人械#4.5
視界がぼやけている。
—幼いころの記憶。
すすきが生い茂っている。
僕らを隠すように夕日は影を作り出している。
彼女の後を追いかけても、追いかけても、
どれだけ手を伸ばしても届かない。
長い黒髪がゆらゆら揺れている。
「待って.....」
思うように口が回らない。
鉛をまとったような足は前に進まない。
『大丈夫。XXXX君なら。』
ぼくにはきみがいなきゃ、ダメなんだ。
『男の子でしょ。強くならなきゃ。
お姉ちゃんを守れるくらい強くなって。』
わかった。ぼく、つよくなる。
おねえちゃんをまもれるくらい、つよくなる。
彼女はふわりと微笑んだ。
—その瞬間、彼女をさらうように風が吹いていった。