散歩道2/2

ビルとビルの狭間。
薄暗い空間。
頭上を見上げるとまだ空は朱みを帯びている。
ごくりと唾を飲み、ギュッとショルダーストラップを握る。
室外機が不規則に並び、建物の裏口からのびる階段が見えた。
そこに、1匹のカラスがポツン、と居座っていた。
羽ばたくわけでもなく、鳴くわけでもない。
じっとこちらを見つめている。
隙間から射す光に反射した漆黒の瞳は
どこか宝玉のごとく美しく見えた。
すると、前方から一筋の光がさした。
ここを抜ければどこへ出るのだろうか。
この胸の高鳴りは不安だろうか、期待だろうか。
私は胸を膨らませる。
ゆっくり動いていた私の脚は徐々にペースを上げていく。
あぁ、ようやく。
路地を抜けるとそこには、芝生に生える天高く登る一本の大木があった。
夕日に染められた大木はとても幻想的で美しかった。
ササー…サササー…という葉の揺れる音だけが聴こえる。
まるで桃源郷へ迷い込んだ気分だ。
木の根元へ足を運んだ。
そこへゆっくりと腰をかけた。
風が妙に心地よい。
うつらうつらとしていると、
「お嬢ちゃん隣りいいかい?」
老父の声がした。
目を開けて見てみると白髪で腰の曲がったご老人が立っていた。
「どうぞ。」
「どうも」
老父は私の横に腰をかけた。
「ここは、いい場所じゃろ。」
老父は葉と葉の間から溢れる木漏れ日を見ながら言った。
私はこう答えた。
「ええ。とっても。なんだか、嫌なことが全て浄化されていくようだわ。」
老父はにっこりと笑みを浮かべこう続けた。
「この木は御神木なんじゃよ。昔は、もっと静かな場所があったんじゃよ。その中に5本の大木があっての。そのうち4本は土地開発で伐採されてしまったんじゃ。残ったこの一本は、自分を護るように、お嬢ちゃんの生きている場所から姿を消したんじゃ。」
この老父によるとどうやらここは現実世界ではないらしいのだった。
「そろそろじゃな。」
老父は私へと告げる。
「そろそろ夜が耽ける。遅くならないうちに帰るんじゃぞ。皆がきっと心配してくれている。」
「どういうことですか。」
「この木は御神木と言ったじゃろう。神様なんじゃよ。わしも、この木も、ずっとお嬢ちゃんを見ていた。死にたくなることもあるじゃろう。さりとて、屈しては行けないよ。お嬢ちゃんはひとりじゃないんだ。
不安になったら思い出すといい。この木と、大事な家族のことを。」
そう言って老父は去っていった。


目が覚めるとそこは病院だった。
どうやら私は2日くらい寝ていたらしい。
家族は涙を浮かべている。
あぁ、そうか。
お母さんに窓を開けてもらうと、
うるさいくらいのセミの声が聴こえた。


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あとがき

本編いかがだったでしょうか。

前作の最後に続きはpixivで!!みたいなことを書いておきながら投稿するって。。。

今考えてみれば、何を偉そうに!!って感じですよね。

閑話休題

それでは本編について少し。

今回は、夜中にふと思いついたものがベースになっております。

また、辛い、苦しいと感じた時に

君の頑張りは必ず誰かが見てくれている

というメッセージが込められている作品でもあります。

読んでくださっているみなさまにこのメッセージが伝わったでしょうか。

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