見出し画像

サユリ観てほしい C.W.白石監督のCGにおける一考察

C.W.ってCoupleing Withの略やんなあ? シングルCD世代ならわかるやんなぁ!!!(突然の大声による圧)

で、何やっけ? ああ、そうや。おっちゃんは白石監督のサユリを観てきたんよ。予習しよう思て何ヶ月も前に原作買ったんやけど、予備知識無しに観たほうがええやろうと翻意して原作の方はまだ未読なんよ。

でまあ、簡単に感想を一言で言うと「令和ホラー映画の金字塔」やな。金字塔……もっとこう、若い世代に通じる言い方やとなんやろ。マスターピース、は古いか。なんやろ。金字塔にあたる若者言葉。……もしかして、そんなんないんか? あらゆる評価が相対化される現代において、金字塔にあたる概念自体がもう無効なんか? そんな……頼む。なんぞ、なんぞあってくれ……。

ま、ええわ。

えっと、とにかくこないに情緒が不安定になるくらい心揺さぶられるんがサユリっちゅう映画なわけやね。 

簡単にあらすじを紹介すると、とある一家が中古の戸建てを購入して越してくる。しかしそこには恐ろしい怨霊が潜んでいた。次々に殺される家族。ついには高校生の長男と認知症でフワフワの婆さんだけが残される事態に。

しかし、そのとき、ついに。婆さんが覚醒する。婆さんが、覚醒する──。

ホンマやねんて。そういう、ホンマにそういうストリーなんやって。信じて! 街裏ピンクの漫談のネタちゃうんよ。ホンマにこういう話なんよ。

その中に白石監督の畳み掛けるようなテンポでエンタメ作品のさまざまな魅力──恐怖、愛、哀切、狂気、悲哀、怒り、笑い、家族の破綻、家族の絆、恋、成長、カッコよさ、グロテスクさ、爽快さ、胸糞悪さ、感動──そういったものがゴチャゴチャに絡まり合いながら叩きつけられる感じ。

それでいて全体のまとまりはあるし、それぞれが“ちゃんとしてる”んよ。ちゃんと怖いし、ちゃんと恋愛は甘酸っぱいし、ちゃんとイカれてるし、ちゃんと笑えるし、ちゃんと悲しいし、ちゃんとイカれてるし、ちゃんと感動する。

俳優さんたちの演技も良かった。演技の上手い下手みたいなテクい話はおっちゃんようせえへんのやけど、せやのうて、それぞれが登場人物の「らしさ」、そのキャラごとのその場面における「らしさ」を出せてて良かった。

映像もホラー的な良さはもちろん、ちょっとしたシーンでも演出意図や伝えたい意味みたいなもんが読み取れて良かった。

たとえば長男が夜遅くまで家に一人で居なあかん場面で、家中の電気が明滅するシーンがあるんやけど、そもそも最初に家中の明かりがつけてある状態なんよ。そこにもう長男の内心の不安が感じられる、みたいな。闇を避けたくて暗くなる前に全部の明かりつけたんやろな、みたいなね。

あと、この映画の重要なフレーズに「命を濃くしろ!」っちゅうんがあって、コワすぎシリーズのときの「運命に抗え!」と同じく「精一杯全力で生きろ!」的な意味も持ちつつ、対怨霊的には命を濃くして生者のエネルギーをぶつけて対抗しろ、みたいなことなんやけど、そんでわりと下ネタを怨霊に向かって叫んだりもするんや。

これ、怪談とか好きな人やったらピンと来ると思うんやけど、エロとか、陽の気に満ちた振る舞いって怪異に対して有効とされることが多いんよね。怪奇現象の起きる物件に住んでても、陽気で気にせん人やと何も起こらんくなる、とか。
そういう意味ではサユリで怨霊への対抗手段が霊能力やら呪術やのうて「生命の力」なんはオカルト的にリアルなんよ。

てなわけで、あらゆる評価が相対化されて“金字塔”の現代的な表現さえパッと出てけえへんような昨今やと「そんな絶賛するほどの作品かいな」っちゅう感想の人がおるんも当然のこととしつつ、それでもおっちゃんは少しでも多くの人にサユリを観てほしいと思ってんねん。

で、ここからがC.W.なんやけど。そう、白石監督の作品におけるCGについて。

サユリに対するマイナス点として終盤のCGの質を挙げる感想がチョイチョイあって、「古臭い安っぽいCG」っちゅう点はおっちゃんも同意するしかないんよ。

せやけどね。それってホンマにマイナス点なんかな? いや、何も「白石監督作品のお約束やんか」的な擁護がしたいわけとはちゃうねん。
おっちゃんも少し前までは「なんでCGがこの、こう……こんななんや」て思てたし。

せやけどな。最近おっちゃん、ある仮説にたどり着いたんよ。

そもそも白石監督の作品で出てくるあの「古臭い安っぽいCG」って、基本的にはこの世ならざるものを描くときに使われるんやけど、「古臭い安っぽいCG」の質感て現実には存在しいひんやん? プラスチックに似てるけど、それとも違うあの独特のノッペリとした、違和感しかないような質感。あの質感を持った現実のものって実在しないやん。たぶん、作れもせんやん。

つまり、この世ならざる、現実とは異なるモノに属する存在を、この世に実在するもののない質感で描くのって、実は理に適ってるんやない?

まあ、言うてそれが「古臭い安っぽいCG」やと「なんやこれ」ちゅうて興醒めする人が出るんはしゃあないんやけど、そこに「予算が…」みたいな消極的な理由やのうて「非現実的な存在を描くための、あえての」っちゅう積極的な理由があるとしたら……!? 

どうやろ。あのCGがまた違って見えてくるんとちゃうかな。

------
話変わるけど考えてみれば、こうして生きてる世界と変わらん精細さの地獄はそりゃ怖いけど、地獄がプレステみたいなローポリの見た目で、そこに放り込まれるんやったら、それはそれでかなり精神的に来るんちゃうかな。
------

ともあれ、おっちゃんとしては白石監督作品のあのCGには、ここまでで書いたような意図が(すくなくともここ数作では)あるんちゃうかという説を提唱したいんやけど、どうやろか? もっともらしさ、あるかな? それとも「信者乙」やろか。

画像はMicrosoft Designerによる「家族のために怨霊への復讐を誓う怒った日本人の老婆」

いいなと思ったら応援しよう!