【2】年収290万の派遣社員、挙げ句の果てに子ども部屋おじさん(43)が結婚した
正規から非正規へ
新型コロナで世界中が翻弄され、ただならぬ閉塞感を味わったのは説明不要だろう。
当時、働いていた会社から「……わかってるよね?」と無言の圧力をかけられて、居心地が段々と悪化。絶対に罹ってはいけない空気が漂っていた。
十数年、働いただろうか——
夜勤専従。皆が一日を終えて家路を急ぐ頃、私は世の流れと逆らうように会社へと足を運んだ。そこに後ろめたさは無い。むしろ、気が楽だった。
初めて働いた会社では、ありとあらゆるハラスメントを受けていた。肉体的にも精神的にも崩壊した経験がある。
数少ない親友は「早く辞めた方がいい。」と言う。
それでも当時は夢だった職に、やっとの想いで転がり込めたこと、少なからずお客さんに信頼をしてもらえていた事を考えると、それらを諦めることも怖かった。
だが、本当に怖かったのは、固執していた自分自身だった。
——書けばもう少し書けるだろうけど、思い出すのも忌々しいのでもう止めておく。
何とか仕事を辞め、長期休養を取った後に派遣会社へと赴いた。
紹介してもらった会社の業務内容は、前職と当たらずしも遠からず。仕事は早々に覚えられた。前職の夢の一端を担う職種だったのでやりがいも感じていた。
何よりも、低賃金や非正規雇用という条件以上に、干渉してこない人達の中で働くことに、絶大な安堵感があった。
あっという間の十数年。天職とまではいかないにしろ、この辺りが落とし所なんだろう。そう納得していた矢先の新型コロナである。
時が経つのを待てば、やり過ごせると思っていた。しかし、世の流れが異常になってきたことを受けて、考えが変わった。
つづく