパーの「サマージャム'95」のサンプリング元となっています。まさに夏ピッタリの珍しい曲をサンプリングできるセンスに脱帽です。
CDではこちらも入手が容易ですが、LPは再発がなかなかされない上入手困難です。
Niteflyte S/T(セルフタイトル)より 「Niteflyte」
「サンディ・トレノとハワード・ジョンソン」を主に率いるファンクバンドのNiteflyteです。この美しいイントロとコーラスがたまりません。爽やかなギターにオーケストラにシンセを混ぜ、まるで海外版シティーポップです。実はこの曲はSparkleのインスピレーション元と知られており、「(この曲を聞いて)自分だったら もう少し こういった感じに作る … ということで 制作されたのが 「SPARKLE」 でした。」(編:山下達郎.org | やっぱり山下達郎が最高! SPARKLE ( 山下達郎 ) vs IF YOU WANT IT ( NITE FLYTE ))と記されています。この曲はそんな伝説の曲を生み出す経緯を作った、実は偉大な曲なのです。
こちらはitunesでのデジタルでの購入が楽ですが、CDも900円となっており入手が容易です。LPはそれなりに売れたにも関わらずプレミアが付いており、入手が大変です。
The Supreme Jubilees It'll All Be Overより
「It'll All Be Over」
ファンクグループ、「The Supreme Jubilees」の唯一作、It'll All Be Overです。タイトル曲の一部である、「もう泣かなくて良い、すべて終わったのだ」という歌詞は、怒涛の60年代で荒んだ心を癒やすために出来たような、まさに泣けるソウルとなっています。仕事帰りに聞くととてもおすすめです。しかしあまり評価されなかったためLPはプレミア化しています。CDやサブスクやitunesでの購入をおすすめします。
Gene Harris Astral Signalより「Losalamitoslatinfunklovesong」
ジャズピアニストの「ジーン・ハリス」のアルバムです。これはアシッドジャズのオーパーツとも言えるアルバムの一曲ではないでしょうか。独特のリズムに合いの手、ジャズのアドリブ感を感じさせないスムーズな進行に、ファンキーなボーカル。とても素晴らしい曲に仕上がっています。アルバム全体を通してサイケだったりファンクだったりカバーだったりとまるで彼の記憶をたどるような曲順になっているのも素晴らしいです。
CDの入手は廃盤のため中古のみでやや入手が大変ですのでitunesでの購入が一番手っ取り早いです。LPも入手が大変です。
The Paul Butterfield Blues Band Sometimes I Just Feel Like Smilin'より「Night Child」
穴場と言いつつどれも入手がしんどすぎるためこちらを。
ブルース・バンドの「The Paul Butterfield Blues Band」です。こちらはレア・グルーヴと言えるかは不明ですが入手がめんどくさく、独特の雰囲気があるため一応ここへ。
ブルース・バンドとしてヒットしたものの行き詰まり、70年代の風に影響されなんとファンクに移行。あまり売れなかったのか残念ながらこのアルバムを知る人はあまりいません。しかし聞くとこれはかなり素晴らしい。グルーヴィーなサウンドで圧倒されます。そして曲順もまた陽気で素晴らしい。カバーもさすがの出来。
CDの入手は高値となっており大変ですがLPは国内盤やオリジナルUS盤も1000円程度で買える安値となっています(帯付きはなぜかプレミア6000円です。理由はわかりません。)
5.レア・グルーヴLPの探し方のコツ
おすすめの方法はヤフオク、discogs、オークフリー、都会のレコード屋、Amazonとなります。
・ヤフオク
基本的にレコード屋がここで売買をすることが多く、レアなものが確実に取れると言ったらこれでしょう。しかし近年運送費が高くなっており、単品で買うと少々コストがかかるのが痛いです。クーポンも稀に出るので、そういったものも活用するのがベストでしょう。ただし偽物もあるので注意が必要です。
また、ジャンルを選んでレコード指定またはCD指定すれば、余計なものを消して検索したものを保存する事もできます。(https://support.yahoo-net.jp/PccAuctions/s/article/H000005392)
・discogs
そういった偽物レコードを見分けるのに使えるのがこのサイトです。レコードやCDの情報をアーカイブする有志のサイトで、バーコードと識別子…と書かれたところに「unofficial」と打ち検索すれば一瞬で偽物レコードをあぶり出すことができます。これで要チェックです。またアナログマスターにこだわる人であれば、それらについても検索できるのが助かります。
・オークフリー
オークフリーはヤフオクの履歴を検索できるサービスです。どれぐらいの値段で落札できるか大まかに計算することができるため助かります。また、落札履歴の年代を変えて最大8年前までの履歴まで遡れるのでそれもまた助かります。
・都会のレコード屋
なぜ都会に絞ったのかというと、都会のほうが圧倒的に品ぞろえが良いからです。特にわざわざレア・グルーヴコーナーまで設けるところも多く、かなり助かります。しかし状態を書いていないものも稀にあり、針を落として検査しなければ成らない場合もあるのでかなり玄人向けかもしれません。またCDを探す場合は店がレコード専門でないかよく調べてから行くことが大切です。
・Amazon
新品のレコードを手に入れるなら圧倒的にAmazonでしょう。もちろんディスクユニオンなどでもよいのですが怪しいものを置くことが稀にあるためそれらに引っかかりづらいAmazonがオススメです。特に海外のレコードはこれ一択でしょう。
・でも結局コツは根気
レア・グルーヴの探し方のコツは色々ありますが結局のところ金と根気が一番です。CDはそこまで問題ないにしろ、LPなら出てきたとしても3000円から1万はかかりますし、ここぞという時に買わないと金が無くて詰みます。
オークフリーの落札価格を見て安心するとえらい目にあうため落札平均+1000円は見積もりましょう。
6.まとめ
まだまだレア・グルーヴは沢山あります。ここでは紹介すると論文コース待ったナシであるため申し訳ないですが省かせてもらいます。このようなド定番から穴場まで芋づる式に探すのは非常に楽しいです。また、最近ではサブスクでわざわざレア・グルーヴをランダムに紹介する機能が備わっています。そのため知りたい曲があるならまずはサブスクやyoutubeから聞くのが一番と言えるかもしれません。そうした音楽を探す楽しさを知ったり、音楽を聞いて心が安らいだり、元気になったり、人生が少しでも変わってくれたら幸いです。
それでは最後にこちらのレア・グルーヴで閉めさせてもらいます。The Salsoul OrchestraよりMerry Christmas Allです。