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日報が盛り上がるって、どういうこと?!

「オシロでは日報がすごく盛り上がっているんですよ」

最近、「OSIRO」のシステムを社内コミュニティの活性化に利活用されたいという企業の方々とお話しする機会が増えている。そんな時に、ぼくがオシロの日報について話をすると、十中八九目を丸くされる。

「え、日報が盛り上がる?どういうことですか......?@>@」

たしかに、よくよく考えたら社会通念上、日報が盛り上がるという概念はないのかもしれない。にもかかわらず、オシロでは日報が盛り上がっているのだ。それは、日報を自社の「OSIRO」を使って投稿しているから。通常の日報は部下から上司に向けて書き、メールやチャット、日報ツールなどを利用して送るという建付けをしている。一日にこなしたタスクや日常業務での改善点などを、真面目で無機質なフォーマットに従って書いて送るという、きわめて義務的なものだろう。基本的には箇条書きや業務の所見を書き連ねるものなので、淡々としていてしかるべきものだ。しかし、オシロの日報は事実、盛り上がっている。今回はその理由について掘り下げていきたい。

オシロ社は自社プロダクト「OSIRO」を
社内でもフル活用している

日報文化にある「振り返り」と「オープンマインド」

オシロ社の日報文化を分析してみると、そこには2つの要素で成り立っている。それは「振り返り」「オープンマインド」だ。オシロの日報は上司に向けたものではなく、社内コミュニティで社員全員に向けて投稿される。自身が課題に感じていることを内省し、オープンな場へ投稿することによって、全社員の目線から客観的なリアクションがもらえる。そのため、改善スピードが早くなり、本人の成長も促進される。

ハーバード・ビジネス・スクールのワーキングペーパーによれば、企業研修で振り返り(リフレクション)の有無で最終評価テストのパフォーマンスの差を計測したところ、振り返りをした従業員のパフォーマンスは20%ほど向上したという。振り返りはとても重要で、自身を客観視した振り返りができている人の成長スピードやパフォーマンスは複利的に増加していく。しかし、一人だけで自分自身を客観視することは難しいのも事実。だから、オシロでは日報で振り返り、さらには社内にオープンに投稿するということをやっている。そこで前提になるのがオープンマインドになれる運用・環境だ。

まず、オシロ社の日報の投稿は「OSIRO」システムのブログ機能で書かれることもあってか、本文はある意味フォーマットはないともいえる。日報の前半にはその日にやった業務があり、後半は振り返りが綴られているものが多い。文体を含めてブログのような書き口になっている社員が大半だ。

UI(ユーザーインターフェース)がブログだから文章を書きやすいし、日報を書くという行為自体が苦に感じられない。オシロ社の対話を重んじるコアバリューがあることも相まって、むしろ進んで自分のことをオープンにしやすい環境になっている。そもそも内容は上司に向けて書くのではなく、会社の社員全体へ届けるような言葉になるのも特徴だろう。

そのため、結構エモーショナルなことも多く出現する。たとえば、「!」に「(笑)」も「w」も普通に出てくる。オープンだからこそ、社員同士の交流のきっかけにもなっている

左:ある社員の実際の日報本文
右:日報への社員からの実際のコメント

こういった説明をすると「いくらブログ機能で投稿したところで誰にも反応されないんじゃないか?」と聞かれることもある。けれど、「OSIRO」ではブログを投稿するとランダムのコメントが必ずつくような機能があるため、その心配はない。ノーリアクションの不安を払拭し、心理的安全性を確保するための工夫だ。そして、絵文字で簡単にリアクションができたり、コメントに吹き出しをつけてより豊かな感情表現を伝えられることも活性化に影響を与えている。そのため、日報を始めてから現在までどの日報でも必ずリアクションがついているのが当たり前の状況だ。

もともと「OSIRO」はコミュニティに参加した人同士が仲良くなる、つながりを活性化するために人間のコミュニケーションの拡張に注力してきた。その仕組みを使って日報を書いているのだから、社員同士が盛り上がるべくして盛り上がっているともいえる。

社員への労いに「毎日ビールで乾杯している」社長?

これまた変な話をすると、ぼくは「社員と毎日ビールで乾杯」している。もちろん社員に毎日お酒に付き合ってもらっているわけではないし、そもそもぼくはお酒を飲まない。

リアクション画面の下部には
絵文字ポイントが押しやすいように
常時表示されている

どういうことかというと、「OSIRO」のリアクション機能は絵文字でリアクションをつけるだけではなく、絵文字ポイントを贈れる機能もある。これは絵文字リアクションとポイント付与が4段階(3、10、39、100)で同時にできる機能で、感謝や労い、賞賛の気持ちを簡単に伝えられるように開発した。そのうちの10ポイントはビールのアイコンになっていて、その理由はもちろん「乾杯」である。 ぼくはみんなの日報を読んだ後、一人ひとりに労いの想いを込めて、ビールの絵文字リアクションを送って「今日もお疲れさま、乾杯!」をしているというわけだ。

もちろん、社員に本物のビールやワイン、ノンアルカクテルを振る舞うこともよくあるし、食事にいくこともある。その時にはリアルな場で、面と向かって労いの言葉をかけている。一方で、そういった労いの言葉が心に届くのは、日々のコミュニケーションがあってこそ。そういった点では、「OSIRO」は気軽に心と心のつながりを持つことができ、オンラインコミュニティ上で「乾杯」もできる。

このように、オシロ社の日報では業務だけでなく感情も共有できることも効能の一つ。それはマイナスなことが起きている時により強く発揮される。例えば、オシロの場合は、ミスをしてしまったことや、失注してしまったこと、さらにはぼく自身への苦言も日報に書かれることもある。心苦しいこともあるが、そういったネガティブな事象が潜在化してしまうことの方がはるかに恐ろしい。問題が発覚するまでの期間で改善の機会を逸してしまうことは、スタートアップにとって命取りになるからだ。これは、多くの経営者の方々に同意してもらえることだと思う。

実際、ヘンリー・ミンツバーグさんの著書『MBAが会社を滅ぼす』によれば、厳格なチームではミスの報告は少ないが、実際には多くのミスをしていた一方、やさしいチームではミスの報告自体は多いが、総数は厳格なチームよりも少なかったという。

自然に自分の思っていることを素直に表現できる。これは、人と人のつながりの本質だと思うし、人の集まりである企業においては強さの根源ともなる。オシロの日報は、ポジティブなこともネガティブなことも書くことができる。でも悪口は一切ない。みんなが励まし合ったり、エールを送り合う。ぼくの場合はビールだけど、 リーダーが社員へ「いい仕事をしたね」という意味で、トロフィーを模した100ポイントをあげたりしている。感謝や励ましたいと思う気持ちが日報を通して伝わることで、つながりの質を深めているのだ。

『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』(ロバート・キーガンさん他著)の言葉を引用すると、人々が成長するのに最も適した環境は「みんなが弱さをさらけ出せる、安全であると同時に要求の厳しい組織文化によって生み出される」とある。全員が成長する文化をつくることが重要だとも書かれている。

単なる日報ではあるけれど、オシロの日報は社員を仲よくする仕組みになっている。しかし、それを組織開発の観点から見ると、図らずも理に適っていたことになる。たかが日報、されど日報なのだ。

社内コミュニケーションにも丁寧な設計が必要だ

オシロは商談や面接でオフィスに来た方々から、「いい雰囲気の会社ですね」と言ってもらえることが多い。オシロの社員には嘘偽りがなく、みんなが心からつながることの大切さを理解しているから、自然と雰囲気もよく、活気もある。

これはオンライン上の社内コミュニケーションツールでも一緒で、日報でちゃんとつながりができて、会話量が生まれて、感謝し合える環境が醸成されていることが、オフィス空間にも表れているのだろう。相手の仕事の状況だけでなく、お互いを理解し合えている感覚。それがあるから、自分の考えを素直に伝え合えることができ、同じ部署同士だけではなく異なる部署間でもそのようなコミュニケーションが生まれている

上述のヘンリー・ミンツバーグさんの別著『ミンツバーグの組織論』によれば、「魂のある組織は、見ればすぐにわかる」と言われているのも頷ける。

このように、盛り上がる日報は「OSIRO」の仕組みを使ってオンライン上でも感情を持ち寄り、リアルで会った時にも作用し、社員はさらに仲良くなっていく。社内エンゲージメントの向上に非常に良い循環になっている。いわば「OSIRO」で日報を運用することによって、日報そのものにも魂を吹き込むことができるのだ。このような循環は、業務効率化を第一に考えたビジネス用のチャットツールでは難しいのかもしれない。

オフィスデザインは職場の人間関係ひいては組織のあり方を左右する重要なものだ。それと同じように、家は住む人に合わない間取りだと、人間関係が悪化すると聞く。オンラインのコミュニケーションツールも同様といえる。間取りやレイアウトに当たる部分が非常に重要で、特に、現代の日本企業では昭和・平成・令和の三世代が同居している状況。社内コミュニケーション文化を醸成するにもしっかりとした哲学と丁寧な設計が必要だ。

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