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あわく、せつなく、いとおしく、起きては飯食い、眠るだけ

完全にネタが尽きている。後輩のブログに、ネタが尽きたことをネタにするという記事が載せられていたが、それ以上にネタが尽きている。

残されているメモ帳には、
「この場所も、どうにかして書き終えたいこの気持ちも、全部ひっくるめて表現したい」
「頭で考えるんじゃない、書いて覚えるんだ!!」
なぞと殴られている。何も考えずにタイピングだけを進めるが、画面に映し出される文字から、うんともすんとも音が聞こえてこない。

chatGPT4さんに壁打ちしていただいたり、会社の後輩にいいネタないっすかねえ〜と懇願し、ただ羅列するだけの文字列を眺めてもらったこともある。しかしネタが思いつかないのだ。

先週の月曜に締め切りだった記事がある。いつもなら悩んで書いて消して、を3回くらい続けて、納品当日にばばばばばっと書いて順番を直して綺麗にしてやり遂げるのだが、今回は週末まで待ってもらった。非常に申し訳ない気持ちと、仕事もできずに何を酒飲んでるんじゃアホンダラという気持ちが合わさって、結局猫に助けを求めていた。


信頼している友人が個展を開いていて、職場からあまりにも近かったため、少し顔を出した。彼が日課として続けている何千日分の時間と風景を、厳選して出力された作品は、とても素敵なものであった。

と同時に、彼の人となりが滲むを超えてビッシャビシャに流れていた。歩くには少し力が必要で、一見ニヤリと笑みがこぼれる写真の中に、彼の暮らしの全部があった。頭の中のどこが痒くて重いのか、悩みまでぎっちり詰まっていて、裸じゃん、いや、裸より裸じゃないすか、と言いそうになった。

此度の個展は彼が3000 日以上も撮り続けた「本日の1枚」の中から厳選した数点が飾られていた。学生時代から写真一筋だった彼の技術力はもちろんのこと、10年近く同じ制作を続けていることに、おかしいと感じてしまった。もっと簡単にいうと、彼への羨望と嫉妬だ。彼が日々考えていることや、表現したいことをバカデカい印刷物にされると、そりゃビッシャビシャになる。でも、あんなバカデカい写真でも耐えうる、というか、バカデカいからこそ新しい考えが見えてきて面白いなんて漏らしていた彼は、なんというか、眩しかった。


展示作品の1枚。バカデカい。

冒頭に戻る。とにかくネタがない。今までなんとかかんとか書いてきたけれど、いよいよ亡くなってしまった。頭の中がカラカラになってしまった。

朝起きて仕事して、家に帰ってご飯を食べて眠るだけで、時折思い出したように配信されたドラマやアニメを見たりなんかもするが、結局寝るまでの暇つぶしだ。明日には忘れてしまう。

それよりもニュースを見て「最近〜〜ありましたね〜」なんて年上の人と話すことが増えた。もちろん面白かったエンタメの話はするけれど、表層に触れるだけで、自分もそれで満足してしまって、ずっと煮え切らない気持ちだ。やっすいIHの火力くらいの気持ち。

それじゃあもっと労力をと、休みの日には映画館に行ってみて、ワクワクしながら席に着いて、とんでもない体勢で見る。終わった後は喫茶店でコーヒーを飲みながら、あーおもろかったなあ〜と思いながらFilmarksに星つけて終わり。

帰りに買ってみるエッセイや短編集もペラペラ50ページも開けばいい方で。積読は押し入れのダッサイクリアケースに放り込まれている。レコードやCDは買った帰り道のウキウキ分と開けた時の独特の匂いをスッと吸うくらいで止まっている。

もちろん見たり読んだり聴いたりして、べらぼうにテンションが上がる時がある。それでしばらくの間頭の中をぐるぐる回っている時もある。でも、その回数が異常に減ってしまった。

ほんの少しだけではあるが、光ってないけどゆるやかな毎日に満足しかけている。家には猫が2匹いる。彼女らとお話しながら抱きかかえ、身体を思いっきり吸い込むだけで、万病の特効薬になると思う。中毒性が高すぎて他のものが受け付けなくなったことが唯一の副作用だ。

何を以て面白いのだろうか。もう別に面白くなくていいかぁなんて考えて、それはそれで本当に「ゆるやかな死」だなあってことを、ゴールデンウィークの初日のお風呂場で思って書いている。シャワーを顔にぶつけながらその後思ったことをそのまま書く。

みんな大好き粗品official チャンネルの芸人VS素人回、素人側の男性の一発ギャグがオモロすぎて家の中で本当にゲラゲラ言ってしまった。

該当部分を挙げたので見てほしい。
歌ネタの1発ギャグなのだが、本当に風呂で思いついたんじゃないですか?ってノリの一言だ。誰でも思いつくかもしれないけれど、思いつかないし、思いついても披露できない1発ギャグ。音程が取れてなくて宴会芸っぽさがより際立つ。改めて芸人ってとんでもない技術だなと思いつつ、数人のプロを目の前にして放つこのギャグが面白すぎた。

・ 思わずツイートしてしまいました
みなさまから、思わずツイッターに投稿してしまったような、驚き・発見を送っていただくコーナー。
「ツイートは脳のおなら」

TBSラジオ『東京ポッド許可局』

愛聴している東京ポッド許可局のご長寿コーナー。普段ならスクロールしてしまうような仕方のないツイートをリズムよく発表する。本当に誰でも思いつくような内容。でも、時にハッとさせられ、MCが唸ってトークが盛り上がることも少なくない。他に聞いている番組の中でも、かなり好きな部類のネタ。

給料から年金が天引かれて心底腹が立つ

柴田聡子『雑感』

大好き柴田聡子の「雑感」の一節。この曲が発表された時、よく取り上げられていた。歌の中にいきなりこんな歌詞が入っているから、ん?と思うのだけど、心底腹が立つ。笑えるような、今の社会をズバッと斬っているような、今の悩みをこんなにわかりやすく、でも、言っちゃだめだよのハードルを共感というスキップで飛び越えた言葉。

全てに共通することは、毎日の生活でふと思ったことを、そのまんま口にするだけで、結構本気で面白いジャン!えー!うわー!そこかあ〜〜!と共感させられることがよくある。もっと正直に言うと、「面白いもん作りたいな〜」とか、「あっと言わせたいな〜」という言葉が拡大解釈されて、表現することへの重石になっていた。

ネタがないとグッタリしていたけれど、毎日毎日仰天ニュースのような出来事は生まれないし、起きては飯食い、眠るだけなんだから、生まれるはずがない。ただ、日常生活を営む上で、ポッと浮かんだことを、しっかり頭に収める作業を忘れなければ良い。あとは、それを出す為にプライドをかなぐり捨てて、勇気を出して公開すればいい。

「6人の飲み会で遅刻はあかんな、30人だったら良いけど。あんた年齢順だと何番目なん?」

平日昼チェーン珈琲店20代社会人女性

最新のメモ帳に書かれていた一説だ。喫茶店でぼんやりしていたところ、営業っぽい社会人の男女2人組が、多分その晩の飲み会のことで愚痴っぽく漏らしていた。6人での遅刻ではアウトだけど、30人ならOKなんだ・・・何人からだめなんだろう・・・年齢順で遅刻OKとかもあるんか・・・年齢順で遅刻OKはなんか違うくないか?と1人でクスクス笑っていたのを覚えている。そういう文化があるのを知らなかったし、ちょっと体育会系っぽいな、営業さんなのかな、朝礼で社訓言うんかな・・・など、やったことない職種に対するひん曲がった偏見も入ってきて、2人の関係性や生い立ちを妄想した。多分、そんなんを書けばいいと思う。

インプットと言うカッコつけすぎた言葉ではないけれど、服を着て、靴履いて外に出ようと、そう思った。せっかくのゴールデンウィークなので、二日酔いの頭を冷まして、でっかい公園で、太陽で反射した画面に齧り付きながら、パリーグの試合を見るつもりです。

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