第11回「反論してみよう」
クリティカルリーダーのかずえもんです。前回のクリティカル・リーディングは「正しさを強く訴える文章は、気を付けて読む」ということをとりあげました。今回は、一歩進めて反論してみましょう。
まずは社説の主張を意識しながら読んでみよう
次の記事は、10月29日に起きたソウルのハロウィーン群衆雪崩に関する社説です。まずは読み進めながら、社説が主張している部分を意識してみましょう。
引用元:信濃毎日新聞デジタル(2022/11/1)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022110100050
主張はどこか分かりましたか?抜き出してみましょう。
概ねこの三か所になるでしょう。ごく簡単にまとめると、その主張は「警備対策を見直すべき」というものになりますね。
一見もっともらしいこの主張をクリティカルに見てみましょう。
反論してみよう
このシリーズの読者の方なら、この社説への反論はさほど難しくないと思います。私が思いつく反論を下に並べてみます。
反論1
「有効な対策は、密集しないよう人の流れを調整する警備や現地の環境整備」というが、例えば朝の駅のラッシュを考えてもわかる通り、都会では日常的に密集がおきており、それを調整することは非常に困難。
反論2
「今回のように主催者不在で起きる市街地の混雑の場合、警察と自治体の対応が鍵を握る。人出を見積もり、現地の状況に合った計画を立てる。」というが、そもそも主催者不在で起きる市街地の混雑をあらかじめどのように「計画」するのだろう。
書かれていないことを想定してみよう
上記のような反論を考えると、自然に相手の主張に書かれていない「例外」に意識が移ると思います。
韓国の事故のケースは、本文にあるように日本でも明石市の花火大会で起きています。このようなお祭りの群衆雪崩以外にも、ひとが密集する可能性のある場面は多々あります。
例えば何らかの災害で避難する場面や、交通機関のマヒなどがすぐに思い浮かびます。あらゆる場面に「警備」を入れ、「計画」することが現実的でないなら、一体どのような対策が考えられるのかー。
一つ考えられることは、このような「群衆雪崩」という現象が広く知られるようにすることです。
この記事にあるように、「群衆雪崩は、1平方メートルに10人以上が詰め込まれた状態で起きやすい。1人がしゃがむなどわずかな動きをきっかけに、隙間に人が倒れて広がる。」という現象を理解することは有益ですね。通勤ラッシュの電車内のような混雑が、広い空間で起きた場合に発生するイメージを多くの人が持つことによる自律性が働くことも期待できます。
あなたの意見は何?
日本人の苦手な質問の一つに「あなたの意見は?」というものがあります。提示されたものを素直に読み過ぎると、なかなか自分の意見に到達しません。
脳内で「ツッコミ」を入れながら例外を探してみましょう。
たとえば今読んでくださっている私の文章にも、ぜひツッコミを入れてみてください。
これって対策になってる?これじゃ群衆雪崩そのものを抑止できないよね。そんなふうに思った方もあったでしょう。
主催者不在のイベント、突発的な災害や交通マヒ。こうしたときに発生する極端な密集。そこで起きうる群衆雪崩。これをどうやったら防げるのか。これを問われたときの私の意見は、「警備や計画で防げるものはごく限られた場面のみ。誰かが適切に管理してくれるという思考を持つより、密集場面で群衆雪崩が起きうることを知ることが最大の対策だ」です。
あなたの意見はどうですか。
クリティカル・リーディングは「意見をもつ」訓練にもなります。
ではまた次回!
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