人械#α
「彼の具合はどうですか先生」
白衣を着た看護師は男に話しかける。
先生と呼ばれた男は椅子を180度回転させ看護婦の方へ体を向ける。
「今のところ特に変わりはないよ。
こんな世界でひとりずっと、夢を見続けているんだ。」
「夢ですか。」
男は「うむ。」と手を前で組み頷いた。
そのまま続けて言う。
「彼はもう死んだも同然だ。夢を見させることで延命しているといっても過言ではない。」
男はガラス越しに見える病室を見た。
そこには二十歳を過ぎたばかりの少年がベッドに横たわっている。
彼の頭部にはコードがたくさん繋がれたヘルメットがかぶされている。
彼は時折表情を変えた。
まるで生きているかのような表情をするのだ。
それを見ながら男は言う。
「彼はあれで幸せなんだよ。
そもそも我々が生きている世界は
彼の見ている世界(ゆめ)とは違うんだ。」
看護師がふと男の机にあるパソコンを見やると
突然赤文字でERRORの文字が表示された。
「っ先生!エラーが発生しました!
しかも今までにはないケースのものです!」
先生と呼ばれた男はすぐにパソコンと向き合い操作を開始した。
「まずい・・・。
彼が目覚めようとしている。
今目覚めたら体はともかく、脳の処理が追い付かない!」