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三股町セミナー「ごきげんな暮らしの輪郭」


はじめに:福祉って考えたことがなかったかも

先日、三股町で開催されたセミナーで、社会活動家の湯浅誠さんとお話しする機会をいただきました。正直なところ、子ども食堂ネットワークの代表という立場の方と、どんな話をすればいいのか…僕が福祉というものについて話せるのか…と最初は戸惑いました。
まぁでも、考えすぎても仕方ないので、これまで自分がやってきた仕事について、その思い出や関わり方を素直に話すことにしました。
僕を呼んでくれたかたも「福祉について話してほしいわけではない」と言ってくれたのでちょっと一安心。

仕事の本質:「管理されない」面白さを求めて

湯浅さんと話す中で、自分が今までやってきた仕事。エリアの方向性やどういった場所になるかを考えることが多い自分の仕事を、湯浅さんが色々分析してくれました。
ディズニーランド的な固まったイベントエリアよりも、不確定要素や偶然性の出会いがあるような、不完全な場所を好んでいるのではないか?という見立て。
僕の前職、プロレス団体の映像制作という中で感じた「興行」というものの価値観をエリアに置き換えているのでは?という見立て。
確かに、僕はプロレス的な、興行として不確定要素が多いものを好んでいる気がします。
「新日本プロレスは管理のずさんなサファリパーク」ということを言われていました。完全に管理されたエンターテイメントではなく、どこか綻びがあり、偶発的な何かが起こりうる場所だということです。この「予定調和ではない面白さ」というのは、僕自身が仕事をする上で常に意識してきた部分かもしれません。

たとえば、サーカスがCGで作られていたら、それは本当に面白いでしょうか?きっと違うはずです。人々を惹きつけるのは、その場での偶然の出来事や、予期せぬ出会い、そして完璧ではない人間味のある瞬間なのだと思います。

振り返ってみると、僕の仕事は偶然の出会いや場所との関係性から始まり、それらが少しずつ積み重なって大きな流れになっていくというパターンが多かったように思います。最初から明確なビジョンがあったわけではなく、様々な人との関わりや接点を持ちながら、みんなで緩やかなゴールに向かって進んでいく―そんな仕事の進め方が自分の中心にあったのだなと。

新たな気づき:子ども食堂と関係性のデザイン

特に印象的だったのは、湯浅誠さんとの対話を通じて得られた、子ども食堂についての新しい視点です。私たちが運営している水餃子屋「Booza」での子ども食堂の実施について、以前から興味はあったものの、どう関わればいいのか迷っていました。月1回や週1回程度の開催で本当にサポートになるのか、単なる自己満足に終わってしまうのではないか―そんな不安から踏み出せずにいました。

しかし、湯浅さんの子ども食堂ネットワークの考え方は、その不安を解消してくれるものだったんですよね。月1回の子ども食堂であっても、そこに集まる子どもたちや地域の大人たちとの間に生まれる緩やかな関係性が重要なのだと。「あそこで会ったね」「一緒にご飯を食べたね」という些細な接点が、日常生活の中で支え合える関係性の種になっていく―そんな可能性を教えていただきました。これだったら自分たちにも一歩踏み出せるかな、やれるのかな?と。

つながりの再発見:新しい縁が紡ぐコミュニティ

このセミナーを通じて最も印象に残ったのは、私たちの社会に求められている新しい形の縁についての気づきでした。従来の血縁や地縁に頼るのではなく、人々が自発的に形成する小さなコミュニティや関係性が、新しい形の支え合いを生み出していく―そんな可能性について、深く考えさせられました。先ほどの一ヶ月に一回の関係性でもいい、小さい縁がつながって、誰かのためになっていく。

僕たちが取り組んでいる「街中ピクニート」では、「だれかの地元として」というキャッチコピーを掲げています。この言葉には、その場所が誰かにとっての大切な場所になってほしい、新しい縁を育む場所になってほしいという願いが込められています。今回、湯浅誠さんとの対話を通じて気づいたのは、このような場づくりの試みも、実は「縁を結び直す」という大切な作業の一つだったのかもしれないということです。

血縁でも職縁でもない、緩やかでありながらも確かな支え合いの関係。それは、一朝一夕には作れないかもしれませんが、日常的な小さな出会いや関わりの積み重ねを通じて、少しずつ形作られていくものなのでしょう。Zine it!の活動も含め、僕のこれまでの仕事の多くが、意識せずとも新しい縁を紡ぎ出す試みだったことに、今回の対話を通じて気づかされました。

特に印象的だったのは、こうした民間主導の小さなコミュニティづくりが持つ可能性です。行政主導のトップダウンな関係づくりではなく、地域の人々が自然に集い、交わる場を作っていく。そこでは、年齢や立場を超えた新しいつながりが生まれ、従来の制度や枠組みでは救いきれない課題に対しても、柔軟に対応できる可能性があります。

メッシュのように張り巡らされた小さな関係性は、新しい福祉の考え方にも通じるものがあると湯浅誠さんは指摘されました。制度化された福祉サービスだけでなく、地域の中で自然に育まれる支え合いの網の目が、現代社会に必要とされている新しい形の福祉なのかもしれません。

このように、血縁や既存の制度に依存しない、新しい形の縁を結び直していく試み。振り返ってみれば、それは私自身の仕事の根底に流れる想いでもあったのだと気づきました。異なる分野の方々との対話を通じて、自分の仕事の本質をより深く理解できた時間になったなぁ。

呼んでくれた、コミュニティデザインラボの松崎君。ウフラボの平野さん。そして周りのスタッフのかたがた。
そしてそして、湯浅誠さん、ありがとうございました。
今年は色々知らない人と知らないことを話していきたいな。

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