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キエフの猫
キエフの街がテレビ画面に映し出されている。
そこかしこで火の手が上がり、
ビルは崩れ落ち、
瓦礫が山となって積み上げられている。
大きな荷物を抱え、行き交う人々の中に
足を引き摺る様にして歩く、一人の老婦人の姿があった。
片手に荷物、
もう一方の手には猫。
猫も飼い主と同じように年老いているのか、
あるいは病気なのか、
毛布にくるまれ、おとなしい。
老婦人は、
少し歩いては立ち止まり、天を仰ぐようにして息を吐く。
近くで爆撃の音がする。
婦人は毛布ごと猫を抱きしめ、
なにか話しかける。
☆
酷い戦争が続いています。
毎日報道される映像が、決して映画のワン・シーンでなく
現実であることに、戦慄を覚えます。
戦禍の街を歩く老婦人と猫の姿に、
胸が痛みます。
数週間前まで、
老婦人と猫には家があり、
安らげるベッドがあったはず。
猫は餌をねだり、
婦人は「ごはんよ」と猫の名を呼ぶ――
そんな日常が
一刻も早く
戻りますようにと
願わずにはいられません。
そして
その日まで、
二人(一人と一匹)には
どうか、
生き抜いて欲しい。
そう祈ります。